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竜の庵の聖語使い  作者: 風結
エピローグ
54/54

未来への予感

 ティノは目を覚ましました。

 全裸でした。

 女の子になっていました。


「はっ……?」


 夢を見ていた。

 その確信はありますが、何となくそ~と布団をめくってみると。

 全裸でした。


 でも、大丈夫です。

 女の子になどなっていません。


「たぶん、『治癒』してくれたんだろうけど。服くらい着せてくれてもいいのに」


 アリスの悪戯でしょうか。

 「感知」で探ってみましたが、部屋と寮の3階には誰もいません。

 イオリの匂い。

 仄かに漂う甘さからすると、イオリが布団からでて二つ時は経っているようです。


「えっと、今日は、片づけの日だったかな?」


 制服を着ながらティノは記憶を探ります。

 催し物や「聖技場(バナー・ラス)」などの片づけ。

 「対抗戦」の選手は免除となっていたはずなので、義務ではありません。


 ふと、眠っていたのは一日だけだろうか、と思いましたが、体の調子からすると翌日で間違いないようです。

 高つ音を過ぎた頃でしょうか。

 出歩くには丁度良い暖かさ。

 体の具合を確かめたいので、先ずは徒歩で外に向かうことにしました。


 我ながら無茶をした。

 「特別戦」での、一撃(ひとうち)

 無茶ーーではあったのですが。

 ふわりと、温かなものに包まれているような安心感。

 不思議と、恐怖や不安といったものはなく、「想い」のすべてを乗せることができました。


 あれはアリスの方術だったのでしょうか。

 彼女には感謝しなくてはいけません。

 「脳内聖語」の先の、魂の「聖語」とも言うべき「想い」を紡ぎながら、こうして五体満足でいられるのですから。


 体に問題はないようです。

 魔力操作と「感知」を行ってみましたが、こちらも問題ありません。


 並木道を歩いて正門まで。

 皆は撤去作業をしているのか、誰とも会わなかったので校舎に向かおうとしたところ。

 二つ、足音が聞こえてきます。


 「感知」でリムとサーラであることはわかっていたので。

 正門の陰からでて、声をかけようとしたらーー。


「ふえ~ん! イオリちゃんとお幸せに~~っ!!」


 ティノの顔を見るなり、リムは来た道を戻っていってしまいました。

 嘘泣き、というわけではないようです。

 微妙に、訳がわからない祝福を残し、リムは逐電(ちくでん)

 雷竜を背中にくっつけているかのような勢いで、あっという間に姿を消してしまいました。


「あーもー、リムったら。でも、大丈夫よ。三日もすれば元通りになるから、こら~、リ~ム~!」


 困ったような笑顔を残し、小走りでリムを追ってゆくサーラ。

 残念ながら、彼女は謎の「寸劇」の説明をしてくれなかったので。

 渋々ティノは声をかけることにしました。


「クロウ」

「ああ、懐かしいな、ティノ。学園に入園したとき、初めて逢ったときもこうして、……いやいやっ、そんな微妙な早歩きで離れていかなくても!」


 クロウは。

 泣きそうになりました。


 思い出に浸っていたのはクロウだけで、ティノは彼の存在を忘れてしまったかのようにスタスタと歩いていってしまいます。

 ティノの気が変わるかもしれない。

 全力疾走で追いついたクロウは、必死にティノに食い下がりました。


「ティ…ティノ、どこへ行くんだ?」

「どこって、それはもちろん、()()()()()ところ」


 クロウの心臓が、どきんっと跳ねました。

 直後に、ずきんっと痛みました。


「わ、私は別に、ティノの気に障ることは、何もしていないと思うのだが……」


 腹パンの予感。


 そうでした。

 あの日、初めての「苦痛(ゆうじょう)」。


 記憶を美化しようとクロウは試みましたが、無理でした。

 おかしい。

 ティノ以外の学園生とは良好な関係を築いているというのに。

 どうして一番近づきたいと思っている相手とだけ、上手くいかないのでしょう。


「校舎の、この方向は、学園長室?」

「ーークロウ」

「な、何だ、ティノ?」


 氷竜のような極寒の眼差しを向けられるのかと警戒したクロウですが。

 学園長室の前でとまったティノが浮かべていた表情はーー。


「強制はしない。僕はこれから、学園長室に入る。()()()()ーー()()()()に居てもいいと思った。僕は、メイリーンでもソニアでもなく、適任はクロウだと思った。だから、覚悟があるのなら、扉が閉まるまでに入ってきて」


