17 初級ダンジョン3
目の前で襲いかかってくる様子もなく揺れているスライムを見つめて3人は固まっていた。そいつは通常のスライムよりも色が濃い気がする。
本来なら初級ダンジョンでは一つの階層には1種類の魔物しか生まれない。このスライムは完全なイレギュラーだ。そんな得体のしれないものには関わりたくない。頼人たちはその横を通り過ぎようとする。
「「「 ・・・ 」」」
スライムが行くてを阻むように通路いっぱいに広まった。
「これは、あれだな。『仲間にしてほしそうにこっちを見ている』ってやつだな。」
「えぇ・・・」
田中の言葉に他二人が引いたように声を漏らす。この世界のスライムは べちゃあ ぐしゃあ びしゃあ という擬態語が当てはまるようなグロい見た目をしている。けして某ゲームのようにかわいらしくはない。そんな目で見られたら全力で逃げ出したくなる。目なんてどこにもないのだが。
頼人はおもむろに太腿のホルダーからナイフを1本とると、手首に軽くスナップを聞かせて投げつけた。
――シュゥゥゥ
スライムに当たったナイフが音を立てて溶ける。
「あっこういうタイプか。」
エンカウントした魔物が探索者を害そうとしないことはあり得ない。どんなに顔に恐怖を張り付けていてもやつらは死ぬまで襲いかかってくるのだ。血を持たず死体の残らない彼らにとってそれが死であるかという話はひとまず置いておく。
どうやらこのスライムは触れた敵を溶かすことができるようだ。通常のスライムは顔面に張り付いて相手を窒息死させようとする。溶かしたりなどできない。
「ユニークモンスターか。」
頼人が何となく気づいていたそいつの正体を口に出した。
ユニークモンスターとは通常の魔物と似てはいるが全く異なる特性を持つ魔物のことだ。その出現率は低く専業探索者が人生で一度お目にかかれるかどうかもわからない。その魔石は澄んだ赤色をしていて、そのレアリティから新しいものを作りたい魔道具や探索者の装備品の制作会社や研究機関で需要があり、親指の爪ほどの大きさでも都心に一軒家が建つ。
「どうやって倒すよ?」
3人からはその道を迂回するという選択肢が消えた。さっきまでは避けて通ろうとしていたくせに何て現金な奴らだろう。
「俺が核を露出させるからハヤミンが矢で射てくれ。」
「?わかった。」
田中と速水を下がらせると頼人がつま先で地面をたたく。すると紫色の電撃がスライムを包み込む。魔力を乱されたスライムは水たまりのようにベターっと地面に広がった。その拍子に丸い核が表面に露出する。ダンジョンの魔力の集合体であると言われている魔物は人間よりも頼人の魔法の影響を受けやすい。
速水が核を素早く狙撃した。矢は寸分の狂いなく突き刺さり、核が割れる。光の粒子となって消えたスライムのいた場所には人差し指ほどの大きさの魔石が転がっていた。
「よっしゃああああああああ!!!!」
「イヤッヒィィィイイイイイ!!!!!」
「アハハハハハハハハハハハ!!!!!」
3人で魔石を掲げて狂喜乱舞する。圭吾や修一がこの場にいたら「ダンジョン内で何をしている!」と拳骨を落とされそうなものだが、荒ぶる男子高校生を止める者はここにはいない。
のちに彼らは学園のダンジョン内で取れた魔石は学園の所有物になることに気づく。10階層のボス、オーガは幽鬼と化した彼らに連携などなしにフルボッコにされるのだった。




