30、赤い糸の復活
むかし、神さまはすべての男女が素敵な恋愛ができるように、すべての男と女に赤い糸をつけ、理想の相手と赤い糸で結んでいた。その頃は、すべての恋愛が成就し、はぐれる男女は一人もいなかった。
ある日、カナエという悪女が現れ、神のつくった因果律に亀裂を与えた。カナエは自由意志をつくり出し、それぞれの男女が自分の力で相手を見つけるように、世界をつくり変えてしまった。赤い糸はちぎれ、男女はばらばらになり、恋愛はすれちがい、結ばれては喧嘩をして、人々は結婚を人生の墓場と呼ぶようになった。
カナエは数十年の人生を生きて死んだが、その時間は、時間旅行者にとって、カナエの生きていた時間を改変すれば、赤い糸が復活するという重要な歴史の時間帯となった。
岸本瑠華は最近、彼氏のような関係の石田勝人と一緒にタイムマシーンに乗った。目的はカナエを暗殺すること。カナエを暗殺して、お互いに本当に理想的な相手を見つけることだった。
「わたしは勝人のことなんて、ぜんぜん好きじゃないんだからね。勝人は自分勝手で屁理屈ばかりいって、わたしのこと不細工だと思っているでしょ。すぐにわたしより可愛い女に乗りかえようとしているのはわかってるんだからね。あなたと一生一緒にいるなんて無理よ」
瑠華は一緒についてきた勝人に文句ばかりいっている。嫌いなのだ、瑠華は勝人のことを。なんで、一緒になったんだろうと、二人とも不思議に思っていた。友人関係の流れに任せていたら、一度だけ付き合うところまで盛り上がってしまったのだ。
「おれだって、カナエの存在を消して、もっと理想的な女の子に会いたい」
二人は、そして、カナエに会った。カナエが神さまの因果律を変えてしまった瞬間に、大勢の暗殺者がやってきてカナエに銃を撃っていた。歴史の重複する大きな分岐点だった。
瑠華と勝人はカナエに向かって銃を撃った。カナエは銃に撃たれて死んだ。カナエは時間旅行者によって、何度でも殺される。
瑠華は赤い糸をたどって瑠華の理想の相手へ。勝人も赤い糸をたどって勝人の理想の相手へと、会いに行った。
カナエの世界は不満がいっぱい。カナエは一粒だけ涙を落とした。




