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隠れた愛はすぐそばに

高校からの帰り,私の最寄り駅から家まで歩いていた時だった。背には夕日が白く光っていて,アスファルトに私の影を落としていた。六月ということもあってか,すこしじめじめとした暑さがあった。駅からまっすぐ歩き,唯一の曲がり角を左に曲がり,家はもう目の前だと思ったその時だった。足元の雑草が動いた。しかし風は吹いていない。もし風が吹いていたら,胸元のとれかけになっている制服ののリボンが飛ばされているはずだ。さらにその雑草の動きかたは,どこか意図されたような,不自然な動き方だった。気になった私はその雑草を手でかきわけてみた。雑草の中から淡い茶褐色の何かが見えた。

(……え,鳥……?)

 それは小鳥だった。茶色なのか灰色なのか曖昧な色の毛と羽をもち,手のひらに収まるようなサイズだった。少しスタイリッシュな鳥に見えた。私はどうしていいかわからず,ただその鳥を眺めていた。しかしなぜかその小鳥は,私がどれだけ近づいても飛ぶ様子がなかった。その小鳥はてちてちと歩いていく。どんどん私の家から遠ざかるように歩いていった。気になった私はその鳥の後をついていくことにした。私は鳥を眺めながらずっと不思議に思っていた。

(なぜ飛ばないんだ……?……もしかして。)

 私は鳥の前にしゃがみ,鳥を至近距離で観察した。

(けがして……ない。足も普通だし,羽もなんともない,どういうことだ?)

 怪我をしているから飛べないのかと思ったが,とくに怪我はしていない。鳥は私を気にすることなく,時々鳴き声を出しながら歩いていく。家からはどんどん遠ざかる。そして空の色は薄桃色に変わりだす。どこかから夕方の帰る時間を告げるような,鳥の鳴き声が聞こえた。

(これ以上はついていけないな,しょうがない。)

 私はスマホを取り出し,その小鳥の写真を撮った。小鳥は撮られていることなど微塵も意識していないように歩いて行った。その後ろ姿が見えなくなるまで私は見守っていた。

 その後私は家に戻った。すっかり夕日がオレンジ色に変わっていた。自分の部屋に荷物を置き,早速撮った写真を使って,その鳥の種類を調べた。その鳥は「ムクドリ」の雛鳥だった。本来ムクドリの成鳥は羽の部分に白い斑点模様をもち,もう少しはっきりした茶褐色をしているようだ。どおりで中途半端な色をしていたわけだ。そして,ムクドリの雛が飛ばなかった理由は,「まだ飛べないから」とのことだった。筋肉がまだ未発達のようで,飛べない雛鳥がいるようだ。

(でも,飛べない状態でどうやってここまで生きてきたんだ……。雛鳥を狙う天敵はかなり多いはずだぞ……。)

 ムクドリに関するブログなどを読んでいたところ,こんなことが書かれていた。親鳥が見えないところに隠れながら見守っていて,餌の面倒も見ている。と。私ははっとした。

(あの時雛鳥が鳴いていたのはどこかにいた親鳥との交信だったってことか……!)

 すべてが一本の糸でつながった。スマホを机に置き,ゆっくり息をつく。

(私は今日,隠れた愛情を見られたんだ……。……なんて美しい,温かい話なのだろう。)

 「結都ー!帰ってきて早々悪いんだけど,小麦(飼い犬)の散歩よ・ろ・し・く!」

母のふざけた声が1階から聞こえた。

「わかったー。...小麦,行くぞ」

猛ダッシュで走ってくる小麦を落ち着かせ,私は外に出た。私は妙な温かさを感じた。しかしそれは,じめじめとした暑さとは全く別の,優しさをもったあたたかさだった。

 


ご覧いただきありがとうございます。ポン太です。今回結都は身近な「鳥」から「愛」についての異世界に触れたようです。よく雑草の中にいる小鳥に気づけたなと結都の観察眼には驚かされますね。周りには様々な動物がいて,彼らなりの想いを感じ取れる瞬間にも,もしかしたら出会えるかもしれない,私は勝手にそう期待しながら日々過ごしております。さて次回はどんな異世界を結都は発見するのか,こうご期待です。

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