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102/131

102、風が荒らしを呼ぶ

 世界が死んでいる。

 何ひとつ価値のあるものを見出せずに、むなしく時がすぎていく。

 きみはずいぶん昔に去ってしまった。

 それは、おれが死んでいるからだ。おれは死んでいる。ゾンビだ。死んだまま動くゾンビだ。

「だからって、おれにはこれが限界だったんだよ」

 本当の限界を知らないおれがいった。

 まわりのせせらぎが嘲笑った。それはまるで、きみの声のようで。

「あなたのどこが限界を試したというの。研究もせず、鍛錬もせず、批評も受けず、何を頑張ったというの。あなたは死ぬの。死んで、塵になれ」

「待て。待ってくれ。おれだって、それなりに頑張ったんじゃないか。それを全部、見捨てるのかよ」

 すると、せせらぎが答えていった。

「あなたは世界の何も見えていない。心が読めなければ、真理も知らぬ。宝の在り処も知らなければ、風も見えない」

「おれに、おれに、心を読ませてくれ。真理を教えてくれ。宝の在り処を教えてくれ。せめて、せめて、風を教えてくれ」

 おれは必死に訴えた。

 せせらぎは困ったようだった。それで、せせらぎはおれに風を教えてくれることになった。

「風を見よ」

「いうことはそれだけか」

 そして、せせらぎは去った。それはまるできみが去った時のことのようだった。

 おれは呆然として、道端に立ち尽くした。風を見るとは、どういうことだ。風とは何だ。


 風とは何だろうか。風とは、きみだ。きみは空気か。いや、ちがう。空気の動きだ。風とは、空気の動きだ。

 風は、空気の動きだろうか。いや、まだちがう。風は、活力をもった空気の動きだ。きみは活力をもった空気の動きだ。

 そうだ。重要なのは、活力なのだ。風のもつ生命力、そして、リズム。

 風は、生命力をもち、リズムを刻む空気の動きだ。

 これで、正解にしよう。

 風は、生命力をもち、リズムを刻む空気の動きだ。きみは、生命力をもち、リズムを刻んでいたんだ。きみは、風だったんだね。


 風よ。今日も向かい風が吹いている。

 そして、おれはただ、遠くへ旅に出た。

 世界で、風が待っている。きみの行方が、わかるような気がした。


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