60.料理人、にらめっこする
しばらくすると、ドワーフたちがゾロゾロと帰ってきた。
その手には魔石をいくつも抱えている。
「これで乗せてくれるだろ?」
「いや……そんな約束は――」
「のーせーてーくーれー」
ドワーフたちの顔面の圧に俺は近くにいたゼルフを差し出す。
顔面の圧ならうちのゼルフも負けてられないからな。
「おい! 俺を使うなよ!」
「頼む! お前しかいないんだ!」
「そっ……そうか!」
満更でもない顔をしていたゼルフはドワーフと目が合うと、すぐに真顔になる。
ドワーフも対抗するようにゼルフを見つめた。
しばらくそんな状態が続く。
「お前も中々やるな……」
「そっちもな」
中々良い勝負をしていたようだ。
これで決着がついたのだろうか。
ゼルフは何も話していなかったし、ただのにらめっこをしていたようにしか見えなかったが――。
「よし、兄ちゃんと見つめあったから乗らせてくれるんだろ?」
「ふぇ!?」
まさかゼルフと見つめあったら、キッチンカーに乗らせてもらえるルールになっていたとは聞いてない。
俺はドワーフに近づき詰め寄った。
「そもそも初めに乗った分も支払ってもらってないですよ?」
「はぁん!? それはお前らの歓迎で――」
「俺らって歓迎されたか? みんな自由に飲んでいた気がするけど」
「くっ……」
ドワーフって思ったよりも優しい性格なのか、詰め寄られると怯むようだ。
俺も伊達に社会の波に流されていないからな。
ある程度は抵抗する力はある。
最後は諦めて社畜として流されていたけどね。
『ハルトが怖いぞ……』
「あれが本性なのか……」
「おい、お前ら飯抜きにするぞ?」
俺がニヤリと笑うと、ゼルフと白玉は黙った。
「わかった! 今回の魔石はお前たちに渡す。だけど次は……ってなんだこれは?」
ドワーフたちは俺の食べかけのうどんに視線を集めていた。
「ハルトが作ったかき玉うどんだ」
『美味かったぞ!』
またゼルフと白玉は余計なことばかり言う。
絶賛してくれるのは俺も嬉しいが、絶対言うタイミングを間違えているからな。
ジーッと俺を見つめるドワーフたち。
今度は俺とにらめっこ対決か……?
いや……これは絶対に作らないといけないパターンだろ。
だって――。
「ドワン、お前も食べてるじゃないか!」
食べるのが遅いのか若手ドワーフが呑気にまだ食べていたからな。
他のドワーフが食べているって知られれば作らないわけにはいかない。
「はぁーめんどくさいことに……いや、これもチャンスか」
俺はある提案をドワーフたちに持ちかけることにした。
この際、魔石を集めるにはちょうど良い案だからな。
「ここで期間限定の商売を始めるつもりだったんだが、どこかの誰かさんたちの影響で営業もできなくなったからな……」
「うっ……」
「このキッチンカーは魔石で動いているから、もう一生商売ができない。あー、悲しい。料理が食べたければ――」
「狩ってきます! お前らいくぞおおおお!」
「「「うおおおおおおお!」」」
ドワーフたちは地面に魔石を置き、またどこかに行ってしまった。
ただ、俺の作戦は成功したようだな。
すぐに詐欺とかに騙されそうだけど、あいつら大丈夫だろうか。
「さぁ、魔石を集めようぜ!」
「やっぱり俺より怖いだろ?」
『オイラたちも逆らっちゃダメだぞ!』
なぜかゼルフと白玉にビビられているような気もするが、これも生きるために必要なことだからな。
俺は魔石を集めてガソリンへと変換していく。
パッと見ただけでも30個近くはあるから、すぐにガソリンが満タンになるだろう。
いくつか変換したところで、一度エンジンをつけてみる。
「あれ……中々ガソリンが溜まってないな」
ガソリンメーターのメモリが2つぐらい動いた程度だ。
ネフィル山の魔石だと一気に満タンになったんだけどな。
「なぁ、魔石によって価値が違ったりするか?」
「あぁ、魔石にもランクがあるからな。ここの魔石は少し黒ずんでいるだろ?」
言われてみればネフィル山で手に入った魔石よりもモヤがかかったような色をしている。
ネフィル山の魔石は鮮やかで澄んでいたからな。
冒険者ギルドで魔石を売った時は全てゼルフに任せていたが、どうやら細かなランク設定があるらしい。
どうやら相当魔物を倒さないとガソリンは満タンにならないようだ。
「ひょっとしたらネフィル山が一番移住に向いているのかもしれないな」
「さすがにあんなところに住んでたら、命がいくつあっても足りないぞ?」
言われてみたらあんなところに住みたいとは二度と思わない。
「その時はゼルフが守ってくれるだろう」
ゼルフがいたから楽しい思い出にもなっているが、地味に命懸けだったからな。
「最悪ここには……」
チラッと足元にいる白玉を見ると目が合った。
『オイラ、北京ダックになるのか?』
「いや、さすがに家族は食べやしないぞ」
聖鳥の白玉とネフィル山で出会ったが、こいつもあそこで生活できるぐらいだから相当強いのだろう。
食べられないと言われて、白玉は嬉しそうに飛び跳ねていた。
「なぁ……俺も家族か?」
静かな空気の中、真面目な顔をしてゼルフは聞いてきた。
少しずつ近づいてくるから、俺はゼルフの無愛想な顔の圧に押されそうになる。
まさか俺とにらめっこをしたいのだろうか。
しばらく見つめあっていると、少し寂しそうにゼルフは顔を背けた。
「そうか……」
ゼルフが顔を背けるということは、俺も中々怖い顔をしているのだろうか。
「俺は家族じゃないのか……」
「んっ……? ゼルフは家族よりも相方……戦友って感じだけどな」
「本当か!?」
顔がぐるりと回ると、俺に詰め寄ってくる。
さっきまで落ち込んでいたのが嘘だったのかと思う変わりようだ。
「あぁ……たぶんな?」
俺がその場で頷くとゼルフは嬉しそうに笑っていた。
まさか俺からどう思われていたのか気にしていたとは気づかなかった。
白玉はどちらかと言えば、ペットみたいだから家族で問題ない。
だけど、ゼルフが家族かって言われたら、家族よりも戦友だろう。
「そっか……ははは、戦友か! 俺が戦友だって!」
しばらくゼルフは嬉しそうに口ずさんでいた。
俺の顔が怖いわけじゃなくてよかった。
ゼルフやドワーフと比べたら、俺って可愛い系だからな。
「ゼルフ、魔石を入れてくれ!」
「よし、俺に任せろ!」
その後も二日酔いを忘れるぐらいゼルフはよく動いていた。
残っている魔石を全てガソリンに変換すると、キッチンカーのガソリンタンクは半分くらいになった。
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