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30 シオンの発想、ルークの知恵

この話で母様の執事が女性であることが決定したので12話のお風呂のシーンを変更しました。

「シオンの祖父…。そうか、大公爵殿か。シオンは会った記憶はあるのかい?」


王様からの問いかけに首を振って答える。

残念ながら僕は、この前の旅以前にケルテクラウン(の周辺)から出たことがほぼない。

それこそ1歳の頃に王都に行っていたらしいが、それらしい記憶はない。

グランが補足してくれる


「確かに、ぼっちゃまがお生まれになってから、侯爵家の皆様方が侯爵領を離れたのはヴァレン様の記念式典のみですな。その時に王都でお会いして以来、侯爵家の皆様方は大公爵様にはお会いしていらっしゃらないかと」


顎に手を当て考え込んでしまう王様。


「ふむ、では今年の夏の交流会のあと、秋にでも大侯爵領に行けるようにウォルトに言っておこう」


言質ゲット、シオン君は深謀遠慮の策士であるからしてここは畳み掛けよう。


「できればあのワイバーンに乗ってビューンって行きたいです!」

「ワイバーンか、なるほど、前向きに検討しよう」


…子供のわがままを注意しない大人たちが怖い。


---------


「…と、シオンから提案されたが、ウォルトはどう思う?」


ここは侯爵邸食堂、現在侯爵家一同で昼食中である。

問題はゲストとしてロクセン王国、国王のヴァレン・バイオレットローズ様も共に昼食をとっているという点だ。

午前中の希望の丘での王様との会話が長引いたため(その後に、王様も一緒に徒歩でケルテクラウンに戻ってきたため)王様と父様の会議は午後に持ち越されることになった。


「ワイバーンでの移動ですか…。シオン、ヴァレン様が許可を出してくださるのであれば私は構わないが、デメリットの説明はしておこう」


父様は食事の手を止め、説明を始めた。


「シオン、いいかい。ワイバーンは基本的に、操縦する騎士の他に一人しか乗せられないんだ。

上空の移動は危険だ、シオンは問題ないだろうが、連れて行けるのは屈強な男性だけだぞ?

そうだな、たとえば、私やシリュウ、ギルバードやヴィッグなどだろうな」


それを聞いて、思わず『うげぇ』って表情をしてしまった僕は悪くないと思う。

僕の表情を見て、少し悲しそうになった父様は置いておいて、コレはかなり困ったぞ?

同行者が父様やシリュウであることが問題なのではない。

グランもメイミもシズクもフブキもいない旅なんてつまらないことこの上ないからだ。

僕が考え事をし始めたのを見て、話題は他のことに移り、王様を交えた食事会は和やかに進み終わった。


食事会終了後、僕に話しかけてきたのはジュストだった。

ジュストだけ飛竜部隊に乗せてもらって先に帰ってきたらしい。ジュストが連れて行った人たちと馬は後で王都の軍人さんが送ってくれるのだとか。


「あ、シオン様、セレーヌさんを見かけませんでしたか?」


セレーヌとは母様の執事であり、20代後半の男装の麗人である。

普段はパリッとしていて母様の身の回りの世話を完璧にこなす一流の執事ではあるが、書類整理の時に指を怪我してしまう(19話参照)ちょっとだけドジっ子さんでもある。

ジュストとは同年代で仲がいいらしい。


「セレーヌ?わかんないけど母様と一緒じゃない?母様なら自室に戻ったよ?」


ジュストは僕にお礼を言い、母様の自室に向かった。

ん?後ろでグランとメイミがちょっとニヤニヤしているぞ?なんだ?お子様の僕にはわからん。



大人たちは本格的な会議が始まると侯爵邸の会議室に集まり出した、会議の内容は当然フライヘイヴンのことである。

あの街のことは大人たちに任せてシオンくんは自分の問題の解決にあたろう。

ふふふ、この頭脳には解決策が閃いているのだ。

というわけでやってきました談話室。

僕についてきたのはグラン、メイミ、シズク、フブキ、ルーク兄様、アクア姉様、ヴェルグ、シアン、バーツ、プラム。そして飛竜部隊隊長のアランさん。

いや、多いな!

