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「ところで、二人は付き合ってないのに男女で買い物って珍しいよねぇ?」
俺をいじることに飽きてきたのか、話題を180度変えてきたユリ。
「あぁ。パッと見、恋人みえちゃうのも仕方がないんですよね。
ウチはシンガーソングライター目指してて、近々、ライブがあって、ちょうど新曲も出すこともあって、衣装探ししてたんです」
「そうなんだぁー」
「そうなんです。俺は仕事柄っていうのも変なんですけど、スタジオやライブスタッフとかのバイトしている関係で、あゆかとの付き合いも長くて、相談されてって感じで」
「はぁ、なるほど。
・・・ん?シンガーソングライター、スタジオ…っ!!!」
どうやら、ユリの頭の中で、俺の話で出てきた友人と今、目の前にいる友人とが合致したようだ。
おい。まるで、名推理ができました!ばりに、そのキラキラとした瞳を俺に向けるな、むしろ、気づくのが遅いんだぞ。
コホン。と咳払いをしたユリはまるで探偵のように色々質問を開始するのだった。
「シンガーソングライターって、作曲はピアノ?ギター?それともDTMとか??」
「ピアノですね。DTMは勉強中で…って、ユリさん、専門知識あるんですねぇ」
「いやいや、ただの耳年増ってやつ。でも、なるほどぉ。
あっじゃあ、宇汐くんは、ミキサー卓とか使える人?
それとも、もっと理数的に分析とかするようなプロデューサーさん系?」
「うーんと、ミキサー卓を操作する人ですかね。
俺は、まだなんとなくしか方向性決めていなくて、色々、やってみてっていう手探り状態なんですよー」
「なるほど、なるほど」
細かく頷きを繰り返すユリ。
反対に俺は、と言えば。ちょいちょい出てくる言葉に”?”がついてしまう。
ただ、なんとなくその言葉は、大人になったら増える知識ではなく、そのことを意識的に見なければ知り得ない情報だと感じた。
「ユリって意外と、物知り??」
と言えば、
「そ、そりゃー…。若い頃に色々あったのよ」
バツの悪そうに視線をさまよわせた。
「色々って…」
「えーユリさん、全然、まだ若いですよー」
「俺もそう、思いますよー」
何があったのか聞き出そうと思ったが、他の二人の勢いに圧されて、俺の疑問は空気に溶けてしまった。
「もぉ〜。二人ともおだてるのが上手ねぇ。
あ、そうそう。もし、良かったらでいいんだけど、あゆかちゃん、ライブに誘ってくれない?」
「え、えぇ。もちろん!
あのーその、ご招待とかでなくて、チケット代は払ってもらう感じになるんですけど…」
知り合いのライブとかって無料ってイメージなのに、そうじゃないのか。
「全然、そのつもりだったから気にしないで!」
ユリが当たり前のように返していたことにも驚いたが
「私と、良ちゃんの2人分でヨロシクねぇ」
「はい。わかりました!」
俺も⁉︎と、驚き2連発をもらったのであった。
「そ、れ、と。宇汐くん」
「はい?」
「良ちゃんに日バイトとか紹介してもらえないかなぁ? 良ちゃん、お金、欲しいみたいなの」
宇汐が、バイト探してったけ?みたいな視線を寄せてつつ、言いにくそうに口を開く。
「えぇ。それは構いませんが…」
「あぁ、もちろん。スタジオはド素人の無知な人間には敷居が高すぎると思うんだけど。
イベントスタッフっていうやつ?人手足らないことが多いと思うから、どうぞ、うちの良ちゃんを使ってくださいな」
「あぁ、それなら。でも、ホント、ユリさんって詳しいですよねー」
「まぁ色々ねぇ。伊達に年重ねてないわよ♪」
そう、追随を許さない笑顔で、話を切り上げたユリ。
俺のスケジュールを勝手に色々決めてて、なんだ、と思う部分が多いけれど、それより、ユリに対して、俺と関わりのなかった空白の期間への謎が深まった。




