5、彼の力になるための魔法発動です
~前話あらすじ~
やっと触れることができるのに、彼は手が汚れていると言う。
主人公は彼の手を両手で包み込み伝える。
“手は汚れていない”“あなたのためなら命も捧げることができる。あなたのように”
主人公は彼の本当の気持ちに気付いていた。
☆
~彼が戦へ向かって数日後に遡る~
「姫様の傷がなくならないから、旦那様は傷のない綺麗な女性を探すために戦へ向かったみたいよ」
彼が戦へ向かって数日後、使用人の一人が私の傍で片付けをしながら言った。
「えっ、私は姫様が落ち着きがなく妹のようにしか見えないから、旦那様は女性を探すために戦へ向かったって聞いたわよ?」
もう一人の使用人が言った。
「えっ、僕が聞いた話とは違うよ。旦那様は姫様以外の女性と仲良くなり、結婚の話が出てしまったから、その女性から逃げるために戦へ向かったって聞いたけど?」
どこからか、男性の使用人が女性二人の使用人の会話に入ってきた。
「それ、俺も聞いたけど、俺は少し違う。旦那様がどこかの令嬢様に手を出して、父親に見つかる前に戦へ向かったんだと聞いたんだが?」
男性の使用人の後ろから顔を出して、もう一人の男性が言った。
その話を私はちゃんと聞いていた。
使用人達の話を聞いても怒ったりはしない。
だって全て嘘なんだと分かるから。
あんなに優しい彼が私を悲しませることなんてしない。
「でも、姫様も、、、あっ違ったね『病んでる姫』も可哀想だよね」
「そうだよね。私達が『病んでる姫』を守らなきゃね」
「そうだよ。旦那様に裏切られたっていうのに、いつまでも旦那様の帰りを待つ『病んでる姫』は可哀想だよ」
「俺達が『病んでる姫』を守ろう。もう傷付かないように」
私は使用人達に愛されている。
それは元の体の持ち主さんが築いてきたこと。
それを彼は知っていて悪者になるため嘘の話を広めたんだ。
このまま彼を悪者にしたままでいいの?
大好きな使用人達に本当の彼を知ってもらわなくてもいいの?
そして私は彼の元へ行くことを決めた。
彼を連れ戻して、私がどれだけ彼を愛しているのか、彼がどれだけ私を愛しているのか皆に知ってほしい。
☆
「あなたのためなら命を捧げます」
「いやっ、それは、、、」
「あなたは私のために命を捧げないのですか?」
「私は貴女のためならなんだってします」
彼は、そう言いながら彼の手を両手で包んでいる私の手にキスを落とした。
私の唇に落とした温もりと同じだった。
彼の私への想いが伝わる。
「それなら生きてください。私のためにも」
「それはできません。ここに来たのだから、ここで戦っている者達を、ワタシの力を頼りにしている者達を、見捨てることはできません」
「この戦を終わらせればいいのですか?」
「そうですが、終わらせるとは勝敗を決めることです。もし、こちらが負ければワタシは、、、」
彼は最後まで言葉を言わなかったけれど、私は最後の言葉を知っている。
「私があなたを守ります」
「貴女に何が、、、」
彼の訊きたいことは分かっている。
だから苦しそうな顔で私を見ている彼を見上げた。
もしかしたら今なのかもしれない。
魔法は“その時になれば使える”と皆が言っていた、その時とは今なのかもしれない。
私は彼を見つめた。
彼も私を見つめる。
すると私達の手の中で何かが光る。
違う。
彼の手を両手で包んでいる私の手が光っている。
「これは?」
「分からないです。でも温かいですね」
彼が驚き手を見ながら言い、私は手が温かく緊張が薄れていく感覚になりながら言った。
何が起こっているのか分からない私達は、この奇妙な光景に笑ってしまった。
そして彼の顔が近付き、おでことおでこが触れる。
今は、これでいい。
二人でおでこを合わせて光る手を見る。
たまに彼の顔を盗み見る。
それでいい。
「貴女の力はワタシを回復させることですか?」
「どうなんでしょう? 私の魔法は、あなたの力になることです。しかし、どんな力なのか分からないのです」
「そうですか。それでは貴女はワタシの後ろにいてください。ワタシは、この戦を終わらせます」
彼の顔が変わった。
迷いはなくなった。
勝つことしか考えていない。
そんな戦い方をしてほしくはない。
彼は私の手を離そうとする。
「姫様、なにを、、、」
いきなり彼が両膝をつけ、立っていられなくなった。
彼を見ると、疲れているように見える。
「えっ、何?」
「姫様、、、ワタシの力を奪うつもりですか?」
彼は苦しそうに言う。
でも私には何が起こっているのか分からない。
彼の手を離そうとしても手が動かない。
このままじゃ彼が死んじゃう。
「やめてー」
私が叫んだ時、私から突風が起き、波紋のように広がった。
その突風は、遠くまで広がった。
「うわっ、なんだ?」
「なんで花に?」
「これじゃ戦はできない」
軍人達から驚きの声が聞こえる。
何が起こったのか分からない。
彼を見ると疲れた顔はなく、いつもの優しい顔で私を見ていた。
「何が起きたのですか?」
「ワタシと同じ力です」
「えっ、あなたと同じ力ですか?」
「はい。貴女の力がワタシの中にも入ってきて分かりました。でも同じ力ですが貴女の力は武器を花に変える力です」
「花?」
「彼等の武器を見てください。全てが花になっています」
私は軍人達の手元を見ると、花束を持っている人もいた。
さっきまで戦っていた人達が花を持っているのを見て、可笑しくなった。
「ふふっ。皆さん、お花がお似合いです」
「本当に貴女には敵わないですね」
彼は笑っている私を見て、困った顔をしながら言った。
でも、その顔は嬉しそうにも見えた。
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~次話予告~
次回最終話。
物語はハッピーエンドへと向かっていく。
美しい景色を見ながら二人は新しい関係になる。




