諦観主義な自己理解
ある日の朝。高校の教室は異様な雰囲気に包まれていた。終始ザワザワしている。騒がしい理由はただ一つ。「古典」のテスト返しが行われているからだ。答案を受け取った生徒は,
「っしゃあ!来た!30点」
「いや低ない?」
「やばいやばいっ!マッジでやばい!」
「それな!やばすぎる!絶対点数高くないって!」
と言った具合で色々はしゃいだり絶望したりとさまざまであった。そんな中でたった一人,一言も発さず,顔も変わらない,場違いすぎる女の子がいた。
「えっと次は、結都ー!」
「はい、ありがとうございます」
答案を受け取った私は点数を確認する。
(六十五点か……まぁこんなもんだろ)
あっさり答案を机にしまい、私はただぼーっとしていた。すると後ろから話しかけられた。私の友達の咲ちゃんだ。
「結都ちゃん、どうだった?」
「ん?まぁいい出来かな。こんなもんっしょ」
いまだにはしゃぎまくっている生徒をよそに、あっさりとした声で答えた。
「ねぇ結都ちゃん、この後次の授業で数学返されるじゃん、私絶対悪いんだよね、どうやっても点が上がらない。」
あからさまに不安そうな声だ。ソワソワしているように見える。そんな様子とは真逆な、冷静な私はこんなことを言った。
「まぁ、大丈夫だって。赤点取らなきゃいいんだし。落ち着いてこ」
余裕そうな雰囲気を醸し出している私を見た咲は、きっと不思議に思ったのだろう。
「……どうして結都ちゃんは落ち着いているの?いっぱい勉強したとか?」
「いや?程よくね。夜はしっかり寝かせていただいたよ。寝る時間削ってまでやるのもなぁ……。」
私は変わらないペースでそう答えた。正直異様に落ち着いているなと自分でも思ったぐらいだった。
「じゃあどうしてそんな冷静な感じなのかな」
そう聞かれて、私は顔すら変えずにこう答えた。
「だってなんとなくわかってるから……。」
咲は私のよくわからない答えを聞いて、小首を傾げている。
「なんとなーくわかるんだ。どうせ私のことだから、いい点数取るまでには時間がかかるだろうなってことをさ。」
咲はポカンとした顔で聞いている。周りの雰囲気とのギャップもあいまってかもしれない。私は変わらない声で続ける。
「なんかさ、ここまで生きてくると自分ってどうせこうだよなってわかるんだよね。なんかこう適当で諦め半分な感じ?でもさ、こういうやつの積み重ねで、自分のことって十分わかると思うんだ。適当で諦観的な自己理解ってとこかな。」
そう言うと、咲はさっきの数学のことなど忘れたように笑った。私はその顔を見て少し笑った。
「それに私,周りが異様にテンションが上がってるときって逆になんか冷めちゃうんだよね~。皮肉屋だよねぇ。」
私はいたずらっぽく笑った。私はテスト返しが始まってから,極力すぐそばにある小窓を開けるようにしていた。暑さがこもってたまらないからだ。
「いいね,その考え方。あっさりしていて,私好きだな。そうだよね,すぐうまくいくわけなんかないもんねっ。」
咲は自分に言い聞かせるように言った。相変わらず騒がしい空間の中で,適当で諦め半分な感じが,実は自己理解につながっていることを知ってる人なんて,二人ぐらいのことだろう。私はそう思いながら余裕そうに笑った。その後の数学のテスト返しで私は八十点をとっていたことは咲には内緒である。
ご覧いただきありがとうございます。さて,今回は,またまた「どうせ」という言葉と「自己理解」についてのお話ですね。もしかしたら結都は「どうせ」という言葉を便利な言葉だと思っているのかもしれません。いろんな側面を持っているからでしょうか,まぁ真相はわかりません。「自己理解」と聞くと,よくわからずに悩む人も多いのではと思います。そんなあなた!結都流「諦観主義な自己理解」,試してみては?それではまた次のお話でお会いしましょう。ハブアナイスデイ!