 ノックをすることもなく、ティノは扉を開け、入ってゆきました。

 ティノが何を言っているのか、クロウにはわかりませんでしたが。

 一つだけ、わかったことがあります。

 本当の意味でティノに近づきたいと思うのなら、ここで逃げていては話になりません。


 勝手に閉まる扉。

 ぱたり、と音がしたとき、クロウは。

 学園長室の、内側に居ました。


「ティノが選んだのなら、まぁ、構わないわよ」

「ワンっ」


 教師である、学園長とベズ。

 『聖人形(ワヤン・クリ)』のイオリとスグリ。

 同じく仔犬であり、巨狼でもある「聖人形」のマルは、机の上でアリスに撫でられています。


 ティノが言った通り、「人」は居ません。

 クロウは、すぐにそれを知ることとなります。

 「隠蔽」の方術を解き、先ずはアリスから正体を明かしました。


「真炎の三本角……、学園長は……炎竜」

「あら、もしかして薄々感づいていたのかしら?」

「いえ、今、凄く納得、というか、カチリと嵌まりましたが。今の今まで、その可能性すら考えたことはありませんでした」


 ーーエーレアリステシアゥナ。


 アリスが炎竜だと知った瞬間。

 不思議なことに。

 クロウの心を満たしたのは、驚きではなく安堵でした。


 ファルワール・ランティノールの孫。

 先に進みすぎた「聖語使い」。

 「聖域(テト・ラーナ)」を去ったランティノールと同様に、彼らの行く末に灯る、暗い影。


 でも、アリスが竜だとするなら。

 それらの懸念は、払拭されたも同然。


「そうなると、ベズ先生もですか?」

「私は、ダナとマホマールの味方だ。『聖語使い』である内は、その枠を崩すつもりはない。私の正体は、ーー秘密ということにしておこう」

「ティノは、『こちら側』と言いました。私で、良いのでしょうか」

「『誰か一人』ということなら。私もまた、クロウ君を推薦しただろう」


 ベズに認められた。

 喜びと同時に、クロウは重圧に潰されそうになりました。

 「聖域」と「聖語使い」と「竜」。

 それらの秘密を抱えたまま、「聖語使い」たちを「活況の時代」へと導かなければいけないのです。


「わしの正体は、もうティノが言うたかの。『聖獣』ではなく『魔獣』ではあるが。興味あらば、『マルカルディルナーディ』で調べてみるが良いかの」

「その口調ーー。マルは『老人』、ではなくて『老仔犬』?」

「なぜにそうなるのかの。『特別戦』でわしの姿は見たじゃろう。(よわい)三千周期の『魔狼』が、わしの本来の姿かの」


 マルが「魔狼」ということなら。

 残りは二人の「聖人形」。

 クロウが尋ねる前に、「イオリ袋」に入ったまま眠っているイオリをティノが紹介しました。


「イオリはそのまんま。竜としての力のほとんどを失った、角無しの地竜」

「ぱー」

「『設定』は、嘘ではなかったということか」


 ティノは「イオリ袋」を机の真ん中に置きました。

 迷惑顔のアリスの手から逃れたマルは、袋の上に。

 尻尾でイオリの口を塞ぎ、話の邪魔にならないようにします。


「で。最後はスグリ。スグリは『魔竜王』で、本名というか真名は、マースグリナダ。大陸(マース)で一番凄くて、一番偉くて、一番優しい竜だよ」

「は……?」

「えっへんだ!」


 八竜も喜ぶ、大威張竜。

 にょきっと、耳の上辺りから後ろに向かい、二本の漆黒の角が生えました。

 なぜか鼻を押さえたアリスがそっぽを向いていましたが。

 見なかったことにしないといけないようです。


「通常、古竜は十歳くらいの子供の姿をしている。見た目に騙されないことだ」

「わ、わかりました。そうなると、ティノは……」

「クロウは()()なったよね。僕の『秘密』を聞けるくらい、強くなったよね? これからもがんばって強くなってね?」


 そうです、「対抗戦」のあの試合。

 ティノの戦う姿。

 クロウの覚悟が決まった瞬間でした。


 クロウは強くなりました。

 これからも強くなってゆきます。


 でも、それはまだ、未来でのお話。


 ティノは笑顔です。

 それはそれはとても魅力的で、ーー命の危機さえ感じてしまいます。


 邪竜の前の仔犬。

 冷や汗、あぶら汗たんまり。

 世の中の理不尽をこれでもかというほど目一杯、噛み締めながら。

 クロウは。

 泣きました。


「っ……」


 ーー腹パン。

 声もなく崩れ落ち、クロウは意識を失いました。


「ベズ。助けてあげれば良いでしょうに」

「ランティノールほどではないが、クロウ君は。『天を見上げる才能』を具えている。こうして挫折を経験しておくことで、予期せぬ陥穽(かんせい)に立ち向かう強さを得られるだろう」


 ダナ家の味方。

 多分に疑わしいところでしたが、アリスは何も言いませんでした。

 まだ問題の種が残っているのです。

 余計なことに気を回している余裕などありません。


「エーさん。『特別戦』では、ありがとうございました」

「……何のことかしら?」


 スグリが居るので、ティノは「アリス」ではなく「エー」と呼びました。

 最愛のスグリがつけてくれた「愛称」ですが、アリスはまだ完全に受け容れることはできていないようです。


「最後、『聖語(オウス)』を唱えたとき、走馬灯を見る間もなく、そのまま地の国に逝ってしまいそうな感じでしたけど、エーさんの方術のお陰で命を拾うことができました」


 お礼を言ったティノ。

 笑顔のまま固まっているアリス。


 アリス以外で、候補は二竜と一獣。

 ティノは、迷わずマルを選びました。


「マル、エーさんが……」

「ひっ、ふひひっ! ちょっと待ちなさい! 確かに私の前でなら『脳内聖語』使っても良いとか言ったかもしれないけれど! あれはさすがに無理! 想定外! だいたいね! 炎竜は魔力操作が苦手なのよ!」


 ティノは無言でマルを強奪。

 ベズに渡しました。


 感謝して損をした。

 実際にはそんなことはありませんが、そうなると話が違ってきます。

 マルをベズに渡したのは。

 そういう意味でもあります。


「試合中、ティノ君は私のことを『敵』だと言っていたが、それは誤解だ。私は『敵』ではない」

「『敵』……?」


 始めはベズが何を言っているのか、ティノは理解できませんでしたが。

 ベズの腕に抱えられたマルが尻尾をフリフリしたので、記憶から拾ってくることができました。


「あ、いや、その、あれはその場の雰囲気というか何というか、ただ言ってみただけで、ベズ先生が『敵』だとは思っていないけど、完全に疑いが晴れていないから、えっと……」

