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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
暴力的幸運

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緑甘樹の実の調理

リュクスは蜘蛛たちに待機をお願いした。明日までには来るので人は襲わないように隠れておけと指示したのだ。

距離的にも南東が近いとまっすぐ南端の街にと戻る。行きと同じように道中ほかの蜘蛛に出会うことはなかったが、南東の採石現場は昼時だというのに人の波が治まっていなかった。

これは東門に行くべきだったかとリュクスが悩んでいたところに、丁度洞窟から出てきたサンギリー。リュクスが目に入るとにぃっと笑みを浮かべた。


「朝も見たな!早い帰りだ!渡るか?手伝うか?」


「すいません、手伝いお願いします。」


「ガハハッ!気にすんな!」


わたるのを手伝うのもサンギリーの仕事なのかとリュクスは思いつつ、ズカズカと進むサンギリーについていく。サンギリーの前ではやはり人の波が止まる。ここの指導者なのだろうか。とにかくリュクスが採石現場を楽に抜けれたのは事実だ。


「ガハハッ!楽だったろ?人が多いからなぁ、初めてのやつは戸惑うよな!」


「はい、ありがとうございました。少ないですが、これでも受け取ってください。」


リュクスがポーチから豚肉サンドを2つとりだして差し出すと、サンギリーは面食らった顔をしつつ、受け取った。


「ガハハッ!なんかすまん!少しの足しだな!じゃあな!」


すぐに採石現場に戻るサンギリーを後に、リュクスも速足気味に商業者ギルドに向かう。

リュクスは到着後すぐに受付で話をすると、すぐにトレビス商長の部屋に案内した。トレビス商長にあらかたのことを話すと、リュクスの懸念通りに木の実について聞きたそうな雰囲気を眼前に出しつつ、トレビス商長はリュクスに提案する。


「従魔証を自分で作る、ですか?」


「そうです。それだけ従魔を従えたのであれば、おそらく従魔証を作れるスキルが発現していると思います。従魔契約のようなスキルは所持していませんか?」


従魔契約のスキルについては資料に簡略的に記載されていた。従魔契約はスキルがなくともできるが、複数の魔物と従魔契約すると契約のスキルを入手するというものだ。


「似たようなスキルを持ってますね、それで作れるんですか?」


「簡単ではないらしいのですが、従魔契約の術法をかければ、ある程度の物は従魔証として機能するそうです。おすすめは首輪や足輪といったリング型ですね。作りやすいですし、術法をかけやすいそうです。イアーカフスのような体に穴をあける従魔証は作成難度が高いですが、より術法をかけるのが安易だそうです。王都で作られているものはどんな個体にも合うように可変式のものが多いですが、すでに決まった個体に対し作るのであれば不要ですからね。」


「なるほど、従魔契約の術法のかけ方さえわかれば、行けそうですね。」


「そちらのスキルアーツの名前は存じております。コンフォームプルーフというスキルアーツだったはずです。お持ちの従魔証にする物に触れつつ、従魔契約する際の力と同じ性質を与えるイメージを作ればいいと聞き及んでいます。」


「なるほど、従魔契約する際の力と同じ力ですか。」


従魔契約というのはおそらくテイムをかけたときだろうとリュクスは予想する。レイトにしか使っていない力ではあるが、イメージができないものでもない。ならばあとはリングを蜘蛛糸で作ってもらえばいいだけかとひとまず安心する。

しかしここからがおそらく本題だろう。リュクスはトレビス商長には緑甘樹の実で蜘蛛を21匹手なずけたとだけしか伝えてないのだから。


「従魔証製作については後程!やはりどうしても気になってしまいまして、ぜひ緑甘樹の実の皮の取り方を教えていただきたいのです!蜘蛛たちも私たちもあれはどうにもならない代物だったのです。樹液は十分に甘く蜘蛛たちには無害なようですが、私達聖族にはあまりよくない成分が含まれているようで、どう加工しても体調に悪影響が出てしまうのです。」


「ちょっと待ってください。それ、木の実のほうは大丈夫なんですか?」


「実を口にしたのですね。今の時点で湿疹や動悸不良の発生、眩暈や嘔吐など発生していなければ、問題はないといえます。」


今トレビス商長が口にしたのが樹液を使用した際の悪影響なのだろうかと、リュクスは軽く恐怖を覚えつつ、一つの懸念点をあげる。


「えっと、もう一つ。たとえ僕が平気でも、住人の方には毒かもしれません。僕は耐性系のスキルは持っていませんが、来訪者というのが影響を受けない原因かもしれません。」


「御心配には及びません、初めに私が責任をもって試食します。緑甘樹の樹液によっておこる影響に対して効き目のある薬も用意しています。この薬は常備しているものですが、危険症状が発生した際にも使える万能薬ですから。」


