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波乱《いや》な予感

「別に殺したわけじゃないぞ。私と同じ世界に来させただけだ。まぁ、現世にはもう戻れないけど。」


と、頭上から声が掛かる。頭は柔らかい何かを枕し、目を開けると美しく整った顔が近くにある。ほのかな金木犀の香り。これは当に膝枕をされているに違いない。そして、いつの間にか屋内へと運ばれているようだ。


て、そんなことはどうでもいい。現世に戻れないだと?嘘だろ。血が再度引き戻っていくのが分かる。


「あっ、寝るな。この状況は全然悪くはないが……むしろ……いや、まだ話さなければならないことがあるんだ。」


まだ何かあるのかよ。上体を起こし神様に向き直り、そして、


「何で毎日毎日参拝して、感謝を捧げているのに何で殺すんですかぁ!?俺が何をしたって言うんですかぁっ!?」


と神様をまくし立てる。慌てたように、


「殺してはいないさ。毎日参拝してくれていたことはとても嬉しかったし、お礼がしたいと言ったことにも嘘はないさ。信じてくれ。と言っても、難しいよな……申し訳なかった……」


と、段々とシュンとしながら神様は言った。


何はともあれ、もうどうしようもない。嫌な予感がしていながらも逃げ出さなかった自分にも非がある。


「はぁ……で、何でこのようなことを?」


と、神様の方へ向き理由を問うた。


「えーと、な。ここの神社は分社だろう?それで先月の出雲大社での集まりのときに、ここの分社に再来月から別の眷属が入ることが決まったんだ。だから、君と会えなくなるなら、いっそのこと……てな?」


と、頬を赤らめ上目遣いで見つめてくる。


正直、女経験に乏しい、というより0である自分にとってはかなり来るものがある。


というか、俺神様に好かれてたのか……道理で妙に運がいいわけだ。


てか、よく考えるとヤンデレ的発想じゃねぇか。物凄く怖くなってきた。今すぐここから逃げ出したいという衝動を抑え、どうにか逃げる策を思案する。


「納得は出来ませんが、まあわかりました。で、このあと、どうするんです?一緒に天界でも帰るんですか……!?あれぇ!?なんか不味いことでも言いましたかっ!?」


神様の先程まで赤かった頬は青白く、凛とした切れ目には涙が浮かんでいた。


その様子に戸惑っていると、神様はポツポツと呟いた。


「神隠しはな、高位の神様、例えば山の神様とか本社にいる神様がやるはずのものなんだ。私のような眷属がやると、それに背くことになる。ましてや、隠した人間を私達の本社に住む神様に渡さないということは、かなりのきつい罰が下るんだ……だから、天界にも帰れないし、ここに留まって見つかるわけにもいかないんだ……すまない……」


……。どうしたものか。てか俺はどうなるんだ。この先、為す術なくないか?


「えーっと、この場合、僕は見つかったらどうなるんですか?」


再び神様は泣き出した。


少しして落ち着いたのか、再び口を開いた。


「私と離れ離れになる……」


そういうことが聞きたいんじゃねぇよ。俺は見つかっても平気なのかどうかが……まあ、ここまでのことをして何を考えてないわけでもないだろう。


「で、何か案はあるんですか?」


と言うと、涙ぐんだ顔でじっと見つめて、またわけのわからないことを言った。


「異世界に転移すれば、多分見つからないし、どうにかなると思うんだ。」


異世界に転移って、そんなことが可能なのだろうか。というか、どうにかなる確証ないのかよ。


「わかりました。で、僕は見つかったらどうなるんですか?それだけははっきりと聞いておきたいです。」


答え次第ではついていかないぞ。というか、ついていかない方向に持っていこう。


「本社の神様によって変わると思うが、そうだな。多分私達の本社の神だと、多分飽きるまで舞を踊らされられたりとかだろうか。まあ、ざっと300年ぐらい躍り続ければ飽きてくれると思うぞ。」


よし、一緒に異世界に転移しよう。300年躍り続けさせられるって何の拷問だよ。仕方ない。もうどうにでもなれ。


「一緒に、異世界に行きましょう。方法とかはわからないですが、そこのところは大丈夫ですか?」


と言うと、太陽にも引けをとらないほどの眩しい笑顔を浮かべ抱き締めてきた。はぁ……曲がりなりにも神様であるし、無理矢理引き離すわけにもいかない。


……この神様と一緒に異世界で暮らすのも、悪くはないかもしれない。


「あっ。これから暮らすところはまもの?とやらが沢山いるらしい。でも私と君なら何とかなるよな?」


前言撤回。物凄く嫌な予感しかしない。てか凛としていてクールなイメージだったのだが喜怒哀楽激しいな、この神様。

これから、どうしたものか。

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