「疑われるのは構わない。『敵』だと認識されていないのなら、問題ない」


 我が敵を討ち滅ぼすべし。


 思い返してみれば、確かに紛らわしい言葉です。

 「敵」の正体は、未だ不明。

 とはいえ、ティノはベズを疑いながらも、疑っていません。

 だからこそ、ベズと命懸けで試合をしたのです。


「でも、ベズの疑惑が晴れたわけではないわよ。『聖休』後、学園に戻ってから確認したのだけれど。ベズが学園を発った時刻からすると、『庵』への到着が速すぎる。そこは説明でも釈明でも良いから、してもらうわよ」


 アリスの追及の緩さからして、彼女はベズを「敵」だとは思っていないようです。

 ここでラスのことを話しても良いのですが。

 ラスという証竜がいるので、ベズが「敵」でないことは証明できます。


 そんなわけで、ベズは。

 正体を明かしたくないというラスの願いを優先することにしました。


 嘘を吐くなら、大きな嘘。

 そのほうがバレにくい。

 ベズは、この場に於いて最も相応しい竜を持ちだすことにしました。


「ラカールラカだ」

「溶岩になるまで燃やすわよ」

「学園長が何に対して激怒しているのかは知らないが、聞かれたから答えたまでだ。ーー学園にいる竜。それが気になったらしいラカールラカは天空より舞い降り、私に尋ねてきた。答えと引き換えに、『僻地』まで乗せてくれるよう頼んだ。そして、『僻地』に近づいた際、異常な魔力を『感知』したゆえ、『結界』を纏った私を息吹(ブレス)で飛ばしてもらったというわけだ」

「ーー一応、聞くのだけれど。ラカールラカはどんな竜だったかしら?」


 これは不味い。

 さっそくの嘘がバレるかもしれない危機に、ベズは心の中で嘆息しました。

 なぜかアリスはラカールラカに執着しているようで、細かなところまで問い質してきます。


 アリスの様子からして、詳しいことは知らない。

 仕方がなくベズは。

 風竜の中の風竜である、ラカールラカに相応しい竜物像を描きだすことにしました。


「竜の中で最速。ーー自由を(たっと)ぶ、高貴なる覇者。そのような威厳が感じられた。また、好奇心が旺盛で、その理解度と優れた言い回しに、私も感心させられた。風竜と天竜が憧れるに足る、優雅にして先鋭なる傑物。『最強の三竜』となることを望んでいる私も、(あやか)りたいところだ」

「そう、そんな竜なのね」


 遠い未来ーー竜にとっては少し先の未来で。

 大陸(リグレッテシェルナ)に赴いた際に、思いっ切り嘘がバレるのですが、それはまた別のお話。

 真実を知らないアリスは、ベズの妄想竜(ラカールラカ)像に納得してくれました。


 話がずれてしまいましたが、触れるには頃合いでしょう。

 ベズは昨日の「特別戦」について話すことにしました。


「一応、聞くのだが。ティノ君は、態とやったわけではないのだろう?」

「へ? 何のことですか?」


 ティノの顔を見れば、一目竜然。

 ティノ相手に前置きや愚痴、皮肉は無用ということで、ベズは率直に語ることにしました。


「昨日の『特別戦』は大変だった。学園長が言っていたように、学園長は何もしなかった」

「何よ。余計な手だしをするなと言ったのは、ベズのほうでしょう」

「当然だ。下手に介入を許せば、それだけティノ君が死んでしまう可能性が増す。私一竜で対処するのが最善だった」

「えっと、結局、何のことでしょうか?」


 ここまで話しても、ティノはわかっていないようです。

 愚痴になってしまうかもしれない。

 そんなことを思いつつ、ベズは続きを話しました。


「ティノ君が使用した『脳内聖語』だが、君が即死しないよう方術で対処したのは私だ。『結界』にあの勢いでぶつかればティノ君は即死するから、『結界』を調整したのは私だ。ティノ君は魔力で圧し潰され、即死するから、相殺や魔力の除去をしたのは私だ。まるで自殺志願者のようにティノ君の体が崩壊していったので、『治癒』をかけ続け、命をつなぎとめたのは私だ。ーー途中、いったい私は何をしているのだろうかと、自問自答した。ただ、こうも思った。人が竜に勝つには、こうまで非情に、卑劣にならざるを得ないのだと。そしてティノ君の策略の通りに、私は君を見殺しにすることができず、苦難の道を選んだ」

「……えっと、その、何というか、ごめんなさい。ベズ先生が困ったときは、できるだけお手伝いしたいと思うので、どうかどうか許してください」


 ティノの物言い。

 どうやら、勝負に勝ったという自覚はあるようです。

 良心の呵責に耐え切れなくなったティノが床に這い(つくば)って許しを乞おうとする前に、ベズは言葉を継ぎました。


「勝負はティノ君の勝ちだ。どこまで覚えている?」

「ベズ先生の『結界』を壊すところまでです。……あの~、その~、え~と、……無意識だったので、態とやったわけじゃなかったんですけど、ベズ先生の体に傷をつけることはできそうになかったので、……意識が途切れる間際、目とか口の中とか狙いました」

「素直でよろしい。ティノ君の狙い通り、舌を少しだけ切ってしまった。傷を負ったことなど、世界に生じてより初めてだ。ーーそれで、ここまでして得た『お願い』。君は何を望むのか?」


 ティノの「お願い」。

 竜に勝った代償としては、細やかなもの。

 ティノの望みは、ベズの予想通りのものでした。


「イオリがイオラングリディアに戻る手伝いをしてください」

「元からそのつもりだ。イオリとイオラングリディアの状態は興味深い。係わるな、と言われても係わるつもりだ」

「はい。『お願い』します」


 ティノの笑顔。


 本当に、人種は卑怯。

 マホマールとダナ。

 彼らもまた、ベズの心に触れてきました。


 これでベズは。

 ティノと「約束」してしまいました。

 本当に、(ろく)でもない。

 ベズは自分が笑顔を浮かべていることにも気づかず、「特別戦」の顛末を話してゆきます。


「試合のほうは、引き分けだ。ティノ君の、あれだけの攻撃を食らいながら私が立っているのは不自然。五試合目と同じ構図というわけだ。ティノ君が服を着ていなかったのは、服を着ていては『不純物』が混じる危険性があったからだ」

