第59話 再来
元首の部屋を出たヒバリは、前方でアスカが立ち止まっているのを見つけた。
アスカは吹き抜けとなっている通路からジパニックの街並みを眺めていた。
「アスカ、何をしているんだ?」
「ヒバリ・・・」
アスカはヒバリの姿に気付くが、すぐに顔を街の方に戻した。ヒバリは静かに横に立ち添える。
「・・・見ていたんだ。お父さんが守りたかったものを。父上とヒバリが、守ってきたものを。そして・・・」
「そして?」
言い淀んだアスカの顔を、ヒバリは思わず覗き込んだ。
「僕が、守っていかなければいけないものを」
ヒバリの目に映ったアスカの顔には、1つの決意が宿っていた。
「お前、それって・・・」
「アスカ・シノノメ!」
ヒバリが追究しようとした直前、外に近い入口から大声が響いた。2人は思わず、そちらに目を向ける。
「あれは確か・・・」
「第5のメディアン・ツナット?」
2人の戸惑いを気にも留めず、メディアンは素早い動きでアスカの前まで繰り出し、小剣を振りかぶった。
「覚悟!」
アスカは反射的に刀を抜き、小剣を受け止める。
キイン、と。甲高い音が鳴り響いた。
「さ、さっき、勝負は断ったはずですよね!」
「あんなの、断った内に入るかよ! いいから、オレと勝負しやがれ!」
「い、嫌ですよ!」
小剣の先と刀の腹が軋みあいながら、2人は押し問答を繰り返す。
「はい。そこまで」
ヒバリはメディアンの首根っこを掴んで、アスカから引っ張り剥がし、床に投げ捨てた。
「いて! 何しやがる!」
小柄の体型のせいで、年下のヒバリに尻もちを付かされたメディアンはヒバリに怒りの目を向ける。
それをヒバリは冷酷に受け止めた。
「他国の者の戦闘は四聖将の名において許しません。朝もセッカさんに説教されたのに懲りてないみていですね。そこにいるので、呼んできましょうか?」
「くっ・・・! 悪かったよ。いきなり勝負挑んで。でも・・・」
メディアンは小剣を握りしめながら俯く。
「あ、あの。勝負とか関係なく、手合わせしていただけませんか?」
「え?」
「おい。アスカ」
ヒバリの咎めの言葉に、アスカは少しだけ目線を下げる。
「いや、その・・・。勝ったら戦闘部隊変わるとかは僕の一存でどうにかなるものでもないし。僕もそれは嫌だ。でも、メディアンさんの実力も分からないのに、僕がどうこう言う資格ないと思うし。だから、純粋に、僕の訓練に付き合ってもらえませんか? それなら、戦闘ではないからいいよね? ヒバリ」
「・・・ああ。俺に止める理由はない」
「ね? どうですか? メディアンさん」
アスカは尻もちを付いたままのメディアンに手を差し伸べる。
「・・・分かった」
メディアンはアスカの手を取り立ち上がる。
アスカが安堵の笑みを浮かべ、刀を収めた瞬間。パキッ。
「え?」
アスカが腰に戻した刀から聞こえた音に、全員が注目する。
「今の音って・・・」
アスカが唾を飲み込んで刀を取ると、真っ二つに割れた刀身が出てきた。
「お、お父さんの刀が・・・!」
アスカが慌てて刀を付けようとするも、一度割れた刀が戻るわけがない。
「もしかして、オレの小剣で・・・」
「だろうな。1点に集中された力にはもう勝てなかったか。でも、丁度いいんじゃないのか?」
「え? どういうこと?」
アスカとメディアンが全く同じ表情でヒバリを見る。
「言おうと思っていたんだ。俺の2本の刀とアスカの刀を打ち直してもらって、元の1本の刀に戻そうって。アスカが本当に決意を固めたなら、お前はイオリさんの本当の刀を持っていた方がいい」
「お父さんの本当の刀・・・」
「ああ。行くぞ」
足取り軽やかに進みだしたヒバリの後を、アスカとメディアンは戸惑いながら付いて行った。




