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桃の霧に包まれて

 夏休みももう終わりに近い。8月は過ぎ去り、少しずつではあるが日が短くなってきていることを感じながら、布団の上にあぐらをかいて座っていた。外では雨がしとしとと静かに降っているようだ。私はただ布団の上で座っていた。

「……」

 異空間にいるようだ。なんでこんな気持ちになるのだろうか。机の暖かい色をしたデスクライトに照らされて。ただぼーっとしていた。小麦の散歩はもう済んでいたのだ。散歩をしていた時は、雨がもう少し降っていて、厚い雲に覆われた、無機質な空だっただろうか。窓は網戸になっている。

 布団の目の前にはピアノが置いてある。私の部屋にはピアノがあるのだ。ピアノの椅子に腰かけて、静かな曲を弾いてみる。あー、こんな優雅な過ごし方、この先二度とできないのだろうな。ピアノを夢中で弾いてしまった。集中しすぎて周りなど見えていなかっただろう。

 なんとなくだった。なんとなく、横の窓を見た。息を呑んだ。驚いた。咄嗟に窓の近くへ寄った。そこにあったのは「桃色の世界」だった。ピンク色のもやがかかっているようで、桃色の雰囲気だった。さっきまで雨が降っていて、雲に覆われていたが、少し雲が薄くなって、夕焼けが出現していた。驚いた。そしてある意味狂気的な空間にも思えた。桃色なのだ。ほんとに、桃色だった。私はベランダに出た。あたりを見渡した。

「……美しいな……ここはどこだ……?桃色だ……」

 ただ見渡した。ただ見た。飛んでいる雀も、佇む田んぼも、遠く遠くに映る高い高い松の木の影も。そしてすべて桃色の霧の中で、美しく佇んでいた。

 異世界は、ココだ。異世界は、ここにしかない。異世界は、この世界すべてだ。私は強くそう思った。そして強く、そう空に願ったのだった。雨は止んだ。桃色も晴れていった。

こんにちは!今回はサクッと読めるショートな異世界を紹介しました。空からくる色は半端じゃないのですよね,空の色ひとつで世界が決まる,と言っても過言じゃないかもしれないです。ですが日々人々は上を見ることは少なく,足元ばっかりだったり,目の前の板ばっかりだったり。結都はそんな人たちのことも,感じていたようですね。素晴らしいです。皆さんもたまには上を向いていきましょう。面白いものはいつでも,どんな場所にも,存在するはずです。それではよい一日をお過ごしください。次回お会いしましょう!

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