「『不純物』……ですか?」

「そこはあまり気にしなくて良い。ティノ君の容体があまりに酷かったので、寮に移したあと、私とスグリ、学園長で『治癒』を施した。ーー若いというのは素晴らしい。地の国に魂ごと抛り込まれたような状態だったが、君は生還した」

「えっと、そんな遠い目をしながら、しみじみと語られても……」


 やはりティノは、まだ知らないようです。

 ここまでは表向きの話。

 ここから面白い、ではなく、ややこしい領分に足を踏み入れていくことになります。


「私ばかり話すのも面白くない。ティノ君が攻撃を放つ前に何があったのかを、()()()で見ていたスグリに話してもらおう」

「だ! イオリがイオラングリディアだっただ!」

「えっと……?」


 二竜に説明を求めようとしたティノですが。

 アリスは胸の前で両手を握って、スグリを応援。

 ベズは(だんま)りを決め込んでいたので、目をキラキラと輝かせているスグリに尋ねることにしました。


 そうとなれば身長差があるので、スグリの両脇に手を差し込み、持ち上げて机に座らせます。

 スグリが座った場所をアリスが凝視していますが、「いないいない竜」。


「具体的には、何があったのかな?」

「だ! イオリがティノと同じように、夢の中でどんぶらこ、になっただ!」

「ということは。途中からイオリは、僕に魔力を注いでいなかったということ?」

「それでだ! スケスケのでっかいイオラングリディアが、ババ~でドド~ンで皆がズキュ~ンだっただ!」

「『スケスケ』……?」


 ティノも周期頃の少年です。

 「スケスケ」とか「でっかい」とか、そんな魅惑的な言葉を言われれば。

 非常によろしくない妄想をしてしまったとしても、誰が責められるでしょう。

 でも、同時に。

 皆がズキュ~ン、という言葉を聞いた瞬間に、猛烈な嫉妬の大嵐。


「だ……? 何かティノが怖いだ」

「大丈夫大丈夫。僕は何も怒っていないから。もしものときは、観客たち全員の目を潰さないといけなくなるとか、そんなことはまったく考えていないから。ーーそこのところ詳しく」

「だ? 『幻影』とは少し違う感じだっただ。イオリの上に、スケスケで神秘的な感じの、会場の観客たちからでも確認できるくらいの、でっかいイオラングリディアが現れただ」

「っ……」

「あら、もしかして悔しいの?」


 ここで、アリスが茶々を入れてきました。

 そんなもの。

 血の涙がでるほど悔しいに決まっています。


 たった一度の「邂逅(キセキ)」。

 何百、何千と夢に見てきた、彼女の姿。


 その姿を、自分(イオリを含む)以外のすべての者が見ていたという事実。

 嫉妬が大噴火し、呪いにまで昇華してしまいそうです。


「あのとき、何か、温かいものに包まれているような気がしていましたが、イオラングリディアだったんですね。ーーということは、もしかしなくてもイオラングリディアは僕を助けてくれたんですよね! そうですよね! そうに決まっていますよね!!」


 突然、元気が有頂天竜になったティノを見て、顔を見合わせる三竜。

 三竜の雰囲気からして、どうやらティノの見立て、というか決めつけは半分以上間違っているようです。


「あ、っと、そうだった」


 もはや病気ではないかと疑う水準で、感情を乱下降させたティノは。

 机に座って、足をぷらんぷらんさせているスグリに向き直りました。


「スグリ。最後まで僕の『お願い』の通り、全力でやってくれたんだね。ーーありがとう」

「だ! スグリはティノの友達だ! ティノの『願い』だから、がんばっただ!」


 本当に。

 ティノは「竜の初めて」を幾つ奪ったら気が済むのでしょう。


 スグリを泣かさなかった、初めての人種。

 これはもう、「友人」では足りません。

 そう、「親友」です。


「だ! ティノはスグリと、末永くおつき合いをするだ!」

「っ!?」


 スグリの微妙な発言に。

 「発火」だけは何とか堪えたアリス。


 「特別戦」ではあまり助けてもらえませんでしたが。

 振り返ってみれば、アリスにはたくさん面倒を見てもらいました。

 逆に面倒を見たことも、ちらほらとあるような気がしますが、そこは考えないことにします。


 そんなわけで。

 アリスにはしっかりと「発火」してもらうことにしました。


「実は、エーさん。人との触れ合いには慣れているんですけど、竜との触れ合いは、まだまだなんです」


 ティノは話しながら、「イオリ袋」を背負いました。

 袋の上の、心得たマルが、ベズにお願いします。

 頷くベズ。

 わかっていないのは、当事者のアリスとスグリだけのようです。


「僕がこうしてイオリと接しているように、スグリもエーさんと接してあげてください。ああ、あと、エーさんは男の竜との触れ合いに難点があるようだから、スグリは男っぽく振る舞ってあげてね」

「だ? よくわからないけどよくわかっただ!!」


 今度は後ろから両脇に手を入れ、スグリを持ち上げます。

 それから。

 察しの悪い炎竜が固まったので、切羽詰まった顔になっているアリスの背中に。

 スグリを贈り物(プレゼント)


