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定年間際の竜騎士  作者: だいごろう
第五章 【エルフの赤雷と怠惰の赤鬼】
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暗中模索




大量の『ゴブリン』がいた広場を出る前に、

ペリコ君が、


「ここが『小鬼』どもの住処かどうかの確認を。」


そう言って、オレから

簡易的な松明を受け取り、広場を壁づたいに、ぐるりと見て回った。

しかし、ペリコ君の判断では、

この広場は『ゴブリン』の住処ではないらしい。


「やつらの住処には、繁殖するための寝床や

食べた後の骨を集めておく『骨塚ほねづか』があるのですが、

それらが見当たりません。食べた後の骨が散乱しているところからして、

ここは、やつらの縄張りの一部、もしくは休憩場所だったと思われます。」


たしか『ゴブリン』の特徴をシホのやつと話していた時、寝床がどうとか言っていたし、

『ヒトカリ』の窓口の奥さんからは、骨と一緒に装備品を

住処の1か所に集める習性があると聞いていた。

それらが無いのか・・・。

この大量の『ゴブリン』たちが、ただの縄張りの一部?

ここが、ただの休憩場所だと言うのか?

だとすれば、こいつらの住処には、

いったい、どれほどの『ゴブリン』がいるのだろうか。

想像できない・・・。




オレたちは手分けして、損傷が少ない

『ゴブリン』たちの首を出来るだけ狩り獲った後・・・


「佐藤様、周辺に気配はありませんね?」


「あぁ、大丈夫だ。」


「では・・・わが魔力をもって、

火の円陣、巡りて、彼の者たちを焼き尽くせ・・・!

ヒート・ヘイズ!」


ボォワッ!


