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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
熊壁街

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土魔法と陶芸

翌日になりリュクスはさっそく南兎平原に出向く。モイザの新しい技を確認させてもらうためで、初の魔法が自宅では危険だろうとの考えだ。

南兎平原のいつもの人気のない場所にまでついたリュクスは、さっそくモイザに魔法を試してもらう。モイザも土魔法のボール技をつかうのかとリュクスは考えていたのだが、どうやら使えないようだ。

代わり土のバレットと土の壁が使えるところをモイザは見せる。特に土の壁にリュクスがいくつか魔法を打ち込んだ。フレイムスフィアは突き抜けてしまったが、リュクスの火の壁よりも頑丈なようだ。


「モイザの土壁のほうが守りの面ではよさそうだね。」


「――――。」


「え?これだけじゃない?」


モイザがリュクスに見せたかったのは普通の土技ではなかったようで、先ほどと同じように土の壁を展開したのだが、土の色が微妙に変わっていることにリュクスは気が付く。

モイザが触って見せたので、リュクスも試しに触ってみると、先ほどの固い土の感触と違い、柔らかい感触に、リュクスは粘土かと気が付く。

試しにモイザに離れてもらい、リュクスはフレイムスフィアを当てる。先ほどの土壁はまっすぐ突き抜けたのだが、粘土壁は当たった部分が緩やかに曲がり、スフィアの勢いをかなり抑えた。結局突き抜けてはしまったが、柔軟性を得て土壁よりも耐久性が高くなっているようだ。


「すごいねモイザ。これなら熊の攻撃も少しは防げそうだね。」


「――――。」


「ん?これはメインじゃないの?」


まだまだあるといわんばかりのモイザ。粘土壁を崩すと、そそくさと手元、ではなく脚元に魔力を使い、灰色の粘土の塊を出して壺の形にと形成していく。出来上がったのは野球ボールほどの小さな壺だった。


「なにこれ?もしかしてこれって陶芸のスキル?」


「――――。」


どうやらこれが陶芸のスキルでできたツボのようだ。ろくろのような特別な道具も必要ないのかと、さすが魔法だなとリュクスが感心する。

せっかくのかわいらしい見た目の壺だが、さっきの粘土壁も崩れて跡形もなく消えたところを見るに。ずっと維持するわけにもいかないだろう。


「消えちゃうのがちょっともったいないね。」


「――――。」


「ん?どうしたの?」


モイザが頑張って何か伝えようとしてるが、今のリュクスには難しい内容なのか言葉が理解できなかった。リュクスとフレウに足を向けたことで、フレウが何か気が付いたようだ。


「コ!」


フレウがフレイムボールを出したことでリュクスも気が付く。壺を焼き上げてほしかったようだ。本来なら焼き上げの前に乾燥させる必要はないか、焼くなら竈が必要じゃないかと悩んだリュクスだったが、困った様子のフレウを見て思考を変える。

フレウはフレイムボールを出したまま止まってしまっている。あれではおそらく粉々になってしまうのだろうとリュクスは頭をひねらせる。竈といえば炎で包み焼き上げるのだろうとリュクスはイメージしていると、手にまとわせるフレイムハンドを思い出した。


「炎を愛でる手、フレイムハンド。このかわいい壺を焼き上げてくれよ。」


リュクスは両手に炎を纏いながら、地面に置かれた壺を持ち上げる。炎でそっと包み込むように、壺の内側にも炎を入れたりしつつ、焼きあがりしっかり固まるイメージを浮かべた。

ゆっくりじっくり1時間は焼いていただろうか。リュクスは何とか焼き上げ、壺は白に近い灰色にと変化していた。先ほどよりも一回り小さくなった壺をリュクスが爪でつつくと、カツンカツンと音を響かせる。この状態になったら完全に残り続けるだろうとリュクスはうなずく。


「できてよかったよ。」


「――――!!」


「おぉ、モイザも嬉しいんだね。なかなか時間かかったけど、僕でも焼き上げられてよかったよ。」


陶芸のスキルを見たときには商業者ギルドに聞きに行き、専用の道具を買おうかとリュクスは思っていたのだが、必要なさそうだと一息ついた。


「あ、そうだ。この壺を染色してみない?あとフレウのハチマキも色を変えよう。」


「コ!」


反応して翼を広げたフレウを見たリュクスは、翼内側が緑がかっていることに気が付く。進化の変化の一つなのだろうと、リュクスは鉢巻の色合いを少し考えながら街にと戻った。

