閑話.とある”少女”の弔い
今回は一方その頃は〜的なお話です。
ゴーン、ゴーン、ゴーン……と教会の鐘が鳴り響く。
「お嬢様ぁ〜! お嬢様ぁ〜!」
「落ち着きなさいファニー!」
同僚に咎められても尚1人のメイドが脇目も振らず棺桶にしがみつき泣いている。
今日はある1人の少女の葬儀がひっそりと行われているのだ。
参列しているのは少女の家族である兄、妹、そして病気で立つものやっとの父親とそれを支える執事。あとは彼女を慕っていた使用人の数名である。他の参列は断ったそうだ。
「カイル殿下の温情で弔いますが埋葬先は罪人墓地ですし、参列も結構です。”元”妹とはいえ罪人ですので家族以外はご遠慮下さい」
これは兄であるアベルの言葉である。
葬儀は”元”だが公爵令嬢のものとは思えないほど質素で埋葬も先祖代々の墓ではなく罪人墓地へと埋葬される。参列者も先程述べたように数少ない―――と思われたが陰ながら彼女の冥福を祈る多くの領民達がいた。
「ううっ、ロゼリア様お労しいや……”死境”で魔物に喰い殺されるなんて……」
「しかも首だけだったらしいぜ」
「王家のバカ王太子とかに嵌められたんだよ! 葬儀に来てもいやしねぇ!」
「しっ! どこで聞いてるか分かったもんじゃないぞ!」
「かまうもんか! アホ兄貴や姉を陥れた性悪妹なんかより、俺たち領民の為にいつも努力して下さったのはロゼリア様なんだぞ!」
領民に慕われていたロゼリアの死を悼む者は大変多かった。彼女は一見冷たい雰囲気を持つが領民の為にと、他国などと交流をしたり、慈善事業など様々な改革を行って民を潤していたのだ。
「くそー! 王都の民はロゼリア様を”悪女”だの”冷酷女”など抜かしやがるがそんなことあるもんか!」
「そうだ、そうだ! 王都の奴ら、勝手なことばかり言いやがって! なんにも知らないくせに!」
「そこっ! 何をしている!? 今日は教会へは立入禁止のはずだぞ!」
見張りの兵に怒鳴られ渋々教会から離れる領民達。しかし離れても彼女への追悼は忘れない。小さな子供まで膝をついて祈りを捧げている。
「ろぜりあさまが、やすらかにねむれますように」
やがて葬儀も終わり、まだらに人が去っていく。
「お姉様……可哀想に……こんなにすぐに死んでしまうなんて……」
「ああっ! マリエルよ! あんなに虐げられていても冥福を祈るとは……なんて優しい子なんだい!」
「お兄様! そんな風に仰ってはいけませんわ」
「いいんだよマリエル。無理しなくても。さぁ、こんな穢れた場所にいてはお前が穢れてしまう。屋敷に戻ろう」
家族である彼らも墓地から立ち去る。
しかし父であるセト=アーデルハイド公爵と執事のセバスはその場に残っていた。
「旦那様、御身体に差し支えます。お屋敷に……」
「いや、もう少しだけ頼む……」
心配する執事には申し訳ないが彼は目の前で眠る娘に懺悔したかったのだ。
「(ロゼリアよ済まない……もう少し早く婚約を白紙に戻していればお前はあんなアホ共に嵌められず死ぬ事もなかったのに……私ももうすぐそちらへ行くだろうから待っていておくれ……)」
「げほげほっ」
「旦那様っ! すぐに屋敷に!」
慌てた執事により屋敷へと戻ることになったセト。
彼はここ近年、原因不明の病により体調を崩しており回復魔法で持ち直しても一時的であったり薬の効果も今一つだった。
病に伏してからは政務は跡継ぎであるアベルが行うべきであったが、元々あまり政務に精を出さず、特に次女のマリエルが学園に通うようになってからは更にそれを怠り、その負担は全てロゼリアにきていたのだ。
セトは息子を跡継ぎから外し、婚約解消したロゼリアを後継者とするために事を進めていたのだ。それも無駄になってしまったのだが……。
セトは願う―――せめて今度生まれ変わる時は幸せに、幸多き人生になるようにと―――
空を見上げて亡き娘ロゼリアへ思いを馳せるのであった。
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パパさんはよくある毒親じゃないです。まぁいずれチラっと書くかも・・・。