ペリコ君が火の魔法で『ゴブリン』たちの死骸をまとめて焼却した。

このまま放置しておくと、死骸が腐敗して、

誰も近づけない場所になってしまうからだそうだ。

たしかに、今は魔鉱石採掘できなかったが、

後日、採掘しに行きたい時に、これだけの死骸が腐敗していたらと思うと・・・

とてもじゃないが立ち入れられない。


ペリコ君が使ったのは、火の初級魔法で、

円形の魔法陣の範囲内に、火を起こすものだ。

説明を聞くと、幼い頃に習った記憶があるような、ないような。

以前、木下が使ったことがある、

大きな火柱を立てる魔法は、火の中級魔法だったが、

ペリコ君が使ったのは、その初級版で威力は小さい。

ペリコ君の説明では、冷え切った洞窟内で、いきなり高熱の魔法を使うと、

洞窟の天井や壁が温度差でもろくなり、崩落する恐れがあるとか。


「例の精霊が出た場所も、長年、精霊の出現のせいで

冷却と高熱が繰り返された場所でしょうから、

壁が崩れやすくなっていたのかもしれませんね。」


ペリコ君は、そう推測しているようだ。

そして、


「わが魔力をもって、風の調べ、風の流れを作りて、

木の葉を舞い踊らせよ・・・エア・ブリーゼ!」


ヒュゥゥゥゥ・・・ ヒュルルル・・・


ペリコ君のかざした右手の前に、魔法陣が現れ、

その魔法陣から、柔らかい風が吹き出した。

『ゴブリン』たちの死骸が燃えている間、

立ち昇ってきた煙を、風の初級魔法を使って、通路側へと流していた。

焦げ臭くて、気持ち悪い煙が、勢いよく流れていく。

これだけ広い場所だから、少しくらいの煙なら問題なく感じるが、

ここの洞窟は、元々、出入り口以外に、どこにも外へ通じていないから

空気の流れが悪く、これだけ大量の死骸を焼却するとなると、

その煙の量も半端ない。

ペリコ君のおかげで、オレたちは窒息せずに済んだ。

それでも、辺りには焦げ臭いニオイが若干、漂っている。


「よっこらしょ!」


オレは『ゴブリン』たちの大量の首を詰め込んだ大きな袋を背負い、

ペリコ君は、簡易的な松明たいまつを持ってくれた。

ランプを持っていても火の熱さは感じないが、

松明は、持っているだけで火の熱さを感じる。

しかし、ペリコ君は嫌な顔をせず、進んでそれを掲げている。

オレに弱みを見せたくないからだろうか。


『ゴブリン』たちの大量の首は、全て簡単に血抜きしたが、

完全に血が抜けているわけではない。

だから、背負った瞬間、背中に、ぐちゃっという

何とも言えない気持ち悪い感触がした。袋の中は真っ黒い血だらけだろう。

そして、かなりの重量だ。

体力を消耗してる今は特に重く感じる。

これを町まで運ぶのか・・・考えただけで気分も重くなる。


広場を後にして、次の目的地へと歩き出した。

その途中で、白骨化していた傭兵らしき亡骸のすぐそばに、

かろうじて壊れていないランプを発見した。

『ゴブリン』に襲われて、地面に落としたのだろうが、

運良く壊れなかったのだろう。

拾ったランプに油を注ぎ、簡易的な松明から火を移した。

そのランプをペリコ君に持ってもらう。

これで、しばらくは灯りに困ることは無い。

松明よりも長い時間、この洞窟にいることはできる。

しかし、今さら広場に戻って、魔鉱石を採掘する体力も気力も

オレには残っていなかったので、予定通り、

ファロスの刀が落ちている場所へと向かった。


それにしても・・・


「佐藤様のことは、姉からよく聞いておりました。

他の隊員からの信頼も厚く、頼りないようで頼りがいがあるとか。」


「他人に厳しいようで、じつはとても優しく・・・

姉からすれば、かなり甘い男性であるとか。」


「しかし、女性の気持ちに関しては、

かなりの鈍感力をお持ちのようで。

それでは、奥様も相当、ご苦労が絶えなかったかと・・・。」


「おいおい!」


ペリコ君、打ち解け過ぎじゃないか!?

あの広場を出てからというもの、ペリコ君が、喋る、喋る・・・。

あの場で、自分が失態だと思っている姿や言動を

さらけ出せたことが良かったのか。

それとも、ただ単に失態を重ね過ぎたから開き直ったのか。

オレとの距離感というか、線引きが、甘くなっているように感じる。


しかし、その喋っている顔を見ていると・・・

城門事務員の金山君そっくりだ。

双子の姉妹だから、当たり前か。

いや、あの姉にして、この妹ありだな。

こいつも姉に劣らず、お喋り好きだったのかもしれない。


「・・・。」


これだけ、お喋りになっている、

今のペリコ君なら、オレの質問に答えてくれるかもしれない。


昨晩、木下がオレに言ったことの詳細を・・・。

『ハージェス公国』が乗っ取られた際に、

『例の組織』から脅されていた内容を・・・。

本当に・・・やつらは『ドラゴン』に攻撃させることが可能なのか?

その真相を、『ドラゴン』の存在を『ハージェス公国』のやつらは確認したのか?

確認したのならば、その情報を、大臣の娘であり『スパイ』でもある

木下が知らないのは、なぜか?

それとも、木下だけが知らされていないのか?

ペリコ君ならば・・・木下が知らないことでも知っているのでは?


「それにしても、佐藤様は、姉やユンム様から

聞いていた通りのお人ですね。」


「どうせ、悪口だろう。」


「いえ、そうではありません。

頼まれると断れない、とても扱いやすい・・・

いえ、マジメな人格であると聞き及んでおります。」


いや、言い直しても遅い。

完全に悪口だったじゃないか。

なんだ、扱いやすいって。


喋りまくっているペリコ君だが、

さっきから話してくれているのは、

オレの印象だとかウワサ話とか、どうでもいい話ばかりだ。

きっと『スパイ』や『例の組織』に関して

オレが質問したところで、言葉巧みにかわされるだろうな。




『ドラゴン』・・・本当にまだ存在しているのだろうか?