「っっ~~?!」


 部屋の半分が炎で見えなくなりました。

 タイミングよく「結界」を張ったベズ。

 クロウを見下ろすティノ。


 クロウは()()()()に居たのに。

 「結界」を張る前に、ベズが移動させたようです。


「さて、ではここからは、イオリとイオラングリディアについて、憶測も含むが、わかったことを話そう」

「えっ! 何かわかったんですか!?」


 ティノは無意識でしょうが、クロウを踏んづけ、ベズに詰め寄りました。

 ここで目を覚まされても面倒なので、ベズは「強制睡眠」。

 クロウは幸せな夢をーー見ていないようです。

 まるでティノの腹パンを食らったかのような、苦悶の表情。

 さすがに可哀想なので、マルは「治癒」をかけてあげました。


「竜にも角にも、私やスグリがわかる範囲でということだが、ーーイオリの内にイオラングリディアの気配は感じられない」

「は、へ…、ほ?」

「ベズ殿。ティノの頭でも理解できるよう、優しくわかり易く話してやって欲しいかの」


 酷い言い様ですが、どこまで行ってもマルの言うことは事実なので、ティノはこくこくと、壊れた「聖人形」のように頷きました。


「そうか。では先ず、一つずつ、確定した事実を挙げるとしよう」

「事実、ですか?」

「ティノ君は自覚がないようだが。ときどき、竜に匹敵する『感知』を発揮していた。実際、学園長室にはスグリが『結界』を張っていたにも(かかわ)らず、ティノ君は迷わず学園長室に来た」

「あー、と、そうなんですか? 確かに、『感知』でイオリたちがここに居るのがわかりましたけど」


 スグリの「結界」。

 アリスだけでなくベズも「感知」することは敵いません。

 「対抗戦」の、ティノの「仕込み」が良い例です。

 発動するその瞬間まで、二竜は気がつきませんでした。


「次に、ランティノールは長生きだった」

「はい。『お爺さん』は長生きでした」


 打てば響く、という言葉がありますが、ティノの鈍さは。

 竜の角で突いても、響かないようです。

 どうしたものか迷ったベズですが、いっその事、答えを言ってしまうことにしました。


「かつて、イオラングリディアが宿っていたのは、或いは媒介としていたのは、ファルワール・ランティノールだった。イオラングリディアの影響で、彼は長寿となったのだろう。そして今、イオラングリディアの媒介となっているのは、ーーティノ君だ」


 失敗した。

 ティノの幸せが液状化したような顔を見て、話す順序を間違えたことをベズは悟りました。

 こうなっては仕方がありません。

 必要なことをさっさと語ってしまいます。


「ティノ君の『感知』も、イオラングリディアの影響を受けてのことだろう。ただ、イオリと同様に、ティノ君の内に、イオラングリディアの気配は感じられない。イオラングリディアの状態がどうなっているのか、解き明かすまでには時間がかかりそうだ」

