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5 アイテムボックスとシリュウの弓

引き続きケルテクラウン近郊の森にいる僕です。



一角ウサギは綺麗に皮と肉と内臓と血と魔石に分けられ、内臓と血はメグさんが焼き払いましたとさ。

なんでも低級の魔物の内蔵と血は価値が低い上に放置しておくと他の魔物を引き寄せるのだとか。


「それではアイテムボックスについて説明します」


きました、本題。


「アイテムボックスは手のひらを亜空間と繋げる魔法です、これのコツさえ掴めば使用することができます」


と、言いながら右手に持っていた魔石を仕舞い、左手から出した。

仕舞うというか、見ているだけなら消えているように見える。

母が水属性の魔法を使った時は手が青く光っていたが、ザクさんの手は紫色に光っていた。

無属性は紫に光るのか?いや、シズクをテイムした時は普通の白い光だったしなぁ。


「出し入れすることができる回数、大きさ、量などは本人の魔力と連動しています。また、仕舞う条件として体の一部で触れる必要があります。慣れればこのように手袋越しでも使えます」


と説明しつつ、一角ウサギの皮と肉も一度持ち上げ仕舞ってしまった。


「では、シオン様の練習用のアイテムを確保するために次のポイントに向かいましょう」


今仕留めた一角ウサギは《赤き竜の爪》のものなので、僕がアイテムボックスに入れて持って帰るには自分で仕留めなければならない。

というのも、これはグランが教育の一環として他人の物と自分の物の区別をつけるため、という名目で提案したものであるが、これを聞いて張り切ってしまった男が一人。


『私が仕留めれば、それはシオン様が仕留めた物ということ』


そう、シリュウである。

ウキウキで朝から弓の準備をしていたシリュウに


「シリュウの弓は戦闘用じゃないの?狩りに使っていい物なの?」


と質問をしたが、


「ありとあらゆるものを仕留めてこそ真の武芸者というもの」


と、訳のわからない回答をされてしまった。

森に来るときにおんぶしてもらわなかったのは、シリュウが弓セットを背負っていたからでもある。

帰りは僕のアイテムボックスに入れていくつもりらしいが、弓セットが入る容量がなかったらどうするつもりなのだろう。多分、考慮していない。相変わらず僕への信頼が謎に高い。



数十分歩いているとまた、先ほどのような開けた場所があり、大きな牙を生やしたイノシシが3頭きのみを食べていた。


「あの見た目で草食なんだ?」

「う〜ん、草食というか雑食ですね、あまり自分で狩りをする性質はないですが、動物の死骸を食べていることはあるそうです」


とジークさんがイノシシの魔物、ボアについて説明してくれる。

皮も肉も魔石も一角ウサギよりも価値が高く、そろそろ中級者という初心者パーティーが、群れから逸れた1頭を討伐するといったレベルの魔物らしい。

といった話の間にシリュウの弓の準備が終わったそうで。


「シオン様、攻撃の合図を」


いや、合戦じゃないんだからとも思ったが、シリュウとはそういう男だとわかりきっている僕は素直に合図を出した。シリュウは期待に満ちた表情をしていた。


「てー!」

「はっ!」


僕の声に驚いたボアたちは一目散に逆方向に逃げ出したが、たまたまこちら側を向いていた1頭だけは翻す前にシリュウが放った矢が正確に眉間を射抜いた。


ボアが倒れるドサッという音の後に静寂が流れる森の中。

そのままならかっこいいのにシリュウは褒めて欲しそうにチラッチラッとこちらを伺っている。

ハイハイ、スゴイスゴイ。


ジークさんとシリュウは周辺の安全確認に行き、ザクさんにはボアの解体をお願いしたので、切り株に座ってメグさんと待機だ。

メグさんは森での散策が疲れたようで、ブーツを脱ぎ、自分の足をマッサージしている。

流石に2時間歩きっぱなしは僕も疲れた。

この世界は地球と同じで1日24時間である。午前10時にギルドを出発したのでそろそろお昼か。冒険者のご飯ってどんなんだろ〜とか考えていたらメグさんから話しかけられた。


「シオン様、貴族のご飯ってどんなの?」

「どんなの?う〜ん。めちゃくちゃ豪華とかじゃなくて、主食の他に必ずおかずとサラダとスープがついてる感じかなぁ?」


前世で読んだ異世界の物語ではご飯が不味いとかバリエーションに乏しいとかが定番だったが、ロクセン王国では比較的美味しいご飯が食べれる。主食だってパンやジャガイモだけでなく麺も米もあったりする。


「でもそれを毎日食べれるんでしょ?羨ましいなぁ。こっちはそんなの大型の依頼がうまく行った時だけだよぉ」


これまで説明などが多く、森や魔物に詳しいジークさんやザクさんばかりが喋っていたが、メグさんが寡黙なわけではなかった。おそらく、森での移動であまり体力を使わないように黙っていただけなのであろう。

良い意味で気安いメグさんであった。

ジークさんとシリュウが見回りから戻り、ザクさんの作業がひと段落ついた。メグさんが内蔵と血を焼き払ったところで昼食となった。

冒険者飯を食べても良かったのだが、今日のお昼はグランが準備してくれて、ザクさんのアイテムボックスに入れてもらっていた、我が家(シルバーバーグ侯爵邸)のシェフが作った特製サンドイッチだ。


「どうぞ召し上がれ〜」

「うっわぁ〜凄い豪華なサンドイッチ〜!いっただっきま〜す!」

「すいません。いただきます」

「ありがとうございます。いただきます」


ハイテンションなメグさんに、紳士的な男子二人。僕はこの3人が気に入ったが、これで3人にも僕が気に入ってもらえただろうか。シリュウは黙々と他3人の倍を平げた上に僕の食べきれなかった分まで食べた。それでバスケットが空になったってことは、朝の時点でグランは来るつもりなかったな?

昼食後、魔道具のコンロの使い方を教えてもらいつつ、お茶を嗜み、休憩をした。

のんびりしていたのは僕だけで、4人は常に周囲に気を配っていたみたいだった。


休憩後、やっとアイテムボックスの練習の時間になった。


「亜空間をイメージして、手のひらに魔力を流します。手のひらが紫に光り、数字が見えたら成功です」


数字が見える?何言ってんの?と思ったが目の前に数字と文字が現れた。思わず驚いてしまった。


「初めは驚きますよね。数字が空中に浮いているんですから。その数字の少ない方が現在の保管量で、多い方が最大容量です。」

「ちなみに最大容量って普通はどれくらいなんですか?」

「あ、やっぱりシオン様は大きい数字が出ましたかね?レベルにもよりますが最低は1000くらいから最大だと500万くらいでしょうか?ちなみに私は20万です。シオン様も500万とかですか?」


と聞かれたので笑って誤魔化しておいた。驚いたのは数字が空中に現れたからではなく、現れた数字と"文字"が


0/♾️


だったからだ。

うゎ、ちぃとだこれ。

サンドイッチが入っていたバスケットも、シリュウの弓矢セットも、ボアの皮と肉と魔石も全部僕のアイテムボックスに収納しても全然余裕なのでした。


帰りはシリュウのおんぶで眠ってしまい、気がついたらグランもいて、侯爵邸の玄関だった。

晩御飯の食卓で、今日の冒険の話を父様も母様も兄様も姉様もニコニコ顔で聞いてくれましたとさ。

次回投稿予定日は2/9(月)です。

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