地図を確認しながら、最初の分岐点まで戻ってきた。


「よっと・・・。ふぅ・・・。」


そこへ『ゴブリン』の首が詰まった袋を下ろす。

袋の重さから解放されて、体が軽く感じる。

邪魔になりそうな大きな荷物は、そこへ置いて、

今度は、分岐点を左側へ・・・

昨日、ファロスが刀を落とした地点を目指して歩き出した。


ペリコ君には、この先のことを話していなかったので、

昨日の出来事や、オレが試したいことのひとつ、

ファロスから預かった魔道具の刀が『炎の精霊』に通じるかどうか・・・

などを話しておいた。


「なるほど、それを試すために佐藤様は単独で来られた、と。」


「あぁ、まぁな。受けた依頼を早く済ませたいのもあったし、

かと言って、危険な事には違いないから、

ユンムたちを連れてくるわけにも行かないしな。」


ペリコ君からの脅迫状には、

自分がいない間、木下を守ってほしいことも書かれていたはずだ。

オレが一人で来たことは、そこまでおかしく感じない理由だろう。

『竜騎士の剣技』を試したいことは、伏せておいた。

なぜか直感的に、そこまで話さない方がいい気がした。


「・・・何かニオイますね・・・。」


「え!?」


ペリコ君の鋭い指摘に、ドキっとしたが、

オレの言葉を不審に思ったわけではなかった。

本当に、微かに空気がニオっている・・・。

先ほどの『ゴブリン』たちを焼いた煙が、ここまで流れてきたのか?

それとも、別のニオイだろうか?

どうにも焦げ臭い・・・。


オレたちは、気配に集中し、警戒しながら歩いた。


そうして、地図を頼りに、

ファロスが刀を落とした場所まで何事もなく辿り着いた。

そこまでの通路は昨日と変わらなかった。

しかし、焦げ臭いニオイは強く感じる。

昨日の爆弾や『炎の精霊』の攻撃のニオイが、

まだ漂っているだけなのか?


「・・・。」


オレたちは声を発することなく、足音にも注意して、

ファロスの刀に近づき、オレは、そっと刀を拾った。


「・・・。」


刀の刀身は傷一つ無かったが、持ち手である柄の部分が、

やや溶けているように見えた。

ファロスが受けた炎は、それほど高熱だったのだろう。

その刀を、ファロスから預かってきていた鞘に納める。

周囲には気配が無い。

あの『炎の精霊』のエネルギーも感じない。

やはり、ここまで離れていたら、

やつは出てこないのだろう。


これ以上、進めば・・・出てくるのか?


オレは回収したファロスの刀を荷物に入れて、

今度は、荷物から、ファロスに借りた方の刀を取り出した。

普段、ファロスは、自分の腰帯に差し込むようにして装備しているが、

よくよく見れば、刀の鞘にひもが付いている。

オレは、その紐を腰のベルトに巻き付けて装備した。

自分の剣は、はずして荷物に入れる。


なんとなく、腰が軽い。

ファロスから借りた刀・・・長谷川さんの刀が

オレの剣よりも細くて軽いのだ。

慣れていないからだろうが、ちょっと心許こころもとない。


「・・・ちょっと進んでみるか?」


オレは、小声でペリコ君にそう聞いてみた。


「あまりオススメできません。」


ペリコ君からは、もっともな答えが静かに返される。


オレたちは小声で話し合いながら、ずっと警戒していた。

しかし、『炎の精霊』が現れる気配がない。

距離が離れているから、気配や声に感づかれてない?

それとも、精霊の出現条件は、気配や音ではないということか?


