第九話 最強の助っ人登場! やりすぎたかも知れない
いちおう、この関連話は、これでおしまい。
でも、この別キャラクターどうしを一つのネタで使うのは便利ですね(笑)
病みつきになるかも。
もう一人の怨霊対処可能な人物、山本さんが来ることが決定するまで、それから二ヶ月かかった。
来るって話が、こっちに来てから、さらに飛行機と船の接続が悪く、一週間遅れで山本さんが到着。
「はじめまして、俺達がやってる仕事が捗らないので、そちらの会社に連絡入れてもらいました。技術関係でもない山本さんに要請入れたのは……まあ、それは、今夜にでも現場へ行ってもらえば、理解できるでしょう」
お互いに紹介しあい、互いの名刺も交換したが、裏の仕事のため、この名刺を使うのは、お互い、無いかも知れない。
宿へ、山本さんを案内し、そこで業務内容……つまりは裏仕事、怨霊退治である……を通知し、こちらの能力を明かす。
「俺のほうの能力も明かすとしよう。実は俺自身には、霊能力らしきものは何もない」
驚きだ。
てっきり、実家が祓い屋だとか神職の家系だとか、そういうことだと思っていたので、これは意外だった。
しかし、それに続いて彼が話したことに、俺達は二度目の衝撃を受ける。
「しかし、俺には特殊な力というか……俺の歌声に力があるという方が正確かも知れないな。実は、俺の歌声は、得体の知れない邪神を喚び寄せるんだ」
にわかには信じられないと俺が言うと、
「まあ、どちらにせよ今夜、実態が分かる。ただし、これだけは念をおしておくが、俺が歌いだしたら、君も、そちらの蒼月さんも、耳と目を塞ぎ、決して聞くな、見るなよ。歌う俺自身には何も聞こえないし見えないんだが、今までの経験で、歌う相手や周りの者たち、特に霊が見えるとか声が聞こえるとか、そういった霊能力が高いものほど、ダメージが大きいようでな。ひと目でも、一瞬でも、見るな!聞くな!だ」
どうやら、俺達のような霊的関係とは全く違った能力らしいことは理解した。
そして、夜も更けて、俺達は浜辺へ。
いつものように、まずは蒼月さん。
下級霊たちを集団で消し、あるいは昇天させていく。
手慣れてきているのか、およそ一時間くらいで、大半の下級霊を消していた。
風が変わってきたと感じ、蒼月さんに声をかけ、俺と交代。
今度は怨霊クラスの対処である。
俺は、当たるを幸い、パンチやキックで、下級霊に対して、それほどは多くないだろう怨霊に対処していく。
二時間もやっていると、さすがに息切れがしてくる。
時刻も丑三つ時に近い。
残っている怨霊をパンチ二発で消してやり、俺は山本さんや草月さんのいる浜の方へ戻る。
「さて、これからは一番厄介な、祟り神クラスの登場だ。数は多くはないが、さすがに神の名がつくだけあり、俺でも対処が難しい。アイツらを任せたいが、山本さん、大丈夫かな?」
俺は最後の確認をする。
山本さんは、こう言って、浜辺へ歩いていく。
「どこまで通用するかは、やってみなきゃ分からんがね。少なくとも、今から最低でも一時間、君ら二人は耳と目を塞いで、そこへうつ伏せに寝ているのが最適位置だと思う。いいか、絶対に見るな!聞くな!」
そう言うと、波打ち際まで歩いていき、息を大きく吸い込む山本さん。
そこからは、俺と蒼月さんは、何も聞いてないし、見てない。
いや、嘘をついた。
聞いてはいないが、俺は最後の方を一瞬だが、見てしまった。
あれは一体、何なんだろう?
