無言のレクイエム
モーツァルト『レクイエム ニ短調 K. 626』。
自らの死を看取るために綴られた、逃げ場のない処刑の譜面。
脳内に鳴り響く「第3部:セクエンツィア」は、断罪の火に焼かれる「絶望の日」から、震える涙に沈む「涙の日」へと続く、処刑台の階段だ。
耳を劈くのは、天からの合唱。
「Dies irae, dies illa, Solvet saeclum in favilla...」
(怒りの日、その日は、世界を灰の中に溶かし去るだろう……)
その言葉通り、私の視界は白く濁っていく。
かつて誇りを持って走り抜けていた人生という名の軌道は、今はもう、誰の記憶にも残らない廃線へと成り果てた。
「Confutatis maledictis, Flammis acribus addictis...」
(呪われた者たちが退けられ、激しい火の中に投げ込まれる時……)
審判は下された。弁明の余地はない。
積み上げた負債も、失った時間も、すべてはこの巨大な旋律に飲み込まれていく。
私は、処刑台の最後の一段を降りる。
「Lacrymosa dies illa, Qua resurget ex favilla...」
(涙の日、その日は、灰の中から罪ある人間が裁かれるために蘇る日……)
廃線の上に、灰が積もる。
その重みに耐えかねるように、私の心が落ちてい くのを感じた。




