古の遺跡
馬車でゴロゴロしている間に古の遺跡へと到達した。
岩石を組み合わせて造られ、風化した岩石や所々に生えた苔が遺跡の年季を思わせる。
階段から始まる入り口だけが顔を出し、建物自体は埋もれている。
死の洞窟と同じ地下に潜るが他のダンジョンだ。
「あ、これを先に渡しておきます」
いざ出陣!と歩み出すとシズクに声をかけられ歩みを止める。
シズクが手に持っていたのは湯たんぽのような形をしたレトロな水筒だった。
「土のゴーレムが出たらこのマジックボトルをかけてください。アイテムバッグみたいな仕様なので容量は気にしなくて大丈夫です」
そう言ってマジックボトルを手渡された。
重さは普通の水筒並みでとても容量気にしなくていいほど入ってるとは思えない。
だけど多分めっちゃ水入っているんだろうな。
てか、アイテムバッグやこの水筒を持ってるってことはシズクってひょっとして金持ち?
『マジックボトルはアイテムバッグの劣化版で、安価で購入できる反面用途が限られています』
それでもだよ。アイテムバックだけでも家一個買えるくらいの値段するらしいじゃん。
……壊さないように気を付けよ。
古の遺跡に足を踏み入れ階段を下ると直ぐ、土のゴーレムが姿を見せた。
「ンゴゴゴゴ」
よっしゃ、早速水をぶっかけてやろう。
マジックボトルのキャップに手をかけた。
その時には土のゴーレムの胴は真っ二つに切り裂かれていた。
「え?」
「ふぅ」
シズクが斬ったのだ。
地を蹴り、腰に携えた剣を鞘から引き抜くと無駄のない動作で横線を加えていた。
あれ?水いらなくね?
『土のゴーレムの硬度は平均的に鉄と同程度。水をかけるとその身体は泥となり豆腐未満の硬度に変化します。元々土のゴーレムを切る実力があれば水は必要としません』
土なのに鉄とはこれ如何にと思うが置いておいて。
つまり、俺はシズクに弱いと判断されていると?
『邂逅の時、ボスモンスターに反撃を加えようとしていなかったところを見た結果でしょう』
なるほど。じゃあこの水はシズクが加勢できない場面を考えた念のためのものという訳か。
ハッハッハ。シズク、舐めてもらっては困る。死の洞窟では確かにお荷物だったが、今は多少ステータスが上がっているんだ。足手まといにはならない実力を見せてやろう。
シズクがゴーレムの魔石を拾うと俺たちは奥へ奥へと古の遺跡の中を潜っていく。
進んでいくと再び土のゴーレムと相見える。
シズクが先手必勝と言わんばかりに地を踏みしめ始めたので俺はそれを手で制す。
「なんです?」
「ここは俺に任せてくれないか?実力を見せたい」
「……わかりました。危ないと判断したら助太刀しますからね?」
「わかった」
シズクは渋々了承して一歩下がった。
さて見せてやろう。今の俺の実力を。
「《影撃ち》からの《泥沼》!!」
手に入れたスキルを早速行使した。
実は遺跡の道中でスキルとアイテムの効果は既に確認済みだった。
影撃ちの能力は簡単に言うと奇襲。出会い頭にしか使えないスキルだが、効果は絶大で相手の影から一発だけ攻撃を加えられる。
攻撃は物理、スキル問わず何でもだ。物理なら影から俺の攻撃力と同等の一撃が放たれるし、スキルなら影撃ちの対象に無条件で発動される。
今回影撃ちで使ったのは泥沼という足場を沼に変えるだけのシンプルなスキル。沼に変える場所はスキルを意識して触れなければならないし、触れた場所は一個分しか記憶してくれない。かなり頭を使わなければ相手を沼に嵌める芸当は難しいスキルだ。
しかし、影撃ちと併用することで対象の足元に無条件で沼を形成できる。
スキルを説明された時にすぐ思いついたコンボだ。
実戦で使うのは初めてだったが想定以上で起点としては十分すぎた。
土のゴーレムは膝まで沼に浸かり、身動きが全く取れなくなっていた。
