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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
熊壁街

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北を目指す来訪者

翌日は少し雨脚は弱くなったものの曇天は続く。リュクスは他の用事もあるからと従魔たち全員を連れて、フリップエリアで雨を弾きつつ商業者ギルドの直轄店に買出しに向かう。

まずは染色練習に使えそうな布があるかを店員に聞いたのだが、布の端材は直轄店で売り出すような商品ではなく、一部の生産品で使わなかった素材の破片を生産者個人で所持しているだけなのだと説明される。

モイザはモイザ自身の糸を使って染色し始めてたので、無理に他の店で買う必要もないかと、廃棄ボックスと、モイザが気に入ったきれいな青色の染色瓶を10瓶購入。

他にも大型ビーカーというポーション瓶10本分作れるビーカーと、目玉の新規入荷商品として魔道ミキサーがおかれていたのでリュクスは購入してしまう。リンゴジュースを自分で作るつもりだ。

買い物を終えたリュクスはもう一つの目的である、教会の場所を知るためと周囲の魔物情報を集めるため、一度冒険者ギルドを目指す。直轄店の店員が教会と神殿で転移できるようになったと話していたのだ。

ただし個人ごとに一度行ったことのある場所にしか転移できず、たとえパーティーメンバーとなっても、行ったことのない場所には転移させられないとの話だ。従魔は主従との契約により、主人さえ移動できる場所なら別に教会行かずとも、一緒に移動できると店員はリュクスに追加で教えていた。

リュクスもまずこの街の教会に行きいつでもこの街と行き来できるように、さらにこの機会に一度みんなで家に戻り、家の蜘蛛達の様子を見ておこうと考えつつ、北の大通りにある冒険者ギルドに到着すると、少しばかり騒がしい声が聞こえてきた。


「四腕熊討伐パーティー募集してます!そのまま北熊壁街まで行くルートです!ぜひ参加してください!」


「こっちも熊パーティー募集中、実力に自信ある人どんどんどうぞ。」


「パーティー募集中ー!あと一人ですけど、この街に残り他の魔物も行きます!」


ギルドの机スペースでパーティーを募集する3組がいる。それぞれ3人組、4人組、5人組なので、ちょうど割れば6人で2つパーティーできるはずなのだが、5人パーティーはどうやら熊以外にも狩り目的があるようだ。

リュクスには四匹の従魔がいて、冒険者ギルドのパーティーシステムとしては従魔も6人指定の換算になる。パーティーという枠組みでなく、一人で複数の従魔を連れ歩くならば問題はないが、リュクスがパーティーに入るならば二匹は待機指示することになるわけだ。

リュクスとしてはベードには移動面や大量狩りにと世話になり、モイザは宿で待機させてることが多いとはいえ、料理とポーションを補充してもらえている。何より他の蜘蛛達を置いてまでついてきたのだから完全に置いていくつもりはない。

フレウは最近加入したのだが、油術からの火術炎術のコンビネーションで火力が出せるようになった。レイトは確かに一騎当千の力はあるはずとリュクスは思ったが、わざわざ待機指示してまであのパーティーに入ろうとは考えもしなかった。

だが受付列に並ぶ前に3人パーティーの一人、白胴着を着たヒュマの男にリュクスは声をかけられた。


「おいお前!最近じゃ見なかった顔だな。もしかしてゆりかごの来訪者か?」


「何の話です?来訪者でも住人でも、ここでは関係ありませんよ。僕は受付で用事があるので、申し訳ないのですけど退いてください。」


リュクスは不快な顔を前面に出しながら対応したというのに、白胴着の男も訝しげな顔をしながらも話をつづけた。


「あ?なんだよ?この街来たばかりなら、俺がこの辺の魔物のこと教えてやるって話をするだけだ。悪い話じゃないだろ?」


「資料室で自分で調べるので大丈夫です。」


「そんな面倒なことしなくても、俺達とパーティー組んで一緒に倒したほうがわかるの早いぞ?一人なんだろ、パーティーはいたほうがいいぞ?」


「一人じゃないですよ。従魔たちがいますから。」


あまり従魔のことを話したくは無かったリュクスだが、そっと目配せしてベード達の気配を出してもらう。さすがにレイトは頭上で気配を消したままだったが、ベードの気配にも気が付けなかった白胴着の男は、気配探知系のスキルは持ってないのだろう。

ベードが気配を出したので、ベードの上にいるモイザとフレウのことも彼らに見えるようになり、リュクスが加わると3人パーティーでは崩壊すると理解はしたようだ。


「従魔か!って噂になってる大狼かよ。お前が来訪者なのか知らないが、来訪者なら来訪者同士でパーティー組んだほうが話が合うからいいぞ。一匹くらいここでさっとパーティー外しちまえよ。」


