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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第4章 -Not over as long as I'm here.-
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第2話「水面下」





雪が降る中、私は腕時計の日付を見た。1月の12日。

今日が何の日かと言えば、私とボリスでとある組織の拠点の襲撃をアスタリカ軍上層部から命じられた。

報酬は400万。半神である私とボリスの二人にそれぞれ与えられた。つまり、必ず成功させてこいという事。


「ここだ」


「ずいぶん古びた施設ね」


作戦中は無線を使う事を禁じられている。傍受を避け、極秘裏に作戦を行うため。

貸与された武装は少し古めの拳銃であるM9。私としては愛用していたグロックのG17がよかったけど。


「とても人がいるとは思えないな」


「それでも事前の諜報部隊から数名の科学者の出入りが確認されてる。最低でも一人は捕らえないと」


「もし情報が漏れてたら?」


「その時はその時」


とはいえ、あまりにも静か過ぎる。不気味で、薄暗く埃っぽい建物内。

部屋のドアをそっと開け、拳銃を構えながら室内を探索する。時折軋む床の音で、存在がバレるんじゃないかと焦りを見せた。


「こういうのは不慣れか?」


「空を飛んで敵機と交戦してる方がよっぽど楽」


「そうか。ここには何も無さそうだ」


淡々と捜索を続けていると、地下への入り口を見つけた。誰かが入った形跡があり、私とボリスは顔を見合わせて頷く。

恐らくここに誰かが逃げ込んだか、移動したか。


「どうする?閃光手榴弾バンを投げ込むか?」


「敵に存在を知らせてどうするの!」


「ならゆっくり入る。行くぞ」


扉を少しずつ開けた時、地下から数人の男の声が聞こえた。どうやら私達には気付いていない。

突入の為に階段を降りていくにつれ声も近く大きくなってくる。3~4人はいそうだ。


配置スリー安全装置解除トゥー突入準備ワン


突入ゴー!全員動かないで!」


私の合図で突入し、拳銃を構えながら静止を叫ぶ。人数は4人いた。

一人が逃げ出そうとした所をボリスが撃ち、もう一人が襲い掛かってきた所を相手を氷漬けにして対処。


「クソッ!!」


更に一人が私へ殴りかかってきた。応戦をして膝蹴りを軽く食らわせて怯ませ、手を掴んで後ろで拘束する。

その時、私の右腕に鋭い痛みが走った。何かと思えば注射器が刺さっていて、刺したのは最後の一人。


「あとはこれを!」


その注射器をポケットにしまい、最後の一人は何かを投げて逃げ出した。何かと思えば発煙手榴弾で、炸裂して部屋中が煙に巻かれる。

右腕を押さえながら壁に背を付け、換気扇のスイッチを探す。数秒してスイッチが見つかり起動させれば、ゆっくりと部屋の視界が晴れていく。


「・・・やられた」


「チッ。まあいい、二人は確保できた」


ボリスが無線機のスイッチを入れ、すぐに迎えのヘリコプターが到着して、私達は遠く離れた空軍基地へと運ばれる。

初の地上任務だから仕方ないとは言え、ライアーがいたらこうはならなかったとは思う。


「ボリス、もっとカバーしてくれればこうなる事は」


「違う、そっちがもっと素早く拘束してれば」


お互いに意見がぶつかり合うけど、今更言った所で仕方が無い。作戦そのものは成功したんだから、それでよし。

私としてはこの作戦で得た400万はこの一連の戦いが終わった後の結婚式に使いたい。


「で、あの神様は最近どうだ?」


「世界各国へ行ってて忙しそうだよ」


「そうか。今度また扶桑へ行ったら話でもするか」





自宅に戻れたのは翌日の夜で、今日は配信はせずにスタジオで美羽とゆっくり過ごす事にした。

登録者数増加で増えた収入の一部は美羽へお礼として渡している。一日当たり2000円程度。

パッと見て少ないように見えるけど、別で給料もちゃんと発生しているから決して少なくはない。


「由比ちゃん、その傷どうしたの?」


「転んだ時に出来た切り傷」


本当は極秘裏に行った作戦の傷だけど、美羽はそれを知らない。だから適当にごまかす。

朝奈のような怖いくらいの察しが無いからごまかせる。


「お大事にね。明日は配信するでしょ?」


「うん」


「ホラゲ実況入れとくね」


「お願いやめて」


ホラゲ実況は本当に嫌だ。あんな苦行のような時間は私にとっては地獄だ。

視聴者からは悲鳴助かるとかプロの悲鳴って言われる事が多いけど、不本意でしかない。


「こういうの入れないと登録者数増えないよ?本当に」


「わかった。わかった・・・やるから・・・」


落ち込む私を尻目に、美羽はスケジュールを書き込んでいく。

明日はどっかで友香と一緒にケーキでも食べて心を癒す時間を作ろう。



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