お尻は私の物ですわ
転移魔法で校庭のはずれの倉庫に移動する。居た…
アレクシア様が泣いている。
跳び箱をガンガン叩きながら泣いている。アレ、痛いんじゃないかなぁ
殿下のバカ!私一生懸命やってるのに!殿下と結婚できなくなったらどうしよう!
修道院は嫌ですわ!でも、殿下以外の人と結婚するのも嫌ですわ!
誰も居ないと思って言いたい放題である。可愛らしい…
可愛らしいけど、今の彼女は手負いの獣でもある。
彼女は私に気付く様子は無いので、しばらく待つ事にする。
10分後、ようやく泣き止んだアレクシア様はこちらを振り向き、私に気付いて固まった。
涙にはな・・・乙女が出してはいけない水も出して、泣きはらしてボロボロである。
「これ、使ってください」
動揺して慌てる彼女に私はハンカチを差し出した。
アレクシア様が目を丸くした。可愛いなぁ…おい。
「どうしてここにいるのですか、私確かに鍵をかけましたわ?」
「私、転移魔法が得意なんです」
「転移魔法…貴方が?この学園でも数名しか使えないはずですわ」
「はい、私がその数名の中の1人です」
不意打ち成功である。あっけにとられているアレクシア様とお話をする。
ちなみに王子が大事にすると言ったのは本当である。
卒業後は城の魔術師として終身雇用してもらう事になっている。
「一生大切にするってそういう事でしたの?」
「そうなんですよ。ですからね、私にとってはこの国が平穏である事が一番なんです」
「矛盾していますわ。平穏を望むのなら私なら彼らとは距離を置きますもの。婚約者からも睨まれて、他の貴族からも睨まれて…ろくな事にならないのに」
「就職活動です。将来彼らが私の上司になるわけですからね。今から売り込まなきゃ」
アレクシア様がはあ~とため息をついた。
「それで、私を追いかけてきたのはどうしてですの?」
「理由は3つあります、まず…アレクシア様とお近づきになりたい。将来の上司ですから」
「上司・・・確かに王妃になればそうなりますわね」
「2つめは、アレクシア様に近づいて利用したい…というもの。アレクシア様の実力と周囲への影響力は利用価値が高いですから」
「利用したい・・・はっきり言いすぎて怖いですわ」
「3つめは・・・アレクシア様と仲良くなりたい。出来れば一緒にキャッキャウフフして、お菓子食べたり、お尻タッチしたりしたいなあと…」
「私のお尻を狙っていますの!?」
「そうはさせるか、アレクシアのお尻は俺の物だ!」
殿下が転移魔法でやってきた。水がポタポタたれてる…水も滴る良い男ってか
「何があったんですか」
「聞かないでくれ(キリッ」
「殿下…」
「アレクシア…」
「私のお尻は私の物ですわ」
どこかでカラスがカアッと鳴いた。
真っ赤な顔でいうアレクシア様は…本当に可愛かったとだけ言っておこう。