22、量子コンピュータの侵略
200X年、量子コンピュータが開発された。量子コンピュータは、従来のコンピュータが0か1を表わす半導体の集積で演算をしていたのとは原理がまったく異なる。量子コンピュータは、ビットの代わりに量子ビットというものを使う。量子ビットは、0か1かという素子ではなく、0であり1でもある状態が重ねあわされた性質をもっている。そのため、0と1で表わされる二進法の2×n個の数字をすべて平行宇宙で並列処理して、一回の計算で2×n回の計算をしてしまう。そのため、量子コンピュータは、演算の処理速度をどれほどの大量の計算になっても常に1単位時間で計算してしまうことができる。
博士 「見ろ。量子コンピュータが完成したぞ。これでどんなコンピュータよりも計算速度の速いコンピュータが誕生したのだ」
助手 「おかしいですね、博士。量子コンピュータが思うように速度が出ません。計算の欠落が発生するようです」
博士 「計算の欠落? バカな。量子コンピュータにそんなものは存在しない。我々の作った量子コンピュータに設計ミスはなかったはずだ」
助手 「しかし、博士。どんどん量子コンピュータの計算速度が落ちています。計算の欠落が止まりません。ああ、もうダメだ。計算力が限りなくゼロに近づいてきた」
博士 「むむ。もしや、我々と同じ状態に重ね合わさった平行宇宙の我々が一歩先に量子コンピュータを作動させたにちがいない。我々の宇宙のありえたかもしれない量子運動を、隣の平行宇宙の量子コンピュータが奪っていってしまったのだ。なんということだ。我々は量子コンピュータの開発に負けてしまった。我々の宇宙は、量子の重ね合わせの運動力を奪いとられる宇宙になってしまったのだ。ああ、もうすでにこれは運命だ。急いで、まだ手遅れな平行宇宙から量子のありえたかもしれない運動を奪ってこなければ、我々の宇宙に量子コンピュータは作動しなくなってしまう」
助手 「これは平行宇宙の量子コンピュータの侵略ですね。量子運動を奪い合っているんだ。負けてたまるか。頑張るぞう」