同郷なら話が合うと思っている白胴着は、リュクスからすると苦手なタイプであった。リュクスは元の世界でパーティープレイMMOのプレイ経験もあるが、入ってみて合わないタイプというのも多数いて、MMOでもソロプレイが多くなっていた。今は何より従魔たちとそりの合わないような相手と組む気はなかった。


「なんであなたにそんなことを言われなくちゃいけないんですか?僕の進み方は自由なはずです。邪魔です、退いてください。」


「あん?俺はお前のためを思って言ってんだよ。進み方って言ってるくらいだからお前も来訪者だろ?だったら来訪者同士余計に協力しようぜ。」


「もう一度言います。退いてください。衛兵呼びますよ。」


「は?なんでそうなるんだよ?」


「コウキさん、そこまでにしましょう。今のはコウキさんが悪いです。すいません邪魔してしまって。」


リュクスの前を塞いだ白胴着の男を引き寄せたのは、オレンジローブにオレンジの三角帽子をかぶったヒュマ女性であった。


「退いてくれれば今回は不問にします。」


「ちっ。また俺が悪いのかよ。俺は他の来訪者のためを思ってだな…」


「私とアズキはそれに同意してますけど、いろんな方がいらっしゃるのですから。」


ローブのヒュマ女性が少し引き寄せると、白胴着のコウキも机側にと下がっていく。丁度ローブの後ろに隠れるようにいたアズキと呼ばれたもう一人の鎧姿の人物もヒュマ女性で、リュクスに申し訳なさそうに会釈をしていた。

ベードが姿を現したからか、周囲の視線がベードに集まる。面倒な目にあった上に注目されて、今日は宿に帰るべきだろうかと思ったリュクスだったが、階段から降りてきた威圧感ある人物にと周囲の目線が向いた。


「あー、職員から通達があった。そこの従魔契約者の君、ギルド長室に従魔と共に来い。」


「僕ですか?わかりました。」


「素直でいいな。あとそこの白胴着の拳闘士の君。パーティー加入は個々の意思を尊重しろ。君は強要が過ぎるようだと、すでにこれで3度目の連絡だ。次に同じ連絡が来た場合、冒険者資格の剥奪もあるからやめとけ。」


「は、はい。わかりました。」


ギルド長室に来いといわれたので、この人はギルド長なのだろうと考える。偉い人物から資格剥奪といわれ白胴着のコウキも思わず背筋を伸ばしていた。リュクスとしても迷惑してたが、他にも同じように言い寄っていたようだ。

リュクスは改めて階段を上る人物におとなしく付いていき、ギルド長室にと入室した。ギルド長の椅子に態度悪く座った姿からは先ほどまでの威圧感は全くなかった。


「まぁ面倒な目にあったな。わざわざ呼び出して悪い。」


「一応僕は大丈夫ですよ。ところで、どういう用件でしょうか?」


「君がギルドに用件があったんじゃないのか?それを聞くために呼んだが。」


「えっと、受付で確かに聞こうとしてたことはありました。大した用じゃないんですけど、教会の位置が知りたくて。」


「なるほど、確かに土地について教えるのは冒険者ギルド役員の仕事の一つだ。北門のすぐ近くにあるから行ってみるといい。ついでに北門から広がる森を塞ぐ壁も見るといいぞ。」


「森を塞ぐ壁ですか?」


「この街初めてなんだろ?遠いと見えないが、この街の北にある四腕大森林のフォーアームベアが森から出るのを塞ぐために、森全体を壁が覆ってる。いわゆる本来の聖域壁の使用法をしてる場所なんだ。この街は国の第一期に作られた街だからな。北は需要と壁の強化に第二期に作られた街だから、森を抑えてる壁の所有はこの街なんだぜ。まぁ北の街の名前を決める時にこの街を南、向こうは北って名前になったんらしいんだけどな。」


「そういう経緯があったんですね。教会に行くついでに見てみます。」


「おう、そうしろそうしろ。忙しいからあんまり出られる立場でもないが、教会で困ったことがあったら、ギルド長から許可済みって言っちまっていいぞ。」


「それって、どういうことです?」


「つまりだ、俺も君がどういう技を持つ人物かを大方知っているということだ。」


「なるほど、重ね重ねありがとうございます。」


おそらくアーバーギルド長かミエスギルド長がこの街のギルド長である彼に話を付けてくれていたのだろうとリュクスは考え礼を済ませておく。


「良いってことよ。それじゃまたな。」


「はい、失礼します。」


教会で許可が必要なことがあるのかと少し思うところはあったが、行けばわかるだろうとそこまでは聞かず退室する。一階では3組のパーティー募集は続いていて、彼らがリュクスのほうに目を向けていたが、リュクスは完全に無視してギルドを出る。

外の雨は小雨とは言えるほどになったが、いまだに濡れそうなほどに降り注ぐ。リュクスはギルドを出る前にフリップエリアを展開して雨をよけながら宿に戻っていった。

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