食事会の終了間際、僕が何かを思いついたようなホクホク顔をしているのを見逃さなかったルーク兄様。

兄様がついていくのであれば自分もついていくという姉様。

そしてその専属の方々。

極め付けは王様が気を利かせて


「ワイバーンのことは彼に聞くと良い」


と貸してくれたアラン隊長!助かる!

というわけでこの大所帯になったのでした。


でもやることは思いついたことを絵で知らせるだけなんだよなぁ。

何を隠そう、このシオン君、絵だけは壊滅的にダメなのである。

だから、この大人数に絵を描いているところを見られると…。

は、恥ずかしい!


それでも完成した絵を見せると全員が空気を読んで何にも言えないでいる。

その中でも発言をしたのは空気を読めないこの男でした


「コレは…カモメ4匹が1斤のパンを運んでいるところですかな?」


さすが兄様の執事ヴェルグである。これは褒めてはいない。


「えっと、こんな感じでみんなが乗った箱をワイバーンに運んでもらえないかなって…」


こうなると当然視線はアラン隊長に向く。

彼はしばらく考えた後にこう結論づけました。


「ワイバーンの能力的に4頭でこのように四方から運べば重量的には問題ありません。しかし、空中でこのような箱の中に入っては中の人間は10分といられないでしょう。我々はワイバーンに乗り飛行をする際、風属性の魔道具を使うことによって向かい風を感じなかったり、空気が薄くても呼吸がすることができるのです」


これを聞いた大体の大人とアクア姉様は落胆してしまったが、ルーク兄様の目は輝いていた。


「シオン、そのスケッチブックを貸してごらん」


僕の絵を切り取り隣に置くと、兄様は絵を描き出した。

兄様は美大生かのようにするするとペンを走らせ、リアルなワイバーンと近未来的な箱を描き出した。

これは、タイヤのない大型バスかな?同じ方向を向いた椅子に座れるようになっている。

ちゃんと内部構造まで書かれているのが兄様らしい。


「風の魔法石を応用して空気抵抗と重量の調整、そして空調設備をつければ大丈夫だと思うんだ」


アラン隊長を筆頭に兄様の説明にどよめく大人たち。

しかし、さっきのヴェルグのお返しに、と、今度はグランが鋭い指摘を行った


「なるほど、完璧なお考えです。誰がどうやって作るのかを除けば、ですが」


この発言には僕も兄様も落胆のため息をついた。

しかし、ヴェルグ、グランと続けば今度は俺の出番だとばかりにバーツが発言をする


「昨年までケルテクラウン職人ギルドの長だったドワーフのおっさんが引退して暇してるって話じゃなかったか?」


このバーツの発言にグランとヴェルグがニヤリとする


「では、彼へのアポはバーツ殿に任せましょう」

「あぁ、彼は私たちが辟易するほどの偏屈だからな」

「は、謀ったな!グラン殿!ヴェルグ殿!」


執事たちのやり取りをよそに目を輝かさせる子供達3人(僕含む)


「グラン、その人だったらこの箱を作れるかな!?」


僕が期待たっぷりに尋ねるといつもの好々爺の笑顔で答えてくれた


「えぇ、とても腕のいい職人且つ魔道具技師だと聞いております。彼が納得さえすれば問題なく作れるでしょうな」


この言葉に嬉しくなってしまい、3兄弟によるトライアングルハイタッチが発生するのであった。

次回投稿日は7/18(土)です。

次回は31話「感謝の気持ち」です。

お盆期間の8/11(火)〜8/16(日)まで毎日投稿することにしました!

こちらもお楽しみに!


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