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33、私小説

 夢のない子供でした。将来、パイロットになろうと思います、と小学生の時書いた。嘘だった。他に書くことがなかったのだ。

 小学六年生から中学一年生にかけて、猟奇殺人犯に憧れていた。大多数を敵にまわして勝ち残れるのは、警察に捕まらない連続殺人鬼だけではないか。そう思った。将来、猟奇殺人犯になって完全犯罪を目指そうか。そう思った。

 しかし、中学生にもなると、考える。猟奇殺人犯と兵隊が戦ったらどっちが勝つか。兵隊の圧勝だ。猟奇殺人犯は弱いもの虐めをするから勝つのであって、最強の装備を身につけて戦う兵隊さんには勝てそうにはない。猟奇殺人犯が戦場に行ったなら、大して役にも立たずに死ぬだろう。そう思った。ならば、兵隊さんになるべきか。ここで迷う。

 おれの思う子供というものは、そういうことを考えている生き物であって、夢はなく、猟奇殺人に憧れ、論理で兵隊が最強だと結論づけるそんなやつらである。

 やがて、最強を目指すことをあきらめ、兵隊になることを目的とせず、周りに流されて進学する。そして、強いことより大切なのは、新しいことを発見することだと思いつく。大人に近づいたおれは、ついに夢を見つける。

 それはSF作家になることだった。SF作家は、科学者をSF作家より尊敬し、発明家をSF作家より尊敬し、SF作家は科学者や発明家の手の届かないことを描いてみせる。自分が未来を切り開く最先端に立った気になる。大人になったおれは、弱肉強食の掟より大切なものがあることに気づいていた。 

 ここで、SF小説と漫画を買って帰り、必ず先に漫画を読む自分に気づく。小説書くより漫画家目指せよ。そんな自己矛盾した思いを抱えて、小説を書きつづけて大人になる。作家にデビューするのはもちろん無理で、社会の流れに任せて就職する。

 発狂する。これは正確にいうと、秘密組織に襲われたのだと思う。神経を攻撃する集団に襲われ、耐えられなくなって、会社を辞める。会社を辞めても、SF作家になればいいや。もともとそのつもりだったのだと思う。

 短い恋をする。たぶん、相手には他に男がいたのだろう。短い間の付き合いで終わる。

 さらに恋をする。あっという間に振られる。もっと男らしくしてよ、といわれる。

 秘密組織との攻防がつづき、屈辱の懇願と至福の経験をして、組織との遭遇が終わる。最後に、仕上げに精神病院に入る。夢も希望もないという精神病院の閉鎖病棟で、退院だけを目的に医者と交渉を行い、長い半年がすぎる。そして、晴れて退院する。

 退院したおれは急に猛烈に小説を書き始める。ネットにSF小説をのっけるネット作家をつづける。小説の公募に応募してもほとんど落ちる。一回小さな賞に受かったが、その後、連絡はない。ネットの親切な人に教えられて、シナリオライターになる。今、ここ。

 SF小説を書くこと以外に自分に価値のあることができるとは思えない。いちおう、大統一理論の模索と全小説の中から読むべき最良の本を探す読書の作業を独自に行っている。夢は見つけたし、社会的に怠惰だが日常は充実している。友人は結婚していくが自分には機会がない。自殺未遂もとっくにすまし、自殺するより生きてた方がいいと結論を出している。こんなおれの人生はどうなる。まだ三十歳だ。これがおれの半生だ。


※半自伝


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