「そ、そんなものまで使って調べなくても。」


「いえ、商業長ならばみなさん毒をも食し、新たな食となりうる物を求めるのですよ。食事とは常に万人に必要なものであり、高級路線を出す際でも一番の商品ですから。もちろん私も例外ではありません。ぜひ皮を取る方法とともに試食させていただきたいです。」


商業長というのはトレビス商長だけじゃなく恐るべき人たちばかりなのかとリュクスは顔を沈める。この話にケリをつけなくては従魔証の話にはうつれないと理解したのも一因だろう。


「わかりました、では見ててくださいね。後、結構きついにおいがするので気をつけてください。」


リュクスはポーチから緑甘樹の実を取り出し、(へたをひねって見せる。リュクスは息を止めていたが、トレビス商長はしかめっ面になってる。女性であるトレビス商長でも甘すぎる匂いであったようだ。


「確かにきつい匂いですね。樹液はこんな匂いはしなかったのですが。それよりも今行ったのは(へた取りですか。今のように(へたをとれば周辺の皮も一緒に取れるのですね、なるほどなるほど。残りは私が皮をむき試食させていただいても?」


「はい、どうぞ。」


リュクスが渡した木の実の皮の取れた部分にトレビス商長はナイフを入れると、器用に手早く半分ほど皮を剥いだ。


「なるほど、皮の内側からならはぎ取れるようですね。内側はかなり柔らかいのですね。しかし気を付けなければ実の部分を大きく削ってしまいますか。切り出しても果汁はほとんど出ないのですね。では、いただきます。」


トレビス商長が切り出した半分をさらに一口大に切ったのだが、果汁がこぼれだしたりもしない。トレビス商長は躊躇なく一口大の緑甘樹の実をパクリと食べてしまった。リュクスは大丈夫だろうかと不安だったが、難しい顔をしながらもトレビス商長はゆっくりと味わっているようだ。

さらにもう一切れをトレビス商長は口に運ぶ。リュクスはちょっと舐めただけで飽きた甘さであったにもかかわらずだ。少し舐めただけの緑甘樹はリュクスのポーチの中で眠ったままだ。蜘蛛にあげればよかったと今更ながらに思い出していた。


「なるほど、とても甘いですね。シャクシャクとした噛み応え、舌触りなどは悪くないですが、この甘さはこのまま食べるには向かないでしょう。少しあぶってみてもいいですか?」


「どうぞ、いろいろ試していただいて構いませんよ。」


「ありがとうございます。ではいろいろ試させてもらいますね。」


トレビス商長はポーチから料理セットを出して、現在リュクスが泊まる宿にあるのと同じようなスペースに展開させる。自分ですぐにいろいろ試すためのスペースだったのかとリュクスは納得した。

二つのコンロにそれぞれ鍋とフライパンを用意したトレビス商長は、鍋に水を入れ沸かし始めた。リュクスも鍋は使っていなかったと次の料理に思いを少し移す。

トレビス商長は手際よくフライパンにも火を入れ、残った半分ほどの中身を焼き始めた。剥ききった皮も丁寧に机の横に残している。皮にも用途を見出そうとしているのだろう。


「あの、良ければもう一つ使ってください。」


「おや、申し訳ありません、ではお言葉に甘えて使わせてもらいますね。」


さすがに一つでは足りないだろうとリュクスは、(へたは取らずにもう一つ緑甘樹の実を渡した。トレビス商長は焼き目を付けた木の実を皿に取り出し、渡した木の実の(へたを取ろうとし始める。しかし(へたをリュクスと同じように捻りはじめると難しい顔になった。


「これは後にしますね。まずは焼いたものを試食します。」


何があったのだろうかとリュクスは首を傾げた。横に置かれた木の実の(へたはちゃんと取れてるように見えたのだ。トレビス商長は(へたをとった木の実を目に入れないようにしているほどだ。

焼き目のついた実を口に入れたトレビス商長だが、その顔はどう見てもおいしいものを食べている顔ではなかった。


「なるほど、焼いてしまうとせっかくの甘みは薄れて苦みやえぐみが出ますね。先ほどまでのただただ甘いよりも食べやすいですが、この食べ方もあまり向きませんか。さて、茹で始める前に、この実をどうしましょうか。」


「あれ、(へたは取れてるけど、皮が残ってるんですね。」


トレビス商長は(へたをとった実を突く。(へたはちゃんと取れていたのだが、リュクスが(へたをとった時と違い、周りの皮は一緒に取れていなかった。


「同じように(へた取りを行ったはずなのですが、何が違うのでしょうか。これではさすがにもう処理しようがありませんね。この皮は鋼よりも固いので、もし無理に破ろうとすると中身がダメになってしまうのです。」


「試せそうなことは試した後、ということですよね。」


「私としたことが少し舞い上がっていたようですね。以前にも(へた取りを試した人物もいたでしょう。そして同じように失敗をし、無理だと判断されたはずです。どうしてリュクス様が(へた取りをすると一緒に皮が取れるのでしょうか。」