自宅まで戻り、リュクスはモイザに染色を始めてもらう。壺は青色に染め、家の中の飾りとして置いておく。花でもさしたら花瓶に使えるだろうと満足する。

フレウのハチマキは元々赤の予定だったが、新たに買ってきた緑に染め上げを指示していた。


「これで炎と風のデュアルって感じが増すんじゃない?」


「ココ!!」


フレウが満足する様子にリュクスも喜ぶ。モイザはさらに自分の糸輪と、いつの間にかレササが集めてきた蜘蛛達の糸輪も染色し始める。モイザは自分の糸輪は紫に染め上げる。独特な色だが、毒を意識してるのだろうか。

他の蜘蛛達の分はまとめて赤色に染めていた。外に蜘蛛たちが集まり、足元に染めた糸輪をはめていく。アクセントとしていい色合いだとリュクスは解散する様子を見つめていた。

これで自宅作業はあらかた終わったかと一息ついたリュクスだったが、一度自分の店に顔を出すかと兎面をかぶり店舗にと向かう。

裏口から入ると、店舗内では6人の客が商品を見ていた。主に糸玉と茹で緑甘樹の実、ほぼそれしか買うものもないというのに6人もいるとはリュクスも想像していなかった。

先に戻っていた店内の蜘蛛達は客が離れたの後の展示ケースを確認している。在庫確認しているのだろう。入り口の会計用水晶横にはトレビス商長がなぜかニコニコで立っていた。客の相手をするわけでもなく、ただ立っているだけだったが、仮面のリュクスに気づいて近寄ってきた。


「スクーリ様。お疲れ様です。糸玉と緑甘樹の実の売れ行きは上々ですよ。」


「そ、それはどうも。」


「ですがノビルやレモングラスはすでに他の方も見つけ始めたりしていますので、売れ行きはよくありませんね。何か追加する商品はございますでしょうか?」


「うーん、いっそ輸入した片栗粉でも置きますか?僕がストレージに入れれば、そのまま売り出し続けられるんですよね?」


「それはいい考えですね!継続的に買えるものでもないでしょうから購入制限は必要でしょうが、そもそも毎日大量に使うものではないでしょうし、この街に輸入できないかもしれないところだったので。」


「そうなのですか?」


「まぁ仕方ないのです。肉類はこの街ですと兎肉がメイン。となれば4種の肉を気軽に使用できる隣町の南肉の街への供給がメインになるはずですので、一度南熊壁街を経由してそこへ届けられるはずです。南肉の街としてはそこから私たちに片栗粉を回すほどのメリットはないのですよ。それに私たちとしても出せるものが劇的に増えたわけではないので。」


「なるほど。」


輸入の輸入にならば、相応の輸出品で答えなければいけないのだろうとリュクスは考える。どんなものを輸入して代わりに何を輸出するか商長たちは悩んでるのだろう。


「そこは私たちの勝手な話ですので、スクーリ様がこの店で片栗粉を売りに出すことは問題ありませんよ。他の街に出したくない素材であるならば、すでに輸出はしていないはずですからね。」


「そういうものなのですね。なら一人一つの制限で出させてもらいますね。値段は以前と同じでいいですか?」


「問題ないですよ。」


リュクスは自分でつかう分なら10箱もあれば十二分に足りるだろうと思い、残りをすべて展示ケースの一つに入れ、800リラに設定し購入制限をかける。リュクスが作業を終えると、見ていた客の一人がさっそく購入していったようだ。その客が聞き耳を立てていたのはリュクスもわかっていたので、

軽く会釈を済ませた。


「じゃあ僕は明日には向うに戻ります。ストレージに追加はしますけど、無くなった場合は完売ということで。」


「わかりました。お客様にはそうお伝えいたします。蜘蛛達にもお教えいたしますね。」


店番の3匹の蜘蛛達は客との意思疎通が難しいだろうがどうなっているのかとリュクスは考えたが、今はトレビス商長とレササに任せるしかないと結論付けた。別に接客面に問題があれば今後は商業者ギルドからも人手を借りる予定があるのだから。

もう一つのリュクスの懸念点は商品の種類が少ないことだ。焼き物を作ったことを思い出し、モイザと共に作って並べるのもいいかとリュクスは考え、自宅に戻ると早速モイザを呼んで作業を始めた。

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