1話 のんびりソロキャン配信
ーーとあるダンジョンの第1層にて
『ポチ』
「お、回ったかな」
ーーチャット欄ーー
"ういすー"
"こんばんはー"
"おつ~"
配信を付けるとさっそく視聴者の数が50人ほどとなった。
うんうん、今日も良い感じだな。
俺の名前は千川太一、元攻略者で現在はダンジョン配信をやっている者だ。
同接は常に50~100人ほどで、決して人気配信者というわけではないがほどほどの人気は得ており、わりとこの数字に俺は満足している。
『カチッ』
俺は持ってきた焚き火に火をつけ、その上にやかんをセットした。
『ゴトッ』
「よし、準備完了」
俺の配信は基本的にのんびりとソロキャンをするだけであり、いわゆるバリバリの攻略配信などとは違う。
そのためモンスターなどとは滅多に戦わない。
はずなのだが……。
『グォォオオ』
「なんだ?まだ1層なのにドラゴンの鳴き声が聞こえるな」
通常だと、ダンジョンの1層にドラゴンなどの高レベルモンスターはいない。
いるとしても20層や30層、到底1層にて良いレベルのモンスターではないはず。
「他の人も来るかもだし、あのドラゴンは俺が狩るか」
ーーチャット欄ーー
"くるか!久々の本気!"
"元上位攻略者の力みせてくれ"
「おいおいやめろって皆んな、そんな力今の俺にはないって」
申し遅れたが俺はその昔、攻略者の中でも一握りしかなれないSSランクにいた事がある。
もちろんSSランク内では最下位なのだが、その時は"剛拳"という異名もあったくらいには強かった。
『ブォッ』
「お、ちょうどいい、向こうから来てくれたか」
『グォォオオオ』
狩ろうかなんて思っていたら、俺のソロキャン拠点の目の前にそのドラゴンはやってきた。
「ふぅ、なかなかの大きさだなレベルは……35ってところかな」
『パキパキ』
俺は持っていたカメラ用の三脚を素早く組み立てて、その上にカメラを置いた。
「じゃあ皆んな行ってくるね、応援よろしく」
ーーチャット欄ーー
"いってらっしゃい!"
"伝説再び!"
"千川プロの狩りを見れるとは!"
"怪我だけはしないでね"
ありがとう皆んな。
俺はスマホでチャット欄の温かさを再確認し、チャット欄音声読み上げモードのボタンを押してスマホをポケットにしまい、ワイヤレスイヤホンを装着した。
「【リミットボーナス】解放」
『キュイーン』
俺がそう言うと、右手につけていたスキルリングが青い光を放ち出した。
『かしこまりました、IDをどうぞ』
「スキル名"剛拳"」
『承認しました、強大なスキルですので対象に狙いを定めてお使いください』
「ああ、わかってるよ」
SS級指定スキル"剛拳"。
最高ランクのスキルであり、俺の十八番のスキルでもある。
能力はシンプルで右手と左手を鉄をも砕けるほどに強化するスキル。
そしてこの拳はありとあらゆる攻撃を凌ぐ盾としても使える。
『ゴオオオ』
ドラゴンは向かってくる俺に気がつくと、青い炎を口から吹き上げた。
『ジュオオオ』
「ほぉ、ブレスまで撃てるのか」
俺は飛んできたブレスを"剛拳"を発動した右手を盾にして防いだ。
ーーチャット欄ーー
"ひええ、素手でブレスを防いでるよ"
"厳密には素手ではなくスキルで防いでるぞ"
"相変わらず剛拳は凄い力だな"
「はは、皆んな詳しいな」
『シュンッ』
効かないと見るやドラゴンはブレスをすぐにやめてしまった。
おいおいせっかく配信が盛り上がってたのに、なんて事するんだよ。
『グオオオオオ』
そうしてドラゴンはブレスが効かない俺にタックルを仕掛け始めた。
お、今度は突進か!これで近づく手間が省けるな。
ーーチャット欄ーー
"勝負アリ"
"千川プロの勝利でござるな"
"近づいてくるとかアホすぎ"
「はは、皆んなそんな事言うなって、まぁその通りなんだけどね」
『グオオオオオ』
「いくよ皆んな、【奥義】デュアルインパクト!!」
『ズドォン』
俺は向かってくるドラゴンの頭にタイミングよく、右手と左手を同時に振り下ろし脳天を吹き飛ばしドラゴンを気絶させる事に成功した。
『シュウウ』
「よし、討伐完了!」




