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第三話

宜しくお願い致します

 サラが、ステラの家に迎えられてから、ひと月ほど経つと、少しずつだが、体もふっくらしてきて、笑顔を見せるようになってきた。


まだ知らない人と、話す時はどもる時はあるが

家にいる時は、そんな事も無くなっていた。


「ステラさん、今日は何を手伝えばいいですか?」

サラは、とても感謝していて、いつでも店の手伝いをしようとしてくれる。


「そうさね、私は、サラが居てくれるだけでいいんだけどね」

「そんな訳にも、いきません....」

「そうかい、ならパンを焼いてみるかい?」

「いいんですか?」

サラは嬉しそうに、ニッコリ笑う。

「ああ、もちろんさ。じゃあ、こっちにおいで」

パンを焼いている部屋へ入ると、

「サラも手伝ってくれるのか。こりゃ助かる」

ロビンも喜んでいるようだ。


三人は、仲良くパンを作り始める。

すると、サラが

「ほんとの、家族みたい.......」と呟く。

サラの呟きが、聞こえたようで

「本当の家族さ。私はサラを娘だと思ってるよ。ほら、お母さんって呼んでごらん?」

ステラが、そう言うと、サラは恥ずかしそうに

「お母さん.....」と俯きながら小さく呼んだ。

「まぁ、嬉しいねぇ。生きててこんな

嬉しい日はないよっ!」

すると、ロビンも

「ステラばかり、ずるいじゃないか」

「お父さん....」

ステラもロビンも、嬉しさで目をうるうるとさせている。三人は、はたから見ると、本当の親子のように仲が良く見える。


「サラがうちに来てくれて、私は嬉しいよ。

森に行ってなけりゃ、サラに出会わなかったからね....」

サラは黙ってしまう。捨てられた日の事を思い出してしまったみたいだ。

「ごめんよ。嫌な事思い出させちゃったみたいだね...」

サラは、首を横に降り、

「いいんです.....」と答えた。


まだ、自分が、どこの誰とも、何をされてたかも話していないのだ。それでもステラは、いつか自分から話してくれるまでは待つつもりでいる。


「サラ、パンが焼けたよ。店に並べとくれ」

「はい、お母さん....」

サラは焼きたてのパンを店に並べ始める。


朝の時間という事もあり、店に客が来はじめた。

「サラちゃん、焼き立てのパンを一つちょうだい」

「はい....」

「サラちゃんは、可愛らしいね。ほんとに、ステラの親戚なのかいっ?」

常連のおばさんが、ステラをからかう。

「違うよ。む・す・め・だよっ!ねっサラ?」

「はい.....」サラは微笑む。


「天使みたいだよ。家の息子の嫁にどうだい?」

すると、店の奥で休んでいた、ヒューが耳をピクッとさせ、

「わんっ!わんっ!」と鳴いて抗議しているようだ。


「残念だったね。サラのナイト君のお許しが出なかったみたいだね」

ヒューはいつも、サラにピッタリとくっついて、守ってくれているようだった。サラが、ヒューの頭を撫でるとくぅ~ん。と可愛らしく鳴いた。

「恋人同士みたいだね....」とステラが呟く。


「そうそう、サラ、今日は満月だから、あまり外に出るんじゃないよ」


この国、グリーンアルトでは、西の魔女と東の魔女がおり、ひと昔前、満月の日に西の魔女が子供や若い女性を連れさっていた。しかし、これを見かねた初代王が、王家に手厚く迎える事にする変わりに、連れ去りを辞めるという契約を結んだ。

西の魔女に会ったら、心臓を渡せ。

東の魔女に会ったら、笑顔を渡せ。

という言葉が今でも伝わっており、満月の日には今でも、不吉な事が起こると言われている。

特に夜の街は、店も早くに閉まり、人は居なくなる。そう、サラの捨てられた日も満月だった。


店も一段落し、夕方になると

「今日は、そろそろ、閉めるかね」

「そうだな。もう客も来ないだろうしな」

ステラとロビンは店じまいを始める。

「サラは、部屋で休んでおいで」

「はい、分かりました」

サラは、部屋へ戻る。ヒューも一緒について来ると思って、部屋で待っていたのだが、なかなか、現れない。こんな事は無かったので

心配になり、店へ戻ると

「お母さん、ヒュー知りませんか?」

「いや?一緒じゃないのかい?」

「はい。部屋に来なくって.....」

「えっ、外に行っちまったのかね?」

「どうしよう.....」

サラが街の外に出て、探しに行こうとする。

すると、ロビンが、サラの腕を掴み

「ダメだ。もう暗くなってくるから街には人が居なくなる。危険だから行ってはダメだよ」

「でも.....」

「なーに、ヒューの事だから、

直ぐ戻ってくるさ。サラは部屋に戻ってな」

「はい.....」

サラは仕方なく部屋へ戻り、ヒューを待つ事にした。


外も暗くなり、夕食の時間になる。

「サラっ、ご飯が出来たよっ。降りといでっ」

ステラが大きな声で、サラを呼ぶ。沈んだ顔で、サラが降りてきた。

「サラ、ヒューはきっと、帰って来るよ。

サラのナイトだろ?もし帰って来なかったら、明日朝早くから、皆で探しに行こう」

不安は拭えないが

「はい。分かりました」と了承する。パンも殆ど、喉を通らず

「ご馳走様でした.....」と早々席を立つ。

ステラは何も言わなかったが

「サラにとって、ヒューは心の拠り所だからね。本当にどこ行っちまったんだろう....」

「明日探しに行こう」

「そうだね」と、ため息をつくステラだった。


サラは部屋に戻ると、なかなか落ち着かなくて

窓を開け、空を見上げると、綺麗な満月が昇っている。

「ヒュー、どこに行ったの.....」


遠くで、ヒューの鳴き声が聞こえたような気がしたのだった。


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