50.打ち上げです。アル中多いっ!
ギルドへ戻ると収穫祭が大成功を収めたと聞いて一安心したルティアです。
街中の店や酒場では各々が打ち上げをしています。ここギルドも同様です。アルコール臭がスゴイわ。
「成功してよかったです」
「ホント、疲れた。精神的に疲れた。もう働きたくないね」
リアたんはバングルの効果で、ルゥたんは事前に自分に《自動体力定期回復》を掛けていたので体力は問題なかったのですが、精神がね……うん……働くって辛いわ。
おかしいなぁ。当初目指していたスローライフ何処行ったぁ!?
「おーいリアさんにルゥさん。こっちで一緒に食べないかい?」
声を掛けてきたのは顔見知り冒険者パーティ”多種多様”のリーダーのアルジャンだ。同じパーティメンバーである獣人のニャムさんはテーブルでひたすら唐揚げを食べている。同様に浴びるように酒を飲んでいるドワーフのドムさんとエルフのエルトゥヌスさんもいる。
「(うおお! 酒好きコンビがおる! い、イヤだ!)」
「戻って食べようと思ってましたが、せっかくだから行きましょうかルゥさん」
リアたぁぁぁん! あそこ危険よ! 絡まれるのが何故分からないの!?
そんな心情を彼女は分からないのか、スタスタとアルジャンさん達の方へ行ってしまったので仕方なく自分もそちらへと向かう。
「おお! 嬢ちゃん達お疲れ!」
「お疲れ様ですお二方」
「ニャ―! あのクレープってやつ美味しかったニャ!」
「あらニャムさんも来てくださったのですか?」
「うん! ヒールベリーも桃もどっちもサイコーだったニャ!」
忙しすぎて気が付かなかったがニャムさんも買ってくれたのか。毎度有りです。少しでも癒やされたいと思い、カワイイニャンコちゃんとリアたんの間に座り萌え萌えしていたらドムさんがジョッキを置いてこう言った。
「のぉルゥ嬢ちゃん、珍しい酒とか持っておらんのかのぉ?」
チッ! 出たなアル中ドワーフめっ!
このドムさん、勘がいいのか事ある毎に「行商人なら珍しい酒のツテないか」としつこく聞いてくるのだ。以前に街へ宿泊した時に偶然同じ宿だったみたいで、その時は彼に会わなかったが、後日出会った時に「実は宿でこんな夢みてのぉ〜……でこんな酒を聞いたことはないか?」って尋ねてきたのよ。
聞いた時……心の中ではムンクの叫びだったよ! よく表に出さなかった! 偉いぞルゥたん!!
何故キサマはウイスキーを知っている!? ブランデーを知っている!?
いやいや、もう怖すぎて怖すぎて!! ドワーフのアルコールセンサー怖いわっ!!
この世界にはないと思われる酒をドンピシャで言い当てた! エルトゥヌスさんは「ドムの酒に対しての勘は凄いのですよ!」と嬉しそうに言うし……。
ドワーフとエルフって仲悪いんじゃないのか!?
「え? それ大昔ですよルゥさん。今は口喧嘩するくらいで大の(酒飲み同士で)仲良しですよ」
お家でリアたんに聞いた時そう返答が返ってきた。うん……お酒で仲良くなったのねドワーフとエルフ。
お酒ってスゴイんだね(棒読み)
閑話休題
「そ、そういえばハゲ見ないけど?」
「ギルマスなら領主様のパーティに参加だからいないぞ」
「ふーん。教えてくれてありがとうアルジャンさん」
いつものハゲが見当たらないので聞いたらアルジャンさんが教えてくれた。ハゲも大変なんだね〜。あんな貴族共のパーティなんぞ堅苦しくてルゥたんは行く気ないわぁ。
「のぅ嬢ちゃんお酒は……」
「酔っぱらいウルサイでしゅ」
しつこいドムさんにシッシッと手で追い払う。
「うう、つれないのぉ」
諦めたのか追加のエールを取りに席を離れた。いっぱい【無限収納】にあるけど出したら出したで今後が煩い。
「(こそこそ)ねえルゥさん、今日はお祝いですしビールや”アズマ酒”ならいいのでは? 私も飲みたいです」
天使が小悪魔になったぁぁぁ!? 何言っちゃってるのチミ! お酒の取り扱い注意って言ったのチミだよぉ!
