あいつの正体
ありえねえ。ありえねえぞこんなの。なんでこうなった。
つい最近まで俺がこいつをいじめてたってのに。
なんで今は俺が殴られてんだ?
「ぐは」
みぞおちに一発。顔は避けてるな。器用なこった。
仲間だったこいつらまで裏切ってサクと一緒に俺をイジメだした。
「今日はこのくらいにしとくよ。でも、まだもう少しお仕置きが必要だね」
サクたちはそういって帰っていった。
ズキズキ痛む腹や脇にムカつきながら、俺は家路を歩き、考える。
どう考えもおかしいだろ。あんなガリガリの弱虫が、一気に強くなってケンカでこの俺をねじ伏せやがった。しかもどんなに殴ってもビクともしない。殴った感触もおかしかった。
絶対なにかある。
俺は進路を変え、サクの野郎の帰り道に先回りした。
「いたな……」
サクを見つけた。おおよその住所は知ってる。
しばらくついていき、あいつの家までついた。けっこうでかい。
あいつが玄関を開けて中に入るのを見届けてから、俺は忍び込めるところを探した。
「お」
すると、家の裏手に大きなプレハブがあった。家と同じくらいのでかさで、外壁は黒塗り。ちょっとした工場みたいだ。
家の中にはあいつらがいるはずだからまずはここを調べる。
ドアは不用心にも開いていたから、そこから忍び込んだ。
中には、車やバイクがあった。父親の趣味か?
ジャリ。
なにか、動く音がした。足音か。やば。
俺は逃げ、ドアノブに手をかける。だけど。
「開かねえ!」
「誰かいるの?」
「あ、すみません間違え……」
俺は声の主に苦しい言い訳をしつつ振り返る。
「は?」
そこにいたのは、サクだった。
さっき家に入ったんじゃ? いつの間に?
「不法侵入だよ。山本君」
大人の男の声がした。
天然パーマで眼鏡をかけたひげ面のおっさんがいた。
「まったく、学校でもしょうがない子だが、ここまでくるとはね。サク。つれておいで」
「うん。父さん」
俺はサクに首の後ろを掴まれ、子猫みたいに持ち上げられた。なんて力だ。やっぱおかしい。
ガガガ。
突然、床が開き始めた。サクの父親がスマホみたいなものをつかってる。
少しすると、地下へ続く階段が現れた。車やバイクのガレージというのはカモフラージュだった。
俺はサクに運ばれ、地下へと降りた。
地下室は研究室といった感じの場所。無機質な金属の壁にはいろんなコードが張り巡らされている。
そして、大きな扉の目の前にたどり着いた。サクの父親はそこを開く。
「ひ」
思わず俺は声を上げた。
そこには無数の大きな人形がずらっと並んで立っていた。すべて目をつぶって、服は着てなくて、頭の中の機械がむき出しで、管で繋がれている。そして、サクの姿をしていた。
「サクはね。自殺したんだ」
「……え?」
「君のせいでね。家で首を吊ったんだよ。私はそれが受け入れられなくてね。サクをつくったんだ。ここにあるのはすべてサクのアンドロイドだよ」
何を言っている?
「私は元々そういう研究をしていてね。サクが長い間休んだ時期があっただろう? その間に仕上げたのさ」
じゃあ、今俺の首根っこを掴んでいるのも。学校で俺をいじめてきたのも。
「やっぱりそうだ! あいつが俺より強いだなんてありえない! インチキしやがったな!」
思わず口走ってしまった。
「君はほんとうに救われないね。状況を読めない知能も絶望的だ」
「は? おい、なにするつもりだよ」
「ここで調教してやろう。安心したまえ。いずれはそうしようと考えていたところだ。君の分のアンドロイドは用意してある。念のために君の両親の分も。実生活には支障はないよ。君がいなくなっても、誰も気づくことはない。私の寿命が尽きるまで苦痛を味わい続けるといい」