沼から脱出しようと足を上げるが更に沼へと沈んでいく。どの深さまで沼が出来ているのかは不明だが、かなり深そうだ。底なし沼のように足掻けば足掻くほど泥沼へと沈んでいく。
このまま放置していても勝てそうな雰囲気だが、俺が強いところを見せなくてはシズクからの評価は改められない。
俺は右手に骨の剣を作り出し、両手で構えると逆袈裟に土のゴーレムを切り裂いた。勿論水を使わずに。
切り離された土のゴーレムはその場で溶けだし、魔石だけ残して消失した。
それを見届けるとシズクの方に視線を向け、ちょっとだけドヤッってみた。するとシズクは急に頭を下げ、謝罪した。
「すみません。私、スケさんが弱いんじゃないかって勘違いしてました」
「え?あ、いや、だ、大丈夫だよ。死の洞窟の時は本当に助かったし、あの時は本当に弱かったからね」
まさか謝られるなんて思わなく、しどろもどろになってしまった。
ガチャスキルの事を言うべきか言わざるべきか迷っていたが、この際言ってしまおう。シズクに悪い。
俺は自分の持っているガチャスキルについてシズクに色々話した。
「じゃあ、そのガチャを引いていなかったからあの時は弱くて、今はガチャをたくさん引いたから強くなったってことですか?」
「そういうこと」
「なるほど。便利ですねガチャスキルって」
「そんなことないよ。ほら」
俺はそう言いながらポケットに入れていたガチャ産のアイテムを見せた。
ナイフ、手帳、香水、クリップ、腕輪の五つ。腕輪だけは別途の効果が付随しているが、他は名前通りの用途しかない日常品。
いわゆる爆死という奴だ。
幸い、ポケットに入る程度のアイテムしか出なかったからいいものの、家具などの大型物品が出てしまえば嵩張ってしまう。
シズクに頼んでアイテムバッグに入れてもらおうにもバッグの口より大きいものは入れられないらしい。
これからは後先考えてガチャを引いた方がいいな。
「凄いものはあるけど逆に凄くないものもある。ランダム仕様だからね。そこが面白いところでもあるんだけど」
俺は笑いながらそう言った。
「わかりました。じゃあ今度は私が自分のスキルについて話します」
「え?いやいいよ別に。俺が話したいから話しただけだし」
「私を気遣って話してくれたってことは分かってます。だからそのお礼です」
「でも」
「聞いてくれなくても勝手に話します。聞くまで話し続けます」
頑固だなこの子。
でもせっかく話してくれるなら聞こう。死の洞窟の二層で苦戦してた子がどうやってあんなに強くなったのか気になってたし。
「わかった、聞くよ。……あれ?でも何か忘れているような」
『魔石』
「あぁ!!」
ぼそりと呟かれた叡智の言葉でハッと思い出し土のゴーレムが消え去った場所に目を向ける。
そこでは泥沼の中にほぼほぼ浸かっている魔石の姿があり、数秒もしないうちに沈んでしまった。
魔石は資金源。シズクに借金をしないためには一個でも逃すわけにはいかない。
俺はすかさず泥沼に手を突っ込んだ。そして何とか魔石を掴み取り、腕を引き抜こうとしたその時、泥沼は元の石畳に変化した。
泥沼は発動後、一定時間で効果を失ってしまう効果を持つ。
つまり魔石は石畳の奥にあるという訳だ。そして俺の手も石畳の中。
叡智、もっと早くに教えてくれ。
『聞かれなかったので』
いじわる!!最近は聞かなくても答えてくれたくせに!!
叡智はスキルだが、日に日に人格でもあるんじゃないかと思えてくる。
てかこの状況、体勢的に俺自身の力じゃ抜けられない。
「すみませんシズクさん、助けてください」
心底みっともない姿でシズクに助けを乞う俺であった。
アイテムの中身については臨時収入の時に入れてた筈なんですが内容修正してた時に消してしまったのか無かったので、この話にいれました。
今回の話で少女のスキル判明させる予定だったのに…。今後は気を付けよう




