表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
群青の空へ  作者: 朝霧美雲
第三章 -The fate of the white-winged demon will change drastically-
72/135

第8話[ 後編 ]「私は、あなたは誰?」



数時間の事情聴取から解放され自宅に戻った私は、シャワーを浴びてからライアーが作ってくれたご飯を食べながら小さくため息をついた。

なんだかとても疲れていて、すぐにでも睡眠を取りたいところだった。


「大丈夫か?」


「うん。今日色々あったから疲れた」


「明日はMIASマイアスのテストだから早めに寝て備えるか」


「そうする」


夕飯が終わってから、30分だけ音声のみの配信をする。

ファンのみんなは優しくて、今日大変な事があった事を伝えると『お疲れ様』とか『しっかり休んで』と言ってくれる。


「明日からまた少し忙しくなるから、配信頻度は下がっちゃうかも」


私の声はいつもより疲れ気味だ。それはファンのみんなにも伝わっているからか『大丈夫?』とコメントが流れた。

大丈夫だよと答えて私は微笑んだ。ふとコメントの中に以前コラボしたリア友のイブキが居て、私は思わず名前を呼ぶ。


「イブキちゃんいる」


でも挨拶をしていっただけで、それからコメントは見られなかった。

30分の配信はすぐに終わり、私は寝る準備をする。


「配信終わったか?」


「うん。大丈夫」


ベッドで横になると、ライアーがいつもの様に横に居てくれる。

こういう時はやっぱり甘えたくなるけど、今日は少しだけ我慢して明日に備えるためにすぐに目を閉じた。


「由比、おやすみ」


「おやすみ、ライアー」


そして、思考が睡魔に飲まれていく。






次に目を覚ました時、私は何も無い空間にいた。

何も無いけど、目の前には膝を抱えて座り込む女性。それはなんだか私と瓜二つだけど、幾つか違う点がある。

一つは何も着ていない事。シャツはおろか下着すら着けていない。二つ目は髪の色が紫がかった青色で、私の髪とはかなり印象が違う。


そしてもう一つ。彼女が顔を上げた時、私は恐怖感を覚えた。深い空のような色ではなくて、血のような赤色の瞳。


「あなたは誰なの?」


「私は」


彼女は数秒間を置いて誰?と尋ねた。それと同時に私は異変を覚える。

突然自分の名前が思い出せなくなった。私は・・・誰?どうして急にこんな状態に?


「あなたは誰?」


破壊之天空神ストアリテーグ


彼女がそう呟いた時、ストアリテーグという言葉が脳裏に刻み込まれた。

私はそんな名前なんだろうか。




「違うッ!私はッ!!」


ハッと身体を起こして、全力でそれを否定した。私は霧乃宮由比だ。


「由比!どうした!」


「ら、ライアー・・・」


ただただ怖かった。あれは明らかに私であり、私じゃない。彼女はそんな存在だった。

手は震えていて、呼吸もかなり乱れている。不安で一杯になった私をライアーはそっと抱いてくれた。


「ライアー・・・私はまだ死にたくないよ・・・」


震える声でライアーに不安を打ち明けていく。次々と涙が溢れ出てくる。

私はどうなってしまうんだろう。せっかく運命を変えられたのに。ちょっとずつ幸せになっていたのに。


「大丈夫だ。由比は・・・相棒は、俺が絶対守る」


「私を・・・助けて・・・」


「ああ」




私が起きた時間はまだ深夜の2時半だ。まだまだ朝まで時間がある。

少しだけ、私はライアーに顔を近づけた。


暗闇の中ライアーはそれに応じてくれて、私とライアーは唇を重ね合わせた。

高鳴る心臓の鼓動のせいか、それとも極度の緊張からか、部屋に響く時計の秒針の音の間隔はとても長く感じる。

1秒ってこんなにも長かったっけ。


「落ち着いたか?」


「だいぶね・・・」


ようやく私は笑顔を見せる事ができた。

今夜の二人の確かめ合いはこれまでにして、明日のMIASのテストに備えなきゃ。


「由比」


「何?」


「俺たちが戦うのは、俺たち自身の為だ」


ライアーの戦う理由は、私とライアー自身の未来のためだ。

でも、戦うのは私達だけじゃない。朝奈や静音、友香、幸喜。それだけじゃなくて、全人類が。

みんながみんなの未来を望んでいる。



そうだ。これも一つの答えで、人類が手を取り合う時なんだ。



複雑だけど、今こうしてみんなが協力してくれる。

私だけが犠牲になる未来は、変えられたんだ。きっと。


2021/9/26 ストリテール→ストアリテーグへと変更しました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