「はい! ありがとうございます!」


 やはり駄目だったようです。

 ティノはベズの言葉を半分も理解していません。

 ティノの、イオラングリディアへの執着を甘く見ていました。


 言わなくて正解。

 ベズは、「特別戦」の際に現れた、イオラングリディアの姿を思い起こします。


 ベズの予想では。

 イオラングリディアは、自分の意思で姿を現しました。

 その目的は、恐らくーー警告。


 ベズ、も含まれているでしょうが、本命はアリス。

 自分の「ティノ(もの)」に手をださないようにと。

 まるで嫉妬に塗れた、人種の女性のようにーー。


 ベズはアリスを見ました。

 ベズとは異なる切っかけで「分化」したアリス。

 そして。

 ティノの「聖語(オウス)」ーー「恋文(ラブレター)」。


 こちらもベズの予想ですが。

 イオラングリディアは、「移譲」でいつでもイオリからイオラングリディアに戻れると睨んでいます。

 ベズとスグリ、アリスとーーそれからイオリも。

 四竜もいて、成就させられないということは、イオラングリディアのほうで「移譲」を拒んでいると考えるのが自然です。


 こんな間抜けというか阿呆な結論は、ベズは嫌なのですが。

 これが最も納得がいく答えなのだから致し方ありません。


 ティノの猛烈な「恋文(おもい)」。

 スグリにくっつかれ、「発火」したアリス。

 彼女と同様に、イオラングリディアも。

 恥ずかしい、というか、照れている、というか、あの地竜はーー。


 ティノの竜並みの「想い」に応えられる自信がない。


 そういうわけで、今も「隠れ竜」状態。

 考えたくもありませんが。

 ()()()()()()で「分化」した竜は、初恋を自覚した少女よりも初心(うぶ)なのかもしれません。

 もしそうだとしたなら。

 ティノの「お願い」をどうしたものが、悩みどころです。


 それともう一つ、あえて言わなかったことがあります。

 それはティノの「腑抜けた」容姿。

 女性であるイオラングリディアの影響を受けている。

 そうは思うものの、「可能性」の話なので、口にすることは控えました。


「ふ…ひ~」

「だ~だ~だ~!」


 アリスが気絶したので、ベズは「結界」を解きました。

 クロウに続き、アリスまで。

 部屋の中がおかしな状況になっています。


「だ? エーは幸せそうな顔だ。上手くいっただ?」


 アリスが求めているスグリは、竜です。

 どれだけ時間がかかろうが、生温かい目で見守っていれば良いだけ。

 でも、ティノは人種。

 そこに係わってくる、「庵」の「結界」。


 ランティノールの「遺産」。

 きっと彼は。

 ティノに、委ねたのかもしれません。


 むずかしいところです。

 最良の結末。

 永く人種と係わってきたベズでさえ、正しい答えは持ち合わせていません。


 でも、それで良いのかもしれません。

 竜でも見通せないもの。

 それこそが、人種の「特権」でもあるのですから。


「ほれほれ、ティノ。そろそろ天の国から戻ってくるかの。明日より、ではのうて、今日からの心配をしたほうが良いじゃろう」

「あ~ぐ!」


 完全に予想外。

 背負っていた「イオリ袋」を机の上に置いて。

 何をとち狂ったのか、二竜と一獣の眼前で邪悪なる儀式が行われました。


「ワヲっ!? ワヲっっ?! ワヲっっっ??」

「だだだだだだだだだ~~っっ!!!」

「私は地竜で地竜は私、イオラングリディアとの間に軋轢を生じさせたいわけではないからあの地竜が実は照れているだけとかそんな可能性をティノ君に伝えたりはしない」


 幸いなことに。

 ティノは「宝物(イオリ)」で胸がいっぱいだったので、ベズの言葉は聞こえていませんでした。


「おー? ひっひ~と~、クローは~、すやすやな~、おひるね~」

「はいはい。イオリは起きたばっかりだから、また寝たら駄目だよ」


 ティノは「イオリ袋」からイオリをだして、ぎゅっと抱き締めます。

 ティノの宝物。

 何度だって確認します。

 二人がいるこの場所が、ティノの居場所なのです。


「ところでマル。さっき何か言っていたけど、何の心配?」

「ワヲ……? と、そうじゃったそうじゃった。わしが何を言わずとも、さすがにティノも自覚しておろう。昨日はさすがに、色々と遣り過ぎたかの」


 邪竜な儀式を目撃し、まだ心が乱れているのか、「さすがに」を二回も使うマル。

 イオリを抱き、幸せ満杯のティノは、あっけらかんと答えます。


「んー? でも、『才能』がない僕でもできることをやっただけなんだから、皆すぐに追いついてくるだろうし、問題ないと思うけど」

「どうしたものかの、ベズ殿。ティノは本気で言うておるぞ」


 意思表示でしょうか、マルはティノからベズへと飛び移りました。

 惜しい。

 イオリがマルを狙っていたので、ティノはマルの気を逸らすという援護をしたのですが、残念ながら逃げられてしまいました。


「にんきもの~、そこつもの~、みんなでティノティノ~、わっしょいわっしょい~」

「イオリの言う通り、これから『聖域』はティノ君を中心に回ってゆくことになるだろう。『特別戦』は引き分けだったが、ティノ君が攻撃し、私は倒れた。『聖技場』にいた者たちは、私や学園長よりもティノ君のほうが上だと判断しただろう」

「え、ええ~?」

「それだけではないかの。一星巡り後の、入園希望者は百人を超えるゆえ、入園試験を行うことになるじゃろう。彼ら少年少女たちの目的、というか、憧れかの? ティノのようになることを夢見て遣って来る子供らもおるということじゃな」

「百人以上となれば、私と学園長だけでは手が足りない。ティノ君にも試験官をやってもらうとしよう。さすれば、彼らの眼差しから、自身の立場も理解できるというものだ」


 ファルワール・ランティノール以来の天才。

 竜に愛される才能。

 ティノの与り知らぬところで、すでに囁かれています。


 聖語時代の二人目の天才。


 そんな名声が定着するのはまだまだ先のこと。

 学園生活が終わってからが、本番ーーなのですが。

 のんきというか危機感がないというか、ティノ自身がそのことに気づいていません。


「まぁ、大丈夫よ。学園にいる間、外側からの横槍は、私やベズ、それにスグリとマルっころも。ティノを護ってあげるから」

「だ! エーは起きただ! もう一回いくだ?」

「ひっ、ふひっ!? おっ、お願いっ、ちょっと休ませて! っというか、ティノ! どうにかしてちょうだい!!」


 目を覚ましたアリスは、ティノに懇願という名の命令を下しました。

 こちらの春が訪れるのは、まだまだずっと先のようです。


 名残を惜しむように冬の妖精が去ってゆくのを。

 見送る春の妖精。

 芽吹きの季節の訪れを、やわらかな風が告げてゆきます。


 窓の外側ーー学園の、いえ、「聖域」の向こう側に広がっている世界。

 かすかな予感。

 でも、今は。

 ここが、学園と皆が居る場所が、ティノの居場所です。


「ティ~ノ~、ティ~ノ~、ティノティノティ~ノ~」


 陽気に釣られて、イオリは「大好きなティノ」を歌い始めます。

 アリスに近寄ろうとしていたスグリを捕まえると。

 ティノは容赦なく、暗竜をクロウの上に落としました。


 目を覚ますクロウと、足を滑らせて彼と抱き合ってしまうスグリ。

 炎竜が炎を吐き、地竜が溜め息を吐きます。

 もう、どうにもならないので。

 ティノは撤去作業を手伝う為に、イオリと一緒に学園長室から飛びだしました。


 目紛(めまぐ)るしい日常。

 期間限定のお祭り騒ぎ。


 活況の時代を駆け抜ける、ティノの物語は。

 今、ゆっくりと、彼と竜と獣を巻き込みながら動き始めたのでした。


          おー! つづくかも~?

ア「…………」

ス「…………」

ア「……何よ。『雪降』とかぶっ放さないのかしら?」

ス「……そっちこそですわ。『爆降』とかぶっ放せですわ」

ア「…………」

ス「…………」

ア「別に、『イオリ玉』永久禁止とか脅されたわけではないわ」

ス「父様に、氷竜の『いいところ』を千回噛む、とか言われてなんていないのですわ」

ア「何? あなたも噛まれているの?」

ス「そんなことよりも、お互い事情があるのですから、ここは遺恨を忘れてやっていきますわ」

ア「そうね。ここは青臭い、というか氷臭いから、さっさと終わらせてしまいましょう」

ス「ひゃっこい。一回だけ我慢してやるですわ。次は、自爆覚悟で地の国まで道連れですわ」

ア「……わかったわよ。今のは私が悪かったわ。それでは始めましょう」

ス「ここからは、後日談というかネタバレを含んでいますわ。そういうのが嫌いな人は、『二行』空いた向こう側まで飛ぶですわ」

ア「向こう側では、風結がこれから書く三つの物語について話すそうね。『千文字』の呪いがないから、ここで書いてしまうそうよ。そっちも興味がないなら、最後まで飛ぶと良いわね」

