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第5話 「そういうところやぞ」
私は、何度もあの夜を繰り返している。
「悪いところがあったら……直すから」
私の声は、震えていた。
対して、耳に当てたスマホ越しの男の声は、酷く冷淡で。
「そういうところやぞ」
待って。
待ってよ。
私は慌てて走った。
とにかく急いで、部屋へ向かう。
夜道の中、弾む息。
早い足音。
肩にかけた鞄が、揺れる。
耳元で、男は言い続けた。
「お前さ、いつも帰るの遅いやん」
「言われないとわからない?」
「自分の胸に手を当てて、よく考えてみろよ」
自宅のマンションに着いた。
鞄の中を引っかき回し、鍵を拾う。
鍵穴に差そうとしたところで、
扉は開いていることに気づいた。
どく、と心臓が鳴った。
恐る恐る、ドアノブを回す。
扉を……引いた。
そこには、誰もいないワンルームがあった。
「………………」
何かを言いかけ、私は口を噤んだ。
言われないとわからない。
私は、最適化から最も遠い人間だった。




