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群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第4章 -Not over as long as I'm here.-
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第1話「その時まで全力で」




大切なお知らせ。


一文目にそう記載された投稿を、私はブックマークをした。特に意味は無い。あるとすればただ単に忘れないように。

心境は複雑だった。なんせ私のライバーとしての歩みに大きく関わっていたから。


「由比、そろそろ配信始めるよ?」


「うん」


今日はスタジオでの配信。フライトシミュレーターの機材を使い、訓練飛行の配信をする。

配信が始まってすぐ、AIを相手に空中戦の訓練を始めた。淡々と敵機を落としていくだけで、特に何も話していない。


[ガチ集中してて草]


[無言で落とす鬼神]


そんなコメントが右端に流れていく。空中戦の訓練が終わって着陸をして、私はようやく口を開いた。

そこからはようやくいつもの配信になる。はずだった。

一つのコメントが目に付く。音羽イブキの引退についてのコメントだ。


「イブキの引退の日の前日に、一つ重大イベントがあります」


コラボの告知をする事にした。内容はほぼ決まっていて、このスタジオで1時間のミニライブをする。

日付は12月の30日。つまり2日後だ。


「笑って見送りたくて、二人で内容を決めました」


いつの間にか私は涙声になっていて、目からは自然と涙が溢れてくる。

別に死ぬわけじゃないのに、どうしてなんだろう。


「ごめんなさい。配信切ります」


私はそのままエンディングを再生する。マイクをしっかり切ってからエンディングが終わるまで待った。

今日の目的であるミニライブの告知は出来たから大丈夫だ。


泣き止んでから今の配信のエゴサをすると、他にもつられて泣いた人もいるみたい。

特に炎上しているわけでもなくて、ミニライブを全力で応援すると言っている人が大多数。


「由比、落ち着いたらケーキ食べよっか」


「うん・・・」





私が1ヶ月半ほど前に戦闘をして破損したMIASは未だ修理中。

理由としては、強い攻撃を受けた時に本体で断線したから。新しい部品に交換するだけではなく、その不具合の防止の為にテストをしている。


戦いはその間休止だ。なら、私に何が出来るか。

そう、それは配信をする事である。イブキがいなくなる悲しみを歌にして晴らしたい。


みんなへの謝罪をしてすぐに歌い始める。今は家のマイクじゃなくて、スタジオの本格的なマイクだ。

天使に触れてという曲を全力で歌う。卒業は終わりじゃないと、自分に言い聞かせるように。


一曲目が終われば、すぐに別の曲を選ぶ。イブキの為に歌いたいから、ファンのみんなにどんな曲がいいかを聞いた。

するとすぐに私の気持ちが伝わって、色々な曲を教えてくれる。


[イブキちゃんのオリソン歌ってあげたら?]


[イブキちゃんのオリソンを一緒に歌うとか]


[それだ オリソン]


確かにイブキの曲を一緒に歌うとかもありだ。うん、そうしてみよう。



それから私は3時間の練習をした。歌も振り付けも、しっかりとイブキに合わせられるように、ライブとかMVを見ながら。

翌日は少し頑張りすぎたからか、喉が掠れ気味だ。今日は配信はせずにゆっくり休もう。

歌詞を覚えながら、振り付けの練習を配信外で。


「由比、お昼食べよ」


気が付けばお昼を過ぎていて、友香が顔を覗かせて弁当を持ってきた事をアピールしている。

明日の夕方から3時間、イブキとの最後のコラボ配信。それがずっと頭から離れず、私は友香に打ち明ける。


「イブキは私の中学の時の親友なんだ。同時に、初めてコラボをした相手で、ライバルじゃなくてアドバイザーで」


あの銀髪の容姿に、羽と音符を合わせた特徴的なトレードマークの入った衣装は私にとって馴染みが深い。

中学時代の親友であり、初めて絡んだ相手。だから寂しさを感じるんだと、友香に打ち明けてから理解する事ができた。


「すかいらいVの予定には明後日に最後のライブがあるけど、そこで他の個人勢や同期とのお話があるだけだね」


つまり、イブキにとっても私は特別であるという事。言われてみれば、コラボを持ちかけてくれたのはイブキの方から。


「どうせなら最後は楽しくゲームしたり歌ったりとかしてあげればいいんじゃない?」


「うん。そうする」


実はライアーからクリスマスプレゼントで満天堂のボタンを貰っていて、それを使って一緒にゲームでもしよう。

美羽がイブキとして活動する最後の時なのだから。


一方でイブキは最後のライブへ向けて忙しそうにしている様子がツブヤイターに投稿されていた。

最後へ向けての動きが事細かに呟かれていて、それを応援する人達が沢山いる。


[私も100万に到達できる日が来るのかな]


そう呟いた時、誰かからすぐに返信が来た。


[出来るよ!!空奈ちゃんなら!!!ファイトぉ!!!]


相手はイブキだった。思わず嬉しくなってすぐに返信をする。


[ありがとう!!頑張って100万目指すから!!!]


そんなやりとりの後、私は再び練習を始める。全力で。



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