移り行く季節
帰校時の姿と言えば、異体そのものである。泥にまみれ、汗にまみれ、目だけがギラギラと光っていたのであるのであるから。宿営地では野戦の原始生活であるが、学生舎に戻り文明社会に復帰する思いがした。17日間の演習場での集中訓練を経験して、道上鉄也の意識には、卒業後、30人単位の部下を持つ小隊長になる、それ以上の中隊、大隊、連隊、旅団、師団長になると言う様な意識が芽生えた。こうして、道上にとり2度目の夏休みが訪れた。
しかし、この年の夏休みは短く、8月15日には、小原台に帰校しなければならない。慌ただしく季節は夏から秋に、秋から冬へと移り変わっていく。師走に入ると朝夕の冷え込みは、流石に冬の厳しさを思わせる。雪交じりの冷たい1日で室温は摂氏2~3度位。冬休み明け翌日からは、早速平常通りの学生生活が再開された。大隊週番学生の目標は、「裟婆気の除去」である。何の抵抗も無く、いきなり、平常生活へと飛び込んで行ける。
休暇は文字通り休暇で、学生生活の延長ではない。嫌だなぁと言う心とは別に、行動は無意識の内に行われている。習慣とは、恐るべきものなり。惰性と言う奴も又危険なものであって、油断大敵である。3月1日からは学年末の試験が始まる。日頃の学習がきちんと身に付いているかをチェックするものであり、余程の事が無ければ落第はしない。防衛大学校は全ての費用が国費で賄われていると言う特徴から、留年はたった一度しか許されていない。
きちんと授業を受けていなかったり、自習時間を有効活用出来ていない、あるいは不真面目であったりすると、赤点を取り、落第してしまう事になる。学年末試験が終わると、学校全体の進級会議が行われ、教官の側から進級に相応しい生徒と相応しくない生徒の仕分けが、再度行われる事になる。
話は変わるが、防衛大学校には、立派な図書館がある。2階建ての図書館に給水タンクを兼ねた時計塔は、防衛大学校小原台キャンパスのシンボルとなっている。そこには、新聞、雑誌閲覧室がある。




