勘違いの恐怖
《視点:レイラ》
ミユが倒れた途端、危惧していたことが起こったと思い込んだルークが怒鳴りを上げ攻撃が単調になった。それをチャンスとばかりにアイツは動きを変え、ロッド、ルーク、アムスを巻き込んで此方へと蹴り飛ばした。
アムスでさえ支えきれなかった攻撃を直で食らったロッドのダメージは大きく、しばらくはまともに動けないであろう状態。アムスだってロッドとルークを支えるために背後で受け止めたため二人の下敷きとなり、すぐには元の態勢へと戻れない状態。ミユも気絶している。五人の連携でやっと抑えられたアイツ相手にルークと私だけで三人を守りきれるとは到底思えない。
絶体絶命。何の手立ても思いつかない。
アイツはゆっくりとこちらへ歩いてくる。余裕があるのか足音は明確に、まるで絶望に陥っている私たちの恐怖をさらに掻き立てるかのように。恐怖に塗りたくられているせいか視界は捻れるように歪み、漆黒に染められたフードの奥に隠された不気味で無表情な仮面は僅かに笑っているかのようにも見えた。
私達は死を覚悟した。だが、一矢でも報いようと考えたのかルークはアイツに唯一の武器である剣を放り投げた。
その攻撃をアイツは一切避けようとしない。無駄な抵抗とでも思っているのだろう。一本槍のように、アイツとルークを繋ぐ一本線を沿うように真っ直ぐブレる事無くその一本の剣は突き進み、一切の抵抗を受けずアイツに衝突した。
すると衝撃的な出来事が起こった。なんと、ルークの放った剣はアイツのことを容易に貫き、貫かれたはずのアイツは煙のように霧散して消えていったのだ。
最初は何かのスキルだろうかと警戒したが、その後数十分経とうともアイツが姿を現すことはなく、目を覚ましたミユに敵意察知を使ってもらったがスキル範囲内に私たち相手に敵意を持つ存在は一つとしてなかったそうだ。
《視点:スケルトン》
第二十二階層。
煙象強促によりスピードアップした俺は残絵をあの場に残しながら立ち去り、再度エンカウントすることを避けるために叡智のナビを用いながら新たなる階層へと足を踏み出していた。
二十二階層は前の階層と然程変わらず、デイルにより強化を施されたであろうゾンビやら骸骨やらが徘徊していた。
魔物たちのステータスは前の階層より少々強くなった程度ではあるが、俺の持つアイツらへの有効打が混沌に上乗せされた魔法のみのためあまり無茶はできない。まぁ、言い換えれば魔法さえ打てば倒せるということなのだが、依存のし過ぎはよくない。もしも突如それが使えなくなったりした場合、それに頼り切った戦法ではやっていけないからだ。
時間をかけてでもなんとかできる存在にならなければデイルに勝つことはできない。理想としては時間をかけずに自身の持ち得る力でなんとかできればよいのだが、さすがにそれは欲張りというものだろう。二兎追うものは一兎も得ずともいう。今は自身の出来うる事をするまでだ。
ひとまず俺は魔物との戦闘を極力避けるように洞窟内を移動し、少し休めるような安全な場所を探した。
理由?そりゃあガチャに決まっているだろう?さっきの人間達に邪魔されたせいでお預けとなったが、引いたからには中身を確認しなくては衝動が収まらない。ガチャをやる者の性という奴だ。
少しして近くに魔物の気配が殆んどしない安息の地を見つけた。
よし、ここでいいだろう。
俺はさっそく空庫からガチャを引いた際に排出された赤いカプセルを六個取り出し、手慣れた手つきでカプセル上部をに練り開封していった。
開封されると同時に顕現されたミニチュアなそれは手で触れると元の大きさへと戻っていき、元の大きさに戻りきったところで俺はそれらを目の前に並べると一つ一つ視認の瞳で鑑定していった。
【ドラゴンスレイヤー】
世界で初めて上龍族を葬ったとされるクレイモア。その巨大な刀身に下竜族、上龍族は本能的な畏怖を覚える。
攻撃+200 下竜族、上龍族に対してのみ《本能の畏怖》が使用可能。
【杞憂なる罠】
設置した瞬間、周りにはそこら周辺に罠があるだろうと認識され、注意を引くようになる。効果はこれのみで罠の役割は果たさない。破壊された瞬間効果を失う。
【煙幕球】
一定の衝撃を受けると爆破し辺り一帯に煙を放つ。
【立てかけ板】
何かを立てかける際に使う家具。
【加速ポーション】
一時的に加速するポーション。
三分間、俊敏+100
【血抜きの矢×1】
矢じりに魔術が付与されており、外傷を与えた瞬間その傷口へと矢じりに込められた魔術が付与され、傷口から出血が止まらなくなる。効果は一度きり。
後一本




