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「そうだよね」で照らす世界

 夕方。とはいっても空はまだ水色をしていて,The,夕方!と言う雰囲気ではなかった。太陽は白い光を放っている。その日,結都は総合の授業で課外活動を行うため,高校の近くにある小学校を訪れていた。

 活動の方はしっかり完了し,駅の方へ向かおうという時だ。結都は同じグループとして一緒に活動した美来みくちゃんのことが気になった。ちょっとした好奇心だったのだろう。

「……ねね!美来ちゃんって電車で帰る?」

 気づけばそう聞いていた。美来ちゃんは少し戸惑った声で

「あ,うんそうだよー」

 優しさが前面に出たような声で言った。結都はふにゃっと優しい笑顔で

「じゃあ一緒に駅まで行こうよー!」

「え,嬉しい~!行こ!」

 二人は駅に向かって歩き出した。ここからだと10分ぐらいだろうか。結都は別に気まずいとかはなかったが,美来ちゃんはきっと今きっと,何話そうとか思ってるのかなと勝手に考えていた。結都が話のネタを山ほど持っているので心配ないのだが。早速結都は話を切り出した

「ねー美来ちゃん,おでんで好きな具とかある?」

 急に何聞いてんだと言いたくなる質問である。美来ちゃんが戸惑った様子を一瞬見せた。当たり前である。

「えーっと……大根かな」

 私の顔はぱーっと明るくなっているのだろう。

「わかる!大根美味いよな!あと,餅巾着も美味くね?」

「あ~!美味しいよね!」

 最初は少し戸惑いも見えた美来ちゃんだったが,おでんの話ですっかり和みが見えていた。

「あ,そうそう。なんか話のネタに困ったら,おでんの話おすすめよ!めっちゃ盛り上がるから!」

 それを聞いた美来ちゃんは鈴をひっくり返したかのような,そんな笑い方を見せてくれた。

「うん!今度友達に使ってみる!」

 他愛のない会話に二人とも暢気に笑っていた。結局こういいう話が一番面白かったりする。

「ねー,美来ちゃんは,何か将来の夢とかあるかい?」

 話の主導権をさらっと握っている私が問いかけた。変わらない笑顔で美来ちゃんは教えてくれた。

「学校の先生になりたいんだ~」

「え!絶対いいソレ!先生か~!美来ちゃんが先生のクラスとか入ってみたいな!」

 美来ちゃんはふにゃっと笑う。こんなかわいらしい子他にいないだろってレベルだ。

「だけど,自信はなくて……。今っていろんな子供たちがいるって聞くから生徒たちをまとめるのは大変なんだろうし……。結都ちゃんみたいにみんなを引っ張っていける力は……」

 少し力のない,抜けた声に聞こえた。私は少し気を引き締めて,美来ちゃんを見た。

「確かに今の時代いろんな子がいるから,戸惑うのもわかるよ。それに,何になるにしたってきっといろんな壁はあるんだと思う。でも,でもね……」

 美来ちゃんはうんと小さく頷きながら聞いていた。私はしっかり美来ちゃんの方を見た。

「私,美来ちゃんなら絶対大丈夫だと思う。うん,絶対!」

 一瞬驚いた顔をしていた美来ちゃんだった。私は続ける。

「だって美来ちゃん本当に優しい子だから。誰に対しても偽りなく『そうだね』『そうだよね』って言える力がある。」

 美来ちゃんは少し固まっているようにも見えた。

「でも,『そうだね』って言いすぎて,自分の想いを隠したりとか,無理してないかなってたまに私思ってたのね,実は。でもそんな心配も振り払われるぐらい美来ちゃん優しかったから……。私も救われてるの。てか絶対私以外にも美来ちゃんの優しさに救われてる子はいると思う!言わないだけで」

 美来ちゃんは少し口角を上げて笑った。私もきっと上がっていただろう。

「『そうだよね』って言葉さ,嘘で言ったとしても,言われた側は居場所を得た!って感じられるすごい言葉だと思うの。そして美来ちゃんの言う『そうだよね』には,なんかその『包容力』みたいなのがある気がしてさ。知らず知らずのうちにいろんな人のこと包み込んでいると思う。もちろん無理して自分のことを隠していたりとかするのかもしれないけど,美来ちゃんがしているその行動は,絶対いろんな人を救うきっかけになっているはずよ!だから,『そうだよね』って本気で言える美来ちゃんなら,どこに行っても大丈夫よ!……なんかこう考えると,肯定しかしないって言う……自分がちょっとだけ我慢して受け入れるのも捨てたもんじゃないよね~!」

 いろいろなことをひとまとめに,私は話した。

「……ありがとう結都ちゃん。めっちゃうれしい……」

 目を細めて,美来ちゃんは笑っていた。

「あ……もうすぐ駅ついちゃうね……。それはそうと,美来ちゃん,飴玉よかったら食べる?実はリュックについてるキーホルダー,チャックついててね。開けることができるんだ。中に飴あるけどどう?」

「えっ!すごいね!そんなのあるんだ……」

 私は美来ちゃんに飴を渡した。そして二人は笑いながら駅の改札を通った。


 

 

今回は「受容」についての異世界ですね!今の時代,「人に合わせすぎてはだめだ」なんて耳が痛いほど聞くのではないでしょうか?しかし結都は,そればっかりでもないことを知っていたようです。魔法の言葉は存在するかどうかはわかりませんが,「救う言葉」ならいくらでも存在します。きっとまた,結都が教えてくれるでしょう。こうご期待です!

 

宣伝ですが,「ミラーメトロ」の方も連載中です!更新は不定期となりますがよろしかったらそちらも閲覧していただけると嬉しいです!

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