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 ランチメニューはほぼ食べ終わった頃、ふと、映画館でのことを思い出した。

「そういえば、ユリはなんで、あの時、一般(オトナ)にしたんだ?

 あのままにすれば学生料金で安く観れたのかもしれないのに」

 素朴な疑問であった。

 デザート選びを開始していたユリは開いていたメニュー表を閉じ

「そうねぇ。(おお)真面目(まじめ)な話をしちゃえば、学生さんはそういうのをノリでやっちゃうかもしれないけど、大人はそうはいかないのよ」

 そう困ったように笑った。

「”社会的な責任”ってのがあって、最悪の場合は犯罪になっちゃうのよ。

 かと言って、子供ならなんでも許されるわけでもないんだけど、大人は子供より、厳しいの」

 テーブルの上に(ひじ)をつき

「それに、私、そういう曲がったことキライってのもあるかも。

 ーーーまぁ、そもそも、学生証なしで学生料金になれる映画館なんて今時なかなかないから、遅かれ早かれ一般(オトナ)料金よ」

 手のひらを左右にひらりと振った。

「まぁ、そうだよなぁ」

「良ちゃん。そう言う、変なズルしてないでしょうね?

 ”若気の至り”なんて言葉はあるけれど、犯罪はダメ、絶対ダメよぉ」

 妙な説得力を感じていると、胡乱(うろん)げな目をしたユリに注意されたが、いまいち迫力にかけるのは仕方がないだろう。

「あぁ。わかってる」

 そんな雰囲気の俺を察知したのか、ユリは一瞬微妙な顔をしたが、ため息をついて

「と、り、あ、え、ず。 デザート食べましょう!」

 空気を仕切り直すかのように、言葉を区切ると、デザートメニュー表を開くのだった。


 見た目や言動の多くは子供っぽいのに、時々みえる、大人の顔。

 ユリはユリなりに、いろいろ大変だったのだろうか?

 俺たちに繋がりがなかった数年の間、ユリも俺みたいに悩んだり、考えたりしていたのかな。


「良ちゃん、聞いてるっ?」

 思いにふけていて、ぼーっとしていたようだ。

「聞いてなかった」

「もう。でも、正直でよろしい!それに免じてもう一回言ってあげる」

 ユリがそうデザートメニュー表を机の上に広げて、指差すのは、、、


 2つ? ん?


 不思議に思って、指先から顔へ目線を上げると、とびっきりの笑顔のユリがいた。

「本日のデザートの”甘夏みかんのムース”と、季節限定の”ストロベリーチーズケーキ”

 どっちも外せないのよ〜!! ねぇ?半分こしよ⁇」

 両手を合わせて、まるでお祈りでもするかのように、お願いをするもんだから、どんだけ食い意地はってんだ。なんて、思わないわけでもないけど、面白いからその提案を採用することにした。

「オッケー。その2つ食べようぜ」


ーーー1つを1人で食べるより、1つを2人で半分こした方が、美味しい気持ちも半分こできてイイよね。


 ふと、昔の記憶が蘇ったわけで、決して

「やったー! 良ちゃん、好きよ〜」

 両頬に手を当てて、喜びを噛み締めているユリが可愛いとか感じてるわけではない。断じて。

「そっ」

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