ス「『聖語使い』ですが、物語的には途中で思いっ切りぶった切ったですわ」

ア「一応、『対抗戦』まで書くつもりだったから予定通りではあるのだけれど。物語の謎とかティノの目的とか、何も解決していないのだものね」

ス「そこでこれからの展開を語りつつ、『聖語使い』の次の物語を風結が書く保証はないので、色々と語っていくですわ」

ア「これからーーというと、『魔毒者』のことね」

ス「そうですわ。ランティノールは『聖語』を創った。その結果として、『魔毒者』がスケープゴートとなってしまったのですわ」

ア「そう、運命を捻じ曲げられた者たち。時代の犠牲者は少なくなるーーそれが事実だったとしても、これは明確なランティノールの咎ね」

ス「それに気づいたティノが、この『魔毒者』の問題に係わっていくことになりますわ」

ア「『聖語時代』の常識や秩序。それらとぶつかってゆく、むずかしい問題ね。結果的に、ティノが『聖域』から離れる切っ掛けになった話ね」

ス「てなわけで、解決していない『謎』について幾つか語っていくですわ」

ア「先ずは、『敵』ね」

ス「一応、『こいつが『敵』だ!』と確定するようなことは、風結は書いていないですわ」

ア「書いていないはず。書いていない……わよね?」

ス「ひゃふ。でも、特定はむずかしくないので、『スナちゃん大好き人間』ならわかって当然ですわ」

ア「『庵』の『結界』についても、役割は説明していないわね」

ス「ランティノールは、ティノを利用するつもりで連れてきたのですわ」

ア「……いきなりぶっちゃけたわね」

ス「私がボケたのにツッコミしないからですわ」

ア「そんなもの知らないわよ。ーーランティノールは『天を焦がす才能』を具えていた」

ス「『竜の国』の『サイカの里長』と同等の才能。ただ、二人には明確な違いがあったのですわ」

ア「そうね。『里長』と異なり、ランティノールは人間的な弱さを持ち合わせていた。それ故に、自らの死期を悟ったとき、迷ったのよ」

ス「結果。ティノという不安定な存在が生まれることになったのですわ。ただ、その不安定さは、可能性でもありますわ」

ア「『竜の国』を読んだ者ならわかるでしょうが、『竜の国の解放者』でティノが登場しますわ。人間であるティノが登場できる。そこに『結界』が絡んでくるというわけね」

ス「あとはマルも絡んできますわ。他にも『謎』があったような気がしますが、ここからネタバレ直行便ですわ」

ア「先ずは、ストーフグレフの『弔問台』、もとい『超問題』のメイリーンからやっていきましょう」

ス「メイリーンはベズにフラれますわ」

ア「いきなりそこからなのね」

ス「フラれたメイリーンは、『あたしより強い奴に会いに行く!!』と言って、大陸(リグレッテシェルナ)に渡ったのですわ」

ア「そしてそれに、ディズルが同行してしまったのよ」

ス「それはそれは大変だったみたいですわ。その頃、ディズルは若くして『星(聖)塊』との二つ名を冠するほどの、頭でっかちになっていて、『聖域』は大騒ぎになったのですわ」

ア「メイリーンとディズルは結ばれなかったようね。大陸(リグレッテシェルナ)で目的を得て、それぞれの道を歩いていった」

ス「それが今の『竜の国』のストーフグレフとマホマールまで続いているというわけですわね」

ア「次に、ティノにフラれたソニアね」

ス「そっちこそ、いきなりですわ。でも、ティノはイオリ(イオラングリディア)しか見ていないから仕方がないですわ……」

ア「ぷっ。あら、羨ましいの?」

ス「父様の浮気性は真性の病だから、諦めて……いると思ったら大間違いですわーーっっ!!」

ア「うるさいわね。いきなり叫ばないでよ」

ス「黙るですわ。そっちこそ、850周期の間に魔竜王を手懐けておかないから、父様に対して『子作り宣言』とかスグリがかましてしまうのですわ!」

ア「……そうだったわね。『千竜王暗殺計画』を立案しておかないといけないわね」

ス「もう良いから、先に進めるですわ。フラれたソニアは、ベズの弟子になったのですわ。変わり者が好きとかいうベズと、ソニアの『必殺技』であっちっちですわ」

ア「こちらの二人は、結婚はしなかったのだけれど。子作りはすることになったのよ。……あのときは大変だったわ」

ス「竜人が居ないのは、人種が竜の力に耐えられないから。そこでベズの知り合いの竜を総動員して、ソニアに子供を産ませることになったのですわ」

ア「初めての試みだったから、本当に危険だったのだけれど。ーー何とか、ソニアが寿命で死ぬ前に、子を『繭』で包み、ソニアに見せることができたわ」

ス「竜人は、竜と人種、どちらが身籠もっても、生まれるまで長い時間が掛かるようですわね」

ア「『聖語時代』以後、シーソニアが『聖域』を治めることになるのよ。そんなわけで、私がシーソニアの守護竜をやっていたってわけね」

ス「こっちに、シーソとかいうのが居ますわ」

ア「それは『解放者』でやるから、今は黙っておきましょう。ただ、『解放者』で大陸(マース)に渡ってしまうと話が長くなるから、どうなるかはわからないみたいだけれど」

ス「風結の予定では、『解放者』のあとに、『魔竜王篇』と『海竜王篇』を書くつもりだったのですが、あまりに長くなり過ぎるので三つを纏めることにしたのですわ」

ア「それで、『異邦人』と『聖語使い』を、『解放者』の前に書いたというわけね」

ス「二つの物語で出てきたのが、『解放者』でのファクターとなるのですわ。ケモの存在(コウが言った言葉)や『黒い魔力』がそうですわね」

ア「二つの物語には、もちろん先があるのだけれど。その『ファクター』とやらは書いたから、『二つの物語の先を書くことは必須条件ではない』とか風結がーー、ちょっと千回風結を燃やしてくるわ」