「申し訳ありません、それは僕も見当が付かないですね。」


リュクスが考えられるものなど来訪者であることが関係してるのかというくらいだ。とはいえ元の世界で果物の取り扱ったのは普通の皮むきくらいで特別なにかしてた記憶はない。わからないことは考えてもしょうがないと、(へたを取った緑甘樹の実を一つ渡した。


「そうですか、ですがこれはなかなかに…いえ、やめておきましょう。まだ結論には早いですね。とりあえず丸々茹でてみますね。」


トレビス商長は受け取った実を皮をむかずに沸騰した湯で茹で始めた。少し経つとすごい甘い匂いがあたりに立ち込め始める。似たような匂いをリュクスは思い出す。以前旅先で立ち寄ったハワイアンショップの匂いに似てるのだ。おそらく苦手な人もいる匂いだろうが、リュクスとしてはまだ平気な匂いであった。


「こんなもんですかね、皮に触れてみてください。」


「え?はい、わかりました。」


リュクスが言われた通り皮に触れてみると、とてつもなく硬い。通常茹でれば果物の皮は柔らかくなるのだが、むしろ茹でる前よりも余計に硬いのではないかとリュクスは顔をしかめた。


「お分かりになりましたか?熱にさらされると外皮はさらに固くなるのです。しかし以前はこの甘い匂いはしませんでした。これは中の実の匂いでしょうね。どうやら中身はかなり柔らかくなっているようです。外皮とは真逆のようですね。」


トレビス商長が茹で上がった実を引き上げると、(へたが取れた部分から見える中身は確かにぐずぐずだった。トレビス商長により皮が内側からはがされていく。リュクス的には見た目は茹でリンゴのような感じである。一口大に切り分けてトレビス商長が口に入れる。その瞬間、目を見開いていた。



「これは!リュクス様、一つお食べください。」


「あ、はい。いただきます。」


言われるままにリュクスも一つ手づかみで口に入れる。瞬間広がる甘み、それも緑甘樹をそのまま食べたときのようなしつこい甘みではない。

ゆでたことによって実は柔らかくなり、シャクシャクとした噛み応えはなくなったが、甘さが強い茹でリンゴのようだとリュクスは味わう。苦みやえぐみもほとんどなくおいしいのだ。


「美味しいですね、これなら木の実そのままでも食べれますね。」


「それどころではありませんよ!この街の甘味にはリンゴしかなかったのです。砂糖は非常に遠い街の原産で、この辺りの土地では育ちにくい作物からできます。輸入しようとすればかなりの値段がかかってしまいます。そこで緑甘樹の実。リンゴを煮たよりも甘く出来上がっています。リンゴを煮ると苦みやえぐみも出てしまうので、リンゴは主にそのまま食すか、オイルと酢の材料に使われてます。この木の実ならこうして食すだけでなく、そのままを甘味の材料として使うこともできます。砂糖の代わりとしてこの街で重宝されるでしょう。ますます西の森の需要が増えますね。」


「あの、それって皮をむければですよね?僕以外にもむければいいんですが。」


「そうでしたね、失念していました。申し訳ありません。その問題点を解決できたらのお話になりますね。ですがもしお手数でなければ、(へたをとった状態の物をお売りいただきたいです。とりあえず失敗してしまった1つも含めて、お支払いさせてください。」


「わ、わかりました。」


詰め寄られる勢いにリュクスは承諾し証明を差し出す。トレビス商長にお金のことと融通のことで遠慮すれば、逆に増やされてさらに優遇されるだろう。そして証明に600リラが追加されていた。


「えっと、おおくないですかね?」


「いえ、妥当な価値ですね。ひとつ200リラの計算です。私がこうして失敗しなければそれだけの価値をとるべきなのです。1つ300リラでお支払いでも問題はないと思うのですが、これ以上だとリュクス様もより不安となってしまうでしょうから遠慮させていただきました。」


これで遠慮された金額なのかとリュクスは悩む。西の森で大量になっていた木の実から(へた取っただけで300リラも出されたら、確かにさらに不安になる。200でもリュクスは気まずいほどなのだから。


「ご自身で使う分のみしかお持ちでないのでしたら、後日でも構いませんので実を大量に回収いただくか、露店で実を買い取りしていただき、(へたを取り除いたものを販売していただけると幸いです。こちらからも緑甘樹の実は買い付けますが、他の方にも回していくべきでしょう。それと、こちらをお渡しいたしますね。」


なぜかトレビス商長はリュクスに袋型アイテムポーチの特大を押し付けた。これで思う存分回収してねということだろう。時空術のこと話せばややこしくなりそうであり、まだまだ時空術を収納用に使えるわけでもないので、リュクスは先行投資と思いもらい受けることにした。

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