「佐藤様も私も、先ほどの戦いで体力を消耗しております。

今回は、依頼を受けておられる『魔鉱石採掘』の魔鉱石が

見つかっていないのかもしれませんが、旧・採掘場の探索も

ある程度進み、『ゴブリン』の溜まり場もひとつ壊滅できましたし、

ファロス様の刀も回収できたことですし、

じゅうぶんな収穫を得られたと言えます。

このまま『炎の精霊』に出会う前に、帰還すべきかと。」


ペリコ君の今日の任務は、木下からのお願いである

『オレの身の安全の確保』が第一なのだろう。

だからこそ、ここで引き返せと言ってくれている。


「しかし、次にここへ来る時には

『炎の精霊』とやりあうことが前提になる。

今日、ユンムが図書館で敵のことを調べてくれているが、

この現場でしか分からない敵の情報もあると思ってな。

オレとしては、少しでも『炎の精霊』の情報が欲しい。」


「・・・。」


オレの言っていることも一理あると感じているのか、

ペリコ君が黙ってしまった。

そして、じっと洞窟の奥・・・

オレたちが昨日『炎の精霊』と出会った広場に通じている方向を見ている。

昨日は、『炎の精霊』自身が灯りとなっていたから

ここからでも相手が見えていたし、大穴が空いた壁も見えていたが、

今は真っ暗で何も見えない。

ペリコ君が持っているランプの灯りが届く、

すぐそこまでの通路の地面と壁しか見えていない。


そして、気になっている焦げ臭いニオイは、

やはり、この先から臭ってきている気がする。


「ここを進むと、『炎の精霊』がよく見えるのですか?」


「ん? いや、こっちからだと

『炎の精霊』がどこから出てきたのか、よく見えなかったな。

オレが開けてしまった壁の大穴から覗く形だったから。

最初、その奥の広場の天井が明るかったから、

おそらく天井から出てきたのだと思うが。」


ペリコ君の質問に答えながら、昨日のことを思い出す。

この先は、壁が崩壊していて大きな穴が開いている状態で、

『炎の精霊』が出てきた広場が、その大穴から見えていたが、

広場の全体が見えていたわけではない。


「・・・それなら、『炎の精霊』がいる場所に

直接通じている道から近づいてみませんか?