ス「ちゃっちゃと殺ってくるですわ。それでは『二行』空けてから、これから風結が書く予定の三つの物語について書いていきますわ」



ア「ふ~、少しはスッキリしたわ」

ス「燃やし尽くされて、素粒子になった程度ですから、どうせすぐに復活するですわ」

ア「何だったかしら? そうだった、三つの物語についてだったわね」

ス「風結はこれまで、『剣と魔法の世界』を主に書いてきたですわ。そこで今回は戦記物ーーの始まりの部分を、十万字くらいで書いてみるつもりのようですわ」


豚「豚族!!」

豚「豚族!!」


ア「……何か出てきたわよ」

ス「こんな感じで、文字も大きくしてみる……って、大きく表示されない? まぁ、そこは置いておいて。一人称多数視点で、主人公は邪竜を倒した男の息子ということになりますわ。邪竜をぶっ倒したら、魔物が理性と呼べるものを獲得して、大陸が色々と大変になるという物語ですわね」

ア「ちょっと大雑把すぎるけれど、国同士の戦争とか戦略とかが描かれるわけね」

ス「その次が、『千魔大戦』ですわ」

ア「まぁ、その類のものは、すでに誰かが書いているでしょうけれど、風結は知らないから、書いてしまうらしいわね」

ス「『現代ファンタジー』という奴ですわね。そして、風結はーー。小説を書く前に、初めて調べ物をするですわ」

ア「これまでやってこなかったほうが、おかしいのだけれどね」

ス「何でも、異世界の『アフリカ』とやらを調べるそうですわ」

ア「それらの国々の『魔』について調べるわけね。ただ、物語に組み込むには、それらの国々の歴史や現在の状況なども知っておかないといけないということのようね」

ス「さて、三つ目は何を書こうか、風結は迷ったのですわ」

ア「始めは、初期に思いついた物語である、『探索師』を書こうと思っていたようだけれど」

ス「次に、さらに次に、とふらふら~と何を書くかで迷いつつ、結局、『解放者』の前に、『竜の国』の千周期後くらいの物語をやることにしたですわ」

ア「あら、それなら『グリン・グロウの親友の治癒術師』の話でも良いのではなくて?」

ス「そっちは駄目ですわ。主人公である『治癒術師』が死ぬことが確定しているから、風結は『書きたくない!』とか駄々を捏ねているのですわ」

ア「今度は戦争まで書くつもりなのに、まだそんなことを言っているのね」

ス「風結のことはどうでも良いのですわ。それで、『竜の国』の千周期後は、『魔法で喜ぶのなんて、幼年学校までだぜ』なんて言われるような世界になっていますわ」

ア「千周期ーーということは、世界的な魔力異常が係わってくるということね」

ス「この物語は、『とらいあんぐるもふもふ』を書く為に、風結が思いついたのですわ」

ア「……何の話よ」

ス「そこはスルーするですわ。ーー魔法が得意な主人公。魔工技術が発達した世界では、魔法は無用の長物。そんな世界で、マッドでアレな主人公の父親が『ポチっとな』で、あ~ら大変」

ア「一日ごとに、『魔法世界』と『魔工世界』が入れ替わるようになるわけね」

ス「先に言っておくですわ。この物語はーーオチが酷いですわ」

ア「だったら変えれば良いでしょう?」

ス「そんなもの、風結に言えですわ。風結の頭の中ではもう出来上がっているから、変えるつもりはないようですわ」

ア「ーーと、長々と話してきたけれど、一つ目の物語を書く前のことね」

ス「『能力者』のバッドエンドのほうの物語を一つと、前に書いたエッセイの、6~10を今度は書くようですわ」

ア「エッセイは以前と同様に、三日くらいで消すようね」

ス「書いている内容がヤバヤバなものも含まれているから、仕方がないですわ。今回の6と7は、ちょっと過激なモノを書いてみるとか風結が言ってますわ」

ア「まぁ、過激、と言っても、そういう考え方をしたことがない人にはーーという意味でだけれど。8~10はまだ何を書くか決めていないのに、10まで書くとか言っていて良いのかしら」

ス「そこは風結を逆さにして振れば、何か出てくるでしょうから、私たちが心配することではないですわ」

ア「…………」

ス「…………」

ア「……で、どうするの? 話は終わったけれど、やる?」

ス「……そうですわね。今回は『謎空間』ではなく、『物語空間』だからバレないーーはずですわ?」

ア「…………」

ス「…………」

ア「『爆ーー」

ス「『雪ーー」

ラ「ぴゅっぴゅぴゅっぴゅぴゅ~! ぴゅっぴゅぴゅっぴゅぴゅ~!」

ア「……何よ、アレは?」

ス「……何って、通りすがりの風っころですわ」

ア「まったく、アレは風竜のようだけれど、ラカールラカとは大違いね」

ス「ひゃふ? 何を言っていますわ?」

ア「まぁ、良いわ。じゃあ、これで終わりね。ーー850周期後にそっちに行くから、氷を洗って待っていなさい!」

ス「ひゃっこい! そっちこそ、炎を食べ過ぎて大噴火でもしていろですわ!」

ア「ーーっ」

ス「ーーっ」

ラ「ぴゅ? ここまで読んでくれてありがとうなのあ。わえから風の祝福を贈り物すう」


   ふ~りゅりゅ! ふ~りゅりゅ! ふ~りゅりゅ~っ!!

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