霊魂や悪霊、祟り神など、あれの前には存在できないだろう……
それほど異質だ、この世のものとは思えない存在だ。
白状しよう。
俺は生まれて初めて、恐怖という感情をおぼえた。
あんなもの、俺にも蒼月さんにも、対処できるものではない。
少なくとも、人類含む地球の生命体とか、そういうものが対処できるとか、そういう、この世界の原理や、霊魂含む、あの世の原理とかが通用するような存在じゃないことは、あの一瞬で魂に刻まれた。
山本さんという存在は、歌で、あの異質存在を喚び出すという。
俺は理解した。
山本さんが、霊能力を一切、持たないこと。
これは自衛本能だろう。
あんなものを喚び寄せるなど、実態が見えてしまったら、即、気が狂う。
山本さん自身、気づいてないのが救いなんだろうと思うが、この人は、存在自体が最終兵器だ。
この人が、その気になって人類を破滅させようとしたら、多分、簡単に実行できるだろう。
全世界同時中継のメディアに出て、思いっきり歌を歌えば良い。
多分、その歌が聞こえる範囲に、生命体はいなくなるだろう、人間も、その他の動物も、恐らく数時間も歌えば植物すら。
俺は、山本さんが、この大日本に生まれてくれて心底、感謝している。
戦時中の国に生まれてでもいれば、下手したら、敵も味方も、まとめて全滅させる力を、この平和ボケした大日本が抱えているのは、宇宙が与えた幸運以外の何物でもない。
あまりに突出した力を持つ山本さんにより、その夜に出現した霊も祟り神も、きれいさっぱり消滅。
あまりに強い力のため、次の日からの山本さんの出番を考える俺達。
何とか山本さんをコントロールしようとしたためか、けっこうな日数がかかってしまった。
しかし、これでも俺と蒼月さんのコンビだけでは絶対に終わらない案件のため、早すぎる解決といえば、それも正解。
最終的に、祟り神の数が思っていたより多かったので、出てくる奴は全て、その日のうちに消滅させていたが、それでも半年近くかかった。
最終日に、残っていた下級霊や怨霊、祟り神の残滓を、山本さんが全て消滅させて、その最終日は早く宿へ戻れた。
その次の日、俺達が、念の為と思い、浜辺へ確認に来てみると、その浜には夜半すぎになっても、丑三つ時になっても、なんの霊的出現もなし。
霊的には、都会の方が下級霊が多いほど、この島に霊は全くいなかった。
そして、それ以上なのは、俺や蒼月さんが対処すると、その地は数10年から100年は霊が出なくなるが、山本さんが対処した(歌った、とも言う)この島には、霊の痕跡が全く残っていない。
まるで、掃除機と雑巾かけを二重で実行したみたいに、この島には二度と悪霊も祟り神も、低級霊の一体ですら出てくることがないと確信できるくらい、きれいさっぱり霊の痕跡が消えていた(遺骨はあるのだろうが、遺恨も何もない、きれいな骨だけだ)
軍衛隊のトップからは、是非とも入隊してほしい!
なんなら、技術大佐の階級で迎える、とも言われたが、俺達3人は断った。
俺と蒼月さんはもちろんだが、俺自身の感想としては、山本さんが入隊しなかったのが奇跡と思える。
もし入隊していたらと思うと……
島から帰って、数日後。
俺と蒼月さんは、表仕事の報告は帰社後すぐに済ませていたが、今日は裏仕事の報告で、お相手は総務部長。
報告書には書ききれなかったことを、部長へ口頭で報告する(書類にできないことが多い……特に山本さんの力は)
「……ということで、最後は山本さんの歌声にて、霊の集団・軍団?、怨霊集団、祟り神の集団すら、きれいさっぱり消し飛ばしてしまいました……個人的感想ですが、あの山本さんって人、どっかの軍事組織がリクルート狙って動いても不思議じゃないですよ。俺と蒼月さんは霊と怨霊退治だけですが、あの人は危険です。霊も神も怨霊も、そして人間だって、発狂ならマシって分類になるくらいです、文字通り、この世から消滅させてしまいかねません!」
俺の、いつになく熱の入った報告を聞いて、総務部長いわく、
「ああ、それは向こうの会社からも荒唐無稽なくらいの武勇伝を聞いている。いわく、鼻歌で暴走族を解散、指定暴力団には歌って全員発狂に追い込む。うっかり宴会で歌って、ちょうど向かいの部屋で年末宴会やってたライバル会社の第一営業部員60名を数日間も意識不明にしたとも聞いている」
すさまじい力の持ち主は、酒に酔うことも許されないのか。
俺は、山本さんに同情する。
「俺も蒼月さんも、これくらいの力で良かったと、今、心の底から思ってますよ、部長」
案件の大きさと、成功報酬ということで、俺と蒼月さんは一ヶ月の有給休暇をもらい、それと共に各自、数100万の臨時ボーナスも授与され、思い切って、二人で長期のバカンス旅行へ行くことになった……
まあ、それはそれで別の霊的トラブルに巻き込まれることになったんだが、それはまた、別の話である。