確かにこの世界には日本酒―――アズマ酒は存在する。アマテラス大陸のお酒だそうだ。ホント、アマテラス大陸って名前もそうだけど日本を思い出すわ。
このアズマ酒だが他の大陸のお酒だからセントラル大陸ではメチャ高い。運搬も大変だからもあるが、美味しいので入荷しても大抵は貴族が買っちゃう。また運良く残っていてもドワーフやその他の酒好きさんによる争奪戦。どんだけお酒好きなんだろうねこの世界の人達。
「私も久々に飲みたいです。駄目?」
くおおおお! そんなカワイイ顔しちゃダメ! 悪い虫がついちゃうでしょ! ハッ!
「(ルティアの袖をクイクイ)やっぱり駄目ですか?」
ぐはぁぁぁぁ!
この小悪魔ちゃんめっ! 分かってやってるよねっ!? ルゥたんの萌えポイント押さえてるよね!?
なんてイケナイ娘なんだ! はいご馳走様です! ありがとう、ありがとうございますぅぅぅ!!
「ルゥ、アルコールの匂いで酔っちゃったのかニャ? 椅子から落ちてすごくゴロゴロしてるニャ……」
「ルゥさん大丈夫ですか!? 人が多くて怖いのですか? そうだ……ヨイショっと……」
ヒョイっとルゥたんを抱えたリアたんはあろうことか、お膝の上にオン!
「(へっ?)」
「大丈夫ですよ。これで怖くないですよね?」
うおぉぉぉぉぉぉぉ!! 神様、仏様、女神チョコたん! ありがとう! 生きててよかった!!
美少女の膝に抱えられている! 頭に当たるポインポイン枕! サイコーですよ!!
「羨ましい……」
ふっ! アルジャンさん、この枕はルゥたんのものです! 誰にも渡さんっ!
「リアたん、飲みたいの?」
「はい!」
「仕方ないなぁ……パチンっとな♪」
みんな許しておくれ。ポインポインの魔力には勝てなかった(笑)
喉こしスッキリのラガービールとアズマ酒(日本酒)、あとワインの赤と白を取り出した。ロゼワイン? ウイスキー? 流石にそこまで出すわけないじゃん。
「今出した分だけしかないという事をじゅうぅぅぅぅぶんに理解してみんなで飲んでね」
「おおお、ルゥさんの奢りですか!? 奢りですよね!? いえ代金支払ってでも飲みますよ!」
「そこのアル中エルフ、今日だけだから。毎回持ってるわけちゃうからね!」
アル中エルフに一応釘を刺しておく。これで毎回絡まれるものイヤだもんね。ホントは大量にあるけどね。
「うおおおおお! 酒じゃ! 酒! しかもアズマ酒がある!」
エールを持ったまま物凄い勢いで戻ってきたドムさんの声を皮切りにギルド内は大騒ぎとなった。
「「「奢りだとおお!?」」」
「しかもあのアズマ酒! オレ飲んだことない!」
「俺もねえよ! でも知り合いのドワーフが旨くてサイコーとか言ってた!」
「うーん! このワイン美味しい〜!」
「キャー♪ このエールも今までのエールとは全然違う! 美味しいわね!」
「「「女性陣はやっ!! 特にドワーフ女性達っ!!」」」
こうしてバイキングの如くみんなは次々と酒を飲んでいく。
飲めないルゥたんとお酒苦手なニャムさんは席を移動してジュースを飲みながら、醜い光景を眺めていました。リアたん? お酒出したらルゥたん下ろしてお酒に合うツマミを手にしながら争奪戦へ旅立ちました。ああ、ポインポイン枕がぁ〜!!
「しかしみんなお酒好きだね〜」
「全くだニャン。ニャムにはお酒の良さが分からないニャン。それよりも美味しいご飯のがいいニャン」
「同感です」
お酒に群がるアルコール中毒者達を眺めながら注文したフライドポテトを口へ放り込むのでした。
【読者の皆様へ】
いつも読んで頂きありがとうございます!
下の方をスクロールして頂きますと評価がありますので宜しければ是非とも評価ポチリをお願い致します。
作者のモチベーションがあがり作品意欲へと繋がりますヾ(。>﹏<。)ノ゛✧*。




