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富士山麓での夏季定期訓練終了

 道上達は、小銃班の攻撃における射撃と運動の連携、突撃等の戦闘動作、個人用露天掩体(たこつぼ)の構築、外哨等野外勤務の基礎を、富士山麓の草原で、終日反復訓練した。北富士演習場梨ヶ原は、海抜千メートルの高原で、空気は乾燥して朝晩は冷涼であるが、草原には木陰に成る様な樹木はなく、直射日光は道上達に容赦なく降り注ぐ。涼気が残る演習場の早朝、朝露に濡れた月見草の群落が草原を黄金色に染めている。

 銃を担った一団が、演習場を真っ直ぐに貫いている道を、富士山に向かって隊歌を歌いながら歩いている。班長が音頭をとり、班員が前後段に分かれて交互に歌う。---隊歌「緑の戦線」1班前段、2班後段、隊歌はじめぇ~。あしめ(雨)にうたれして、アカシ~アの~、は~な(花)のこぼれるぬかるーみを~、お~もい(重い)どろぐ~つ(泥靴)踏みし~め~て、す~すむ(進む)みどり~(緑)のせ~んせんよ~(戦線)ーつづいてにばーん(二番)、はいっ。今日で10日も、雨ばかり。いつになったら、晴れるやら。馬も弾庫も濡れ鼠。青い大空、恋しいぞ。

 1分間180歩の行進速度に合わせて、4列縦隊の前4列が前段を、残りの3列が後段を歌う。道上達は、厰舎から訓練地までの移動間に学生班長の音頭により、いくつかの隊歌を大声で唄った。かくして、訓練班、同期生の一体感、戦友意識が高まる。大地を駆け巡り、歩哨に立ち、たこつぼを掘り、照明弾の元で尺取虫の様に敵陣に肉薄する。この様な訓練を積み重ねながら、道上達は陸上要員に求められる体質やセンスを身に付けて行く。

 また、同期生だけの野営生活は、理屈や概念を越えて、男同士の友情を育む良い機会である。こうして、17日間に及ぶ夏季定期訓練は終了した。全く下界は暑い。じっとしていても汗が滲んでくる。最終日は、逗子から防衛大学校まで、24㎞を徒歩行軍して24:00(深夜12時)頃帰校。防衛大学校が、小原台がこんなにも素晴らしい所かと、しみじみと思った。

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