◎第39話 最終話 “家族“のカタチ
【エリシア視点】
1日延ばした出立の日。
私は万感の思いで馬車に乗り込んだ。
短い外遊だったが、実にさまざまな出来事があった。
隣に座るリンの腕の中には2枚の素描画。
今回の開国祭最大の収穫だ。
素描画の存在を知らせた時、特別公開の日、リンは涙を拭うことさえ忘れるほど感激して見入っていたな。
思い出すたびに、無事手にできた事がうれしくなる。
”家族”か……。
この言葉が、今回の旅路の中でひときわしみ入るようになった。
毎日毎日、何事かが起こり、それを向かいにいる補佐役とともに乗り越えてきた。
全てが、リンのためだった。
あの子にとっては、思いもしない300年ぶりの父親との再開の機会だった。
半年前に父を亡くした私には、想い出の他に、たくさんの遺品がある。
だが、あの子には想い出しかなかった。
だからこそ、何としてでもあの子の手に素描画を抱かせてやりたかった。
そして、成した。
私たちはリンの願いを叶えてやれた。
またひとつ、私たちは“家族“の意義を積み重ねる事ができた気がする。
リンがいて、私がいて、アルベルトがいて、リンの腕のなかには、ウォーケン卿と肩車されたリン。どちらも、声が聞こえて来そうなほど笑っている。
これも“家族“のカタチだ。
私たち“家族“の、カタチだ。
それもこれも、アルベルトのおかげだ。
毎度の事ながら、コイツには助けられてばかりだ。
いつも一緒にいてくれて……。
ありがとう、アルベルト。
そう言えば、なぜだろう……?
コイツと舞踏会で踊った……
はずなんだが……
よく思い出せん。
なんか、その辺りの記憶がぼんやりしてるんだよな。
霞がかかったみたいに、モヤ〜ッと……
なんで……?
みんなにそう言ったら、あんまり気にしなくていいとか言ってくれたケド……。
なんだろうな……あの微妙な間は……。
心配というより、むしろ…… ものすご〜く残念そうな目で見られていた気がするぞ……。
なんでなんだろう……
馬車は静かに進んでいく。
エリシアは、その揺れがいつもより少しだけ心地よいことに、まだ気づいていなかった




