12
映画館のあった繁華街からそこそこ歩いて辿り着いたオフィスビル街の通りにユリのオススメのカフェがあった。外観はカフェらしくなく、オフィスビル街の一角にある古めのビルの2階にあって、知らなければ通り過ぎてしまいそうである。カフェらしいと言えば、申し訳ない程度にはためくクリーム色の旗で、唯一の目印にもなりそうだ。
「いらっしゃいませ。お二人様ですか?」
店内に入ってみると意外と繁盛しているようで、カップルや女子グループなどが多く談笑していた。
「はい、2人です」
ユリのお気に入り、と言うだけあって慣れた様子で応えている。
「かしこまりました。では、あちらの窓側の空いているテーブル席をご利用ください。
デザートにつきましては、レジ近くのショーケースで現物を確認できますので、よかったらご覧ください」
案内された席に着くと、さっきまで歩いていた歩道が見えた。
オフィスビルではあるけれど、窓から外の景色が見えるのは気持ちがいいものだ。
「ふふっラッキーだわ。窓側って席が埋まりやすいのよぉ。今日はツいているわっ♪」
鼻歌でも歌うように体を揺らしながらメニュー表を開くユリ。
「どれも美味しいから、気になるものを注文よ!
あ、でも、デザートも食べるから、そのことも考えて選んでね」
俺がデザートを食べることは決定事項らしい。
甘いものを自主的には食べないが、人に勧められたら食べるし、まぁまぁ好きだと思う。
「了解」
最終的に俺が選んだのは、ランチセットでメインがステーキのものを選んだ。ユリは、同じくランチセットではなるが、一つのプレートにサラダやメインとなる魚が少量ずつ盛り付けされた女子向けランチなるものである。
テーブルに並べられるとユリはスマホで写真を撮ったかと思ったら「良ちゃんのも撮っていい?」と確認して撮っていた。何かにSNSなどに使うのかと思ったけれど
「別にそう言うのやってないから、記録よ記録。
女子っていうのは、なんとなく記録を撮りたくなる生き物なのよ」
よく分からないことを言っていた。
使わないのに写真を撮るって、意味がないようにも思うけれど、そうじゃないらしい。
「良ちゃん、もし、彼女ができて、こういう行動していたら、あったか〜い気持ちでいるのよ」
写真を撮り終わると、もう食べていいわよ。と言いつつも、ジド目なユリは小言をする。
「あぁ」
やっと食事にありつけて、メインの肉料理に舌鼓を打つ。
「分かってる? そんな冷めた目…って言うほどじゃないけど、冷静に、なるほどなぁーなんて顔しないのよっ」
サクサクとフォークでサラダの葉物を差す音に混じって、鋭い指摘が入った。
「そんな顔してた?」
思わず顔を上げて、ユリを見ると
「してるしてる。はぁ、お姉ちゃんは心配だわ」
フォークに刺したサラダを頬張ると、ご近所のおばさんのように片手で頰付きながらため息ひとつこぼされた。
なんと言うことだ。
ユリに指摘されるのは・・・意外と俺は表情に出やすいのかもしれない。気をつけよう。
心のメモを残した。




