↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
暴力的幸運

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/445

従魔証製作

明らかにリュクスに優遇しているにもかかわらず、むしろホクホク顔のトレビス商長は、ようやくリュクスの望む本題を切り出した。


「では、本題の従魔証の件ですね。レッサースパイダーの糸はお持ちですか?もしお持ちならばすぐに作れますので、こちらでご用意いたしますよ。」


「えっと、実はレッサースパイダーたちに木の実を上げたとき、その報酬としてこういうものをいただいてるんですよ。」


リュクスとしては自分で集めた素材で何かを作るというのは、まさに思い描いていたものだ。トレビス商長がまた反応しそうだとは考えつつも、リュクスはとりあえずとレッサースパイダーの糸玉を取り出す。

トレビス商長は糸玉を見つめ口に手を当てた。絶句というのはまさにこの姿だろう。しばらく口に手を当てたまままじまじと糸玉を見た後にようやく話し始める。


「確かにレッサースパイダーを従魔としたなら、こうした糸玉を作らせることも可能。つまり今後も作ることが可能であるということですよね!素晴らしい!これほどの大きさで21個ですか。いったいどれだけの物を作れるのか。胴着にズボンと手袋にマフラーや帽子と考えるだけでキリがありませんね!おっと、すいません。失礼いたしました。」


「いえ、予想はしていたので、大丈夫です。」


「そうですね。これがあれば十分に従魔証としての性能を持たせるリングを作れます。一玉もあれば30匹分は作れるでしょう。すぐにお作り致しましょうか?」


どうしようかとリュクスは悩む、自分で作るのは時間がかかってしまうだろう。ならば作ってもらうのも悪くないと考えたが。作ってもらうならばと糸玉を取り出す。


「一玉で大丈夫ならこの玉を使ってほしいのです。これを見るとわかると思いますが、一匹はただのレッサーじゃないので、蜘蛛の大きさが違うんです。」


リュクスが取り出したのはマザーであるモイザの糸玉だ。これで製作すれば蜘蛛たちも十分に満足するだろう。トレビス商長がそれを識別したのか、身震いしたように見えた。


「…ギルドの者に頼んで作るつもりでしたが、やめます。少々お待ちいただけますか。」


「えっと、大丈夫ですよ。」


リュクスが返事すると同時に、トレビス商長は料理セットをかたづけた。そしてポーチから別のセット用の四角いボックスを取り出す。出てきたのは糸車と台に乗った糸縫い道具だ。


「私が作りますね、こんな素晴らしいもの他の者には譲れません。」


「わ、わかりました。」


断れる雰囲気ではないとリュクスはおとなしく糸玉を渡す。トレビス商長は糸車に糸玉を設置したかと思うと、恐ろしい速度で糸を紡ぎ始めた。


「マザーの糸は殺害によってですとまともに取れないのです。レッサースパイダーと違い、死の寸前に体内の残り糸を溶かしてしまうようで、おそらく体内の毒か酸で溶かしているのだろうということしかわからない状態でした。使い物にならないボロボロの状態で少量残っている場合があり、その現象から発覚したことですね。」


リュクスに話しながら糸をまき終えるという器用さを見せるトレビス商長。リュクスには巻き終える一部始終を見ていたはずなのにどうやったのかわからないほどであった。

トレビス商長は編み道具のほうに椅子を移動し、恐ろしい速度で編み上げていく。出来上がった物は指輪のようなリング状だが、穴がかなり小さい。


「広げようとしてみてください、少しだけ穴が広がります。この大きさならレッサースパイダーにちょうどいいはずです。閉じた後もやわらかいので締め付けるような痛みはないですよ。」


「なるほど、これはいいものですね。」


「それだけでは従魔証としては出来上がってませんよ。最後はリュクス様が仕上げてください。」


「そうでしたね。やってみます。」


リュクスは受け取った従魔証のもとを見つめ、使っていない首輪型の従魔証を左手に取り出す。右手で作ってもらった糸指輪を握りしめて、テイムを使った時のことを思い出しつつ、従魔証をコピーするようなイメージを浮かべた。


「コンフォームプルーフ。」


リングを握った右手から淡い黄色の光がほのかに漏れ出す。光はすぐに収まったのをみて、リュクスは手を広げリングを見つめる。よく見ると内側に見慣れない文字が刻まれている。資料室で読んだ古代文字にみえ、神秘的な従魔証が出来上がったのだと満足する。

リュクスの問題はこれを21個分作ることである。すでにトレビス商長によって4つ出来上がっているのを全て右手に包み、再び従魔証を作る魔法を使う。


「コンフォームプルーフ。」


右手から淡い黄色の光がほのかに漏れ出し、光が収まったところでリュクスはリングを確認。4つ全てに古代文字が刻まれているのをみて、何とかなりそうだとひとまず安心する。


「同時に行うのでしたら、5つまでに抑えることをお勧めします。6つ以上は魔素の消耗量が一気に跳ね上がるはずですよ。」


「そうなんですか?わかりました。」


トレビス商長はずっと手元に集中していたはずなのに、リュクスの魔法をいつ見ていたのだろうか。今も一つ一つをかなりの速さで、しかし丁寧に作っているのだ。リュクスは5つ溜まるごとに従魔証にしていく。

