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いわゆる昔語りというやつその2です。
『死者の国』
それはかつて死神と呼ばれた少女が暮らす場所。より正しく言うなら死神と呼ばれた少女のために造られた国。そこに暮らす住人は少女を除きすべて死人。
『死者の国』が造られた理由はひどく単純。死神と呼ばれた少女そして今は姫と呼ばれる少女を悲しませないため。
少女の力は無差別に命を刈り取る。
少女と目があったから。
少女の声を聴いたから。
少女に触れたから。
少女を殺そうとしたから。
少女が死にそうだから。
そんな理不尽な理由で周りの人間が死んでいく。
少女はただいるだけで周囲に死をまき散らす。
少女は自分の死さえも周囲に押し付ける。
しかしそんな力をもつ少女の心はひどく普通だった。
少なくとも周りの人間が死ねば悲しむ程度には普通だった。
だからこそ少女は命あるものたちから逃げた。
それゆえに少女の周りには命無き者たちが集まった。
そうしてできたのが『死者の国』だ。
『死者の国』は姫と呼ばれる少女が悲しむことを許さない。
だからこそ、『死者の国』は少女以外の生者が存在することを認めない。




