繋ぐ家族
目を覚ます。窓が曇り結露している。冷たい空気でスッキリと目を覚ます。カラスの鳴き声が響き渡る。一回からの香りに鼻を研ぎ澄ませる。今日の主菜はスクランブルエッグで、副菜は、糠漬け?汁物はコーンスープだ。糠漬けは珍しいけど、スクランブルエッグとコーンスープの組み合わせならきっと主食はあれだ。お腹がなる。
一階に行くとお母さんがご飯を用意してくれている。「おはよう」お母さんの暖かい声だ。「おはよう」と僕も笑顔で返す。お母さんが僕の頭を見て笑う。戸惑いながら頭に手を伸ばす。思ったよりも高い位置で髪に触れ思わず笑ってしまう。「これは僕の人生で1番大きい寝癖かも」と誇らしくなる。よほど面白かったのだろうお母さんが泣きながら笑っている。そういえば美穂ちゃんがまだ起きてきていない。「そういえば美穂ちゃんは?」と尋ねると焦った顔で2階へ駆け上がる。安堵した顔で一階にもどり美穂ちゃんのご飯を用意する。トンッ、トンッと美穂ちゃんが階段を降りてくる。「おはよー」美穂ちゃんが僕を見て笑う「ユウキ今日の寝癖やばい」お腹を抱えながら僕に言う。「そのまま学校行ったらめっちゃ驚かれんじゃない?」といたずらに僕を笑う。「ちゃんと治していくから」といい朝ごはんをかき込んですぐ洗面所に向かう。僕の髪はクセがすごくて寝癖がすぐには治らない。いつも寝癖を治すために美穂ちゃんより先に起きてきているのだ。美穂ちゃんは今日センター試験を受けてくるらしい。僕より一足先に玄関に向かった。僕は美穂ちゃんの努力を知っている。この1年間部屋にこもってずっと勉強していた。おせっかいかもしれないけど伝えたかった。「美穂ちゃん試験頑張ってね。」美穂ちゃんは少し涙を浮かべ、何かを思い出したような表情をする。眉間に皺がよる。涙を堪えながら「ありがとう、ユウキは大切な家族だよ」と言った。手で涙を拭い「行ってきます」と家を出た。
まるで、最後の別れを思い出すような。でも晴れやかなそんな表情だった。
今日はパパとママの命日だ。2人で天国に行った。きっと1人じゃ寂しかったから2人で話し合っていったんだ。
お父さんが起きてくる「おはよう!ゆうき!今日は寒いなぁ!」朝から元気いっぱいなお父さん。お母さんが言う「あなた後10分で出ないといけないけど間に合うの?」お父さんはびっくりした表情をする。多分僕も同じ顔をしていただろう「やばい」僕とお父さんは慌てて準備を進めた。何とか予定の時間に間に合った。
道中パパが僕に聞いた「好きなスポーツはあるのか?」僕は答えた「野球とか?」「おっ、そうかぁ!野球か、!どこの球団が好きなんだ?」そんなたわいもない話、僕の事を一つ一つ大切に教える。
パパとママのお墓についた。最後に体温を感じたのはいつだろうと思い返す。遠い昔のようだ。静かに手を合わせる。お墓に触れる。冷たくて硬い感触が2人の死を実感させる。堪えることはできなかった。お父さんとお母さんが僕の肩を抱き寄せてくれた。暖かい。
お父さんとお母さんは僕の肩を抱きながら、パパとママの話をしてくれた。以前パパとママに会い、僕の話をしてくれたこと。
パパとママは僕のことを、誰よりも人のことを考えている子だと話した。目立つことや派手なことは嫌いだけど、誰かのためになるのなら進んでやる。そんな強い子であると。そして最後にこの子が1番家族を愛していると。
僕は息の仕方がわからなくなるほど泣いた。きっとひどい泣き方だったろう。ママとパパが僕を見てくれていたこと。ずっと戦ってくれていたことを思い出す。お母さんとお父さんの温もりがママとパパに重なる。
お父さんが続けた。「俺はこの話を聞いた時、この子はすごく辛いだろうと思った。きっと優しいこの子は周りが悲しまないように生きているのだと。好きな漫画の続きを見るためやエビフライを食べるためなんかじゃない。ただ家族を笑顔にするために立ち向かっているのだと。暗闇に進みつづけるこの病気を生きたいという自分の望みではなく生きてほしいという家族の望み1つで突き進もうとする君の強さと脆さに俺は言葉が出なかった。その後1人になってしまった君の絶望はきっと計り知れなかっただろう。君はきっとそれでも亡くなった家族を思い突き進んでいた。そんな君を俺は救いたいと思った。家族のため、誰かのためじゃなくていい優樹は優樹の人生を生きれるように。」
心にあった色んなごちゃごちゃと絡み合った感情が解けていく。そうか、僕は僕を生きれていなかったのかもしれない。ここから先、僕は僕の幸せを見つけていこう。流れる涙を、止めようとはせず枯れるまで流した。日が暮れ始める。お父さんの顔が太陽で赤く染まる。僕の心が救われる。朗らかな笑みに。
帰り道で美穂ちゃんを乗せて帰った。どうやら試験は上出来だったらしい。その目はこの先の輝く未来を見ている。
夕飯は美穂ちゃんの好きなもので彩られていた。お父さんがテレビを流す。「っ果発表ー!!」食卓が華やかになる。甘辛いヤンニョムチキンの匂い、酸味のあるチヂミのタレが香る。みんなの笑顔が食卓を彩る。今日は少し肌寒い。笑い声が響く。賑やかな食卓だ。
僕らは今日、家族になった。
見ていただきありがとうございました!
これでこの話はお終いです!
スクロールしていただくと私のこの作品への想いが載っていますが、苦手な方、余韻に浸りたい方は見ない方がいいと思います!
長いお話にお付き合いいただきありがとうございました。
皆さんにとっての家族とは何でしょう?血のつながりや思い出など様々あるでしょう。しかし、そのどれもそれが無ければ家族じゃないってことはないと思うんです。想像しうる家族の定義のようなものをどんどん引き算していくことで家族とはなにか?という漠然とした問いに輪郭を付けたいと思い書いた物語です。