5個ずつ作り上げたのと、トレビス商長のおかげで手早く作り終えた。リュクスが最後に渡された一つは他のよりも少し大きく、形もただの輪っかではなく、糸でダイアの形の部分ができてる。トレビス商長がマザー用に特別感を出したものだ。


「コンフォームプルーフ。」


これでリュクスは21個分作り上げたわけだ。トレビス商長も疲れてるだろうとリュクスはちらりと見たのだが、やり遂げた満足感しか感じない顔で、疲れなど全く感じなかった。


「大変いい経験ができました、ありがとうございます。商業者ギルドでの記述がないことからおそらくですが、レッサーマザースパイダーの糸を使って製作をしたのは私が初めてになるでしょう。これを他の者に譲るつもりはありませんよ、私も生産者ですからね。もっとも、こんな機会を逃したら商業者としても失格ですね。我々はあらゆる転機や幸運をつかんでこそですから。」


「そ、そうですか、それはよかったです。では製作費用についてなんですけど。」


「もちろん製作費など不要ですよ。今言った通り素晴らしい機会を得たので。」


リュクスとしてもそうくるだろうという予想はしてしていたが、さすがにそれでは申し訳ないと提案を重ねる。


「そうおっしゃると思いましたので、金銭ではなくこちらも物資作戦で行きます。今そこに少し残った糸と、こちらの20個の糸を差し上げます。もし納得できないようなのでしたら、土地代で融通していただいた件のお礼とでも思ってください。」


「なるほど、どうやらこれはこちらが引き下がるしかないようですね。せめて胴着とズボンをこの糸で製作してお渡しするので、そちらはお受け取りください。」


「わかりました、でもあまり大量に使ったりしないでくださいよ。糸量が多くて着づらいとかは勘弁です。」


「そのあたりはしっかりと作らせますのでご安心ください。」


うまい具合に押し付けれたとリュクスも安心する。いろいろ安くしてもらったり、作ってもらったりとやってもらってばかりでお礼の一つも出来ていなかったのだから。


「ところで、今後は蜘蛛たちに糸玉を製作させるのですよね?」


「え、どうなんでしょう、彼らの意思次第にはなりますかね。」


「なるほど、従魔たちの意思を尊重するのですね。ではもし売り出すのでしたら、この大きさであればレッサースパイダーの糸玉なら一玉の相場は250リラですかね。大きさと糸玉の状態の良さを考えればこれ以下はまずいですね。安すぎればあなたの露店に人だまりが出来る可能性がありますので、もう少しお値段を張ってもいいと思います。レッサーマザースパイダーの糸玉をもし販売するのであれば、その倍の値段は付けてください。現状他に流通がないため、それでもお安いかもしれません。即座に売り切れる可能性があることをご注意ください。」


「なるほど、結構高値をつけるようにということですね。」


「そうなります。あとは、21匹の食事問題ですかね、何かお考えはありますか?」


「うーん、そういえばその問題がありましたね。」


さすがに毎回勝手に東から西に大所帯の蜘蛛が移動するのはまずいだろうとリュクスは考える。問題なければ勝手に樹液を吸いに行ってもらえただろう。木の実をリュクスが用意するのは論外、時間かかりすぎる。もっともリュクスにもプランはある。


「とりあえず、育つのかわからないですけど、実をそのまま植えてみるつもりです。」


「なるほど、栽培してみるということですね。ではこちらをお渡しします。」


トレビス商長がリュクスに渡したのは、地面から腰ほどの長さの木の杭だ。杭の上部にはスイッチとL字に2つの突起が付いてるもので、20個を受け渡した。


「そちらを囲いたい四方に、膝ほどの高さになるよう突き刺してください。杭の上部のスイッチをおすと、突起から柵が出てきます。柵で囲われた中で栽培している植物は柵の外に広がらなくなるのです。」


「広がらなくなるんですか?」


「はい。樹に関してでしたら大きく育ち、実ができてからでも問題ありませんが、囲った中の木から実が落ちても新たな樹が勝手に生えてしまうということを防げます。突起部分から他の突起部分に向かい柵ができるので、その際に巻き込まれて怪我をなさいませんようご注意ください。」


「わかりました、ありがとうございます。」


リュクスは貰い物をしてしまったが、これはノビルとレモングラスを分けるのに便利だともらい受けた。リュクスの土地と隣の土地との境にはリュクスの背より1,5倍は高い木の柵があり、同じように作られてるんだろうと納得する。

さっそく柵と実を植えたいところだが、だいぶ遅い時間になってしまった。柵を用意してくれたということは、緑甘樹の実は植えれば育つんだろう。木の成長を考えるならば、リュクスとしては今日中に済ませたいわけだ。


「では、農作業を行うので、僕はこれで失礼しますね。」


「わかりました。最後に胴着とズボンについてだけお伝えしておきます。製作品ができましたら冒険者ギルドのほうにも通達しておきますので、お手数ですが商業者ギルド横の店舗のほうでお受け取りをお願いします。」


「了解しました。」


リュクスは軽くお辞儀をして、トレビス商長の部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
マザーの毛玉は2倍じゃなくて20倍か100倍くらいにしないとw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。