そっちのほうが、はっきりと見えるかもしれません。」


「なるほど。」


ペリコ君が賛成してくれたことにも驚きだったが、

的確な助言をしてくれたことにも驚いた。

木下だったら、断固として反対されて、

どうやって説得するか、頭を悩ませるところだった。


「ただし、約束してください。

今日は『炎の精霊』と戦わない、と。

もし相手が出てきたら、即時撤退する、と。」


「あぁ、分かっている。

オレも戦う体力は残っていないからな。

この残りの体力は、逃げるために使おう。」


オレは、ペリコ君にそう約束して、

オレたちは、一度、来た道を引き返し、

『炎の精霊』がいる広場へと通じている分岐点まで戻った。

そこから、慎重に洞窟内を進んでいった。




真っ暗な道を進む中、オレたちは黙って歩いていたが、

オレは、あることを思い出し、ペリコ君に聞いてみた。


「ペリコ君は、水の魔法は使えるか?」


「はい、使えますが、魔法の全てを使えるわけではありません。」


「ならば、盾になりそうな魔法は使えるか?」


「盾、ですか・・・。」


ペリコ君は、少し考えていたが、


「多分、佐藤様がお考えになっているのは、

水の魔法で、盾の役割を果たす『ウォーター・イスクード』のことかも

しれませんが、私は、その詠唱を覚えていません。

代わりに、水の壁で攻撃する魔法『アックア・ウォール』は覚えています。」


「水の壁か。」


たしか以前、木下が使っていた火柱を起こす魔法が

『ファイヤー・ウォール』だったはずだ。

それに似たような魔法名だから、

おそらく、水柱を起こす魔法なのだろう。

それならば、炎の球を防ぐことも・・・。


「・・・佐藤様は『炎の精霊』から攻撃を仕掛けられた時に、

水の盾や壁で炎の攻撃を防ごうと、お考えかもしれませんが、

それはオススメできません。」


「な、なぜだ?」


昨日のような炎の球が飛んで来たら、

水の魔法で防いでもらおうと考えていたのだが。


「聞くところによれば、

『炎の精霊』の攻撃は、ただの火ではなく高熱の炎です。

高熱の炎が、冷たい水とぶつかれば、水が一瞬で気化して、

水蒸気が爆発する現象が起こると思われます。」


「ば、爆発・・・。」


「はい、屋外ならば、爆発に巻き込まれないように

相手の攻撃を防ぐことも可能かもしれませんが、

この洞窟内で、そんな爆発を起こすのは自殺行為に近いです。」


なんということだ・・・。

ペリコ君が水の魔法を使えると知り、

これならば!と思っていたのに・・・。

そして、急に恥ずかしくなった。

もしかしたら、ペリコ君の今の説明は一般常識で・・・

オレは、そういう常識すら分かっていなかった。


「な、ならば、氷の魔法で!」


「氷も同じです。むしろ、爆発によって氷の塊が飛び散り、

深刻なダメージは避けられないでしょう。」


恥をかき消すように、なんとかして

得策を提案したかったが、まさに恥の上塗り。

もはや、何も言えなくなってしまった。

顔や耳が熱い。

オレは、おそらく真っ赤な顔をしているだろう。

真っ暗な洞窟内で、顔を見られることがなくてよかった。


「ファロス様の右手が炎に包まれた時、佐藤様のとっさの判断で

地面に転がって消火したそうですが、高熱の炎に対しては、

まさしく、それが正解だと言えるでしょう。」


「そ、そうなのか?」


「はい、土の魔法で、壁を作った方が

爆発することなく、高熱の炎を防ぐことが出来るかと。」


「な、なるほど。」


何が「なるほど」なのか・・・。

本当は、その理屈が全然分かっていない。

しかし、昨日のオレの判断がよかったと、

ペリコ君が、オレを持ち上げてくれたことは伝わってきた。

気を使われると、なおさら無知な自分が恥ずかしい。


「・・・私がなんでも知っているように聞こえたかもしれませんが、

私も、なんでも知っているわけではありませんからね。」


「・・・。」


もしかして、この暗闇の中、ランプのか細い灯りだけで

オレの顔色が見えているのだろうか?


「昔、訓練中に、そういう事故があったのです。」


「事故?」


「はい、高熱の炎を防ぐ訓練中に、

私の同期がうっかり水の魔法で防ごうとして。

屋外でしたが、目の前の水蒸気の爆発に巻き込まれ・・・

彼女は亡くなってしまいました。

授業で、それはいけないことだと学んでいても、

いざ、その状況になった時、

まだ若い私たちは簡単に混乱して、間違いを犯してしまうものです。

私も、数々の失敗を繰り返しましたが、運良く生き残りました。

自らの失敗と、同期や仲間が失敗した場面を多く見て、学び、

その結果、たまたま今も生き延びているだけです。」


ペリコ君の声が、少し寂しそうに感じた。

『スパイ』という裏の職業は、それほどまでに過酷で、

だからこそ、オレより若いペリコ君は、

オレよりも相当な修羅場をくぐり抜けてきて、

これほどの強者になったのだろう。

オレも同期や先輩、職場の仲間たちから学ぶことが多かったが、

学校でも、勉強を嫌い、努力を怠り、

就職後も鍛錬を怠ってきたオレとは、明らかに経験値が違う。


「・・・ペリコ君が生き残ってくれたおかげで、

今も、ユンムやオレたちが助かっている、というわけだな。」


「えぇっ!? いや、そういうつもりでは・・・!」


オレは何も恥じることは無かった。

いや、恥は恥だが、成るべくして、こうなっている。

すべては自業自得。

恥ずかしい自分を受け容れて、

オレよりも強者である、目の前の相手を認めよう。


「勉強になった。ありがとう。」


「あぁ、いや、その! ・・・恐縮です。」


やはりペリコ君は、他人から礼を言われることに

慣れていないのだろう。あからさまに恥ずかしがっているようだ。


「では、もしも『炎の精霊』に、炎の球を

投げつけられたら、土の魔法で防いでもらいたい。」


「は、はい! 聞くところによれば、

『炎の精霊』は、詠唱無しで魔法のような炎の攻撃を

仕掛けてくるらしいので、私の魔法が間に合わないかもしれません。

それでも、防げるように準備しておきますが、

私の魔法を信頼しすぎないで、攻撃されたら逃げてください。」


「あぁ、間に合わない場合は・・・こいつの出番ということだ。」


オレは、そう言って、腰に提げている刀を指さした。

ファロスの刀・・・長谷川さんがファロスに託した、魔道具の武器。

魔法を斬る刀・・・。

果たして、『炎の精霊』に通じるかどうか。





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