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スケルトンはガチャスキルで強くなる  作者: 一時二滴
第二章 壊れたる者
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根競べ

久々に更新です。そろそろこの章終わります。

 シズクが倒れて幾分が過ぎただろうか。一向に意識を取り戻す気配がない。視線を度々送るが、シズクは変わらず死んでいるかと思えるほどに瞳には光が無く、顔に生気がない。呼吸や脈の一つや二つ確認できれば、この不安は容易く安心へと変われただろう。しかし、今の俺にはそれを確認する余裕は刹那もない。


 シズクが倒れた後、白装束の化け物は真っ先にシズクの下へと向かった。剣牢結界を行使していた俺ではなく、仲間を呼びに行くであろうシズクを標的に変えたのだ。

 俺はすぐさま地面を踏み鳴らし、出来うる限りの最高速度でシズクの下へと向かいながら骨の剣を形成し、今にもシズクに対して手を振り下ろそうとしている白装束の化け物とシズクの間に滑り込み、剣を構える。

 受け止めようとは思わない。骨の剣の耐久力と俺のステータス的にその選択は俺とシズクの死以外の結果を生まない。

 だから受け流す。いなすんだ。攻撃を。なんとしてでも。できなければ、死!!

 地面に根を張るように足を踏みしめ位置を固定する。腰を少し下げ、出来る限り衝撃を流せる状態を保つ。そして衝撃が訪れた。


 重い。きつい。痛い。潰れそうだ。砕けそうだ。死んでしまいそうだ。

 体の節々に衝撃が行き渡り、全身が激痛で悲鳴を上げる。今すぐ剣を手放し、逃げてしまいたくなる。

 だが、ここで逃げてはシズクが死ぬ。死んでいるように倒れているが、白装束が向かっていたんだ。恐らく、生きている。今はスキルの影響でこうなってしまっているだけだ。ならばいずれ帰ってくる。必ず帰ってくる!だから、それまでシズクの身体を守り抜くんだ!!


「うぉぉぉおおおお!!」


 疑似声帯を思いっきり震わせ、必死に雄たけびを上げて根性を叩き直す。弱音や邪念を振り払い、もう一度気合を込める。


「うらぁ!!」


 骨の剣は盛大にボロボロになってしまったものの、なんとか脅威の手をいなしきることに成功する。思わず喜びの声を上げたくなるが、そんな余裕は全くと言っていい程ない。

 それ次と言わんばかりに右手に持った鉄棒の尻を突き立てられる。少しの猶予も与えない連続攻撃に新たな骨の剣を作り出す余裕はなく、さっきの攻撃で罅の入った骨の剣で受け流す他なかった。


「クッ!!」


 武器を用いていたからだろう。衝撃はさっきの比ではなかった。稲妻が腕の内で迸る。バキバキと鳴ってはならない破砕音を腕が鳴らしているのがわかる。だけど、耐える!一度耐えれたんだ。もう一度くらい……。

 その時、腕とは別の場所から破砕音が耳に伝わった。剣が軽くなった。衝撃が伝わらなくなった。

 骨の剣が限界を迎え、刃の部分が砕け散ったのだ。加えて、俺の顔半分を抉り取っていった。


「がぁぁぁああ!!」


 肉の仮面で形成した肉片に痛覚はないが、その内側の頭蓋にはある。顔半分を生きたまま削り取られるような想像を絶する痛みに思わず声を上げる。

 今まで経験したどの痛みよりも圧倒的に痛い。しかし、スケルトンが持つ痛覚切断の特性によって痛みは一瞬で消え去った。もしまだ痛みが続いているのならば意識が飛んでいただろう。

 剣は砕け、顔は抉られたが鉄棒を少しでも逸らせたのは幸いだ。あのままでは俺とシズクの二人とも串刺しコースだったからな。まあ、HPがゴリゴリに削られていたりと危機的状況は変わりないが。

 白装束の化け物が両手を使い切ったことで隙が出来た。しかし、俺の攻撃は何一つコイツに通らない。コイツを打倒するにはシズクの千撃が必要不可欠だ。なら、やるべきことは一つしかない。

 俺は白装束の化け物が隙を晒しているうちに擬骨生成で顔半分を修復させ、複数本の骨の剣を地面から生成した。

 俺がやるべきはシズクが意識を取り戻すまでシズクをコイツから守り抜く事。戻ってくると信じて攻撃に耐え抜く事。いつまでやればいいのかなんて当然わからない。HPが先に尽きてしまうかもしれない。それでも。


「やってやるよ。そのくらい」


 痛みも衝撃もあらゆる障害を耐え抜いて勝つんだ。死ぬことに比べればへでもない。

 シズクが起きるまで耐え抜ければ俺の勝ち。俺のHPを削り切るか諦めさせればコイツの勝ち。

 攻撃を逸らすだけでも多少ダメージを受けるし、圧倒的に俺が不利な状況だがまあ仕方ない。勝つにはこれ以外に方法が思いつかないんだ。

 覚悟を決めろ。死ぬまで絶対守り抜くと。

 決意を胸に地面に突き刺った骨の剣を一本掲げ、剣先を白装束の化け物の顔面に向けて気迫の籠った力強い声で言い放った。


「さぁ、根競べと行こうか!!」

 

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