家族
僕は目を覚ます。長い夢を見ていた。見知らぬ女性の声が聞こえる。僕は起きれたのだ。
長い夢から覚めたあと、何もわからないまま僕はあの場所へ行く。家族みんな泣いている。気づけば僕も泣いている。目は霞み、鼻はつまり、口の中が少ししょっぱい。今日の夜ご飯は豪勢なものが出るようだ。僕の好きなハンバーグやエビフライ、オムライスも出るみたいだ。夜が待ちきれない。楽しみだ。
家族と一通り話したあと、2階にある自室へ行く。少し空いた窓。夕暮れに染まり朱色になったカーテン。大きく息を吸う。
ああそうか、ここが僕の部屋だ。すごく居心地がいい。明日もここにいたい。そう思いながらターコイズブルーの寝具で統一されたベッドで横になる。
枕からホワイトリリーの柔軟剤が香る。窓から気持ちのいい風が吹く。目を瞑る。深い深い眠りに入る。
目が覚めたのは家族の声。優しく包まれる声にゆっくりと意識が戻る。夜ご飯が出来たようだ。
気づけばあたりは暗くなっている。まだおぼつかない足取りを優しく見守ってくれている。ありがとう。大丈夫だよ。
一階へ向かう階段。揚げ物の香ばしい匂い、お米の芳醇な香り、それに混じったコーラの匂いが流れてくる。
居間へ行くと家族が揃っている。さっき見た時とは違う。暖かい気持ちだけを感じる。僕の心も温かくなる。匂いが詰まる。
食卓に着くと家族の1人が僕への労いの言葉と共に乾杯の音頭をとる。慣れた口調に太い声で。
もう1人は優しく僕に微笑みかけている。この視線が僕はここにいてもいいとそう思わせてくれる。そして、目も合わせずスマホを見ている1人がいる。
そんな4人の食卓だ。目の前には豪勢な食事が並び、豊かな香りがする。それを取り囲んで会話をする。幸せを噛み締める。これが日常だ。ずっと続いてほしいとそう願う。
食事前にスマホをずっと見ていた1人は食事前も食事後も一切言葉を発さず、冷たい視線だけを僕に送って部屋に入って行った。
僕も、しばらく談笑したのち自室へ行った。
ベッドでうつ伏せになりさっきの事を思い出す。深くため息を吐く。今までのことを思い出しここからだと自分を奮い立たせる。
そんなことをしていると突然、僕に冷たい視線を送っていた家族がドアを開けてきた。
目にはいっぱいの涙を溜めている。眉間に皺を寄せ、震える声で「私はお前をお兄ちゃんだとは思わない」と僕に言った。彼女が携えている拳は震えている。
僕は悲しさと納得と不安を抑えながら「ごめんなさい。」しか言えなかった。




