第42話 問題
ジパニックは、西はオーリウスとアリステル、東は海に面している、小さな国である。他国との交流はほとんどなく、自国の文化を発展させてきた。
元首は代々タイヨウの家系が受け継いでおり、13年前の内乱以降は、平和な国を形作っている。
「タイヨウ様。もうすぐ、アリステルの御一行が到着するとの報告です」
黒い戦闘服に身を包んだ男性が、元首の椅子に座るタイヨウの前で跪く。
「報告ご苦労だったな、アサヒ」
アサヒ・クロガネ。黒い短髪に黒い瞳を持っているジパニック人である。ジパニックにて、イオリの跡を継ぎ、軍隊長の役職に就いている。
「ヒバリも帰ってくるんだな?」
「ええ、そう伺っております。シュン」
アサヒの呼びかけにより、一人の男性が元首の部屋に入ってきた。アサヒと違い、灰色の戦闘服に身を包んでいる。
「はい」
「ヒバリも帰ってくるんだな?」
「ええ。ヒバリ様からの連絡では、アスカ様と共に、自分も帰ると」
「分かった。ありがとう」
シュンは、頭を下げて部屋を出て行った。
シュン・イカヅチ。一隊員であるが、あまり人前へ出ない四聖将への連絡係を担っている。現在の、一隊員の中では、トップクラスの力を持っており、アサヒからの信頼も大きい。
ジパニックでは、四聖将と一隊員の戦闘服は、色によって区別されている。四聖将が黒色で、一隊員が灰色である。タイヨウを表向き護衛するのは一隊員の方であり、四聖将は人前に姿を現さず裏で動くことが多い。そのため、四聖将は闇に紛れるように黒色の戦闘服になっていた。
「タイヨウ様。ヒバリはアスカ様に全てを話しています」
「知っている。アスカのこともそうだが、カルラ・ストラスのことについても話さなければいけない」
タイヨウは、悩んでいるような表情を浮かべる。
アスカの問題もそうだが、イニスとの首脳会談にて話さなければいけない問題もある。タイヨウは、大きすぎる2つの問題に頭を抱えていた。
「問題は、山積みですね」
アサヒは、ため息を吐いた。
ジパニックに向かっているイニスたちは、アリステルの東の端にある山を越えているところだった。イニスは座席のあるところに座っているが、他の兵士たちは荷台の中に乗り合わせている。広い荷台であるため、各々が好きなように過ごしていた。
「何か、言いたそうですね。セッカさん」
荷台の端でぼーとしていたラークに、セッカが近づいてきた。何も言わずに、隣に腰を下ろす。
「ラーク。聞きたいことがある」
「カルラ・ストラスのことですか?」
セッカは、ラークの言葉に驚く。しかし、心を見透かされた理由が分かり、笑顔に変わる。
「さすがだな。なら聞くが。カルラ・ストラスとケイト・ストラスの関係はなんだ?」
ケイト・ストラスは、ラークの話に出てきた人物である。13年前に、ジパニックで反乱を起こした首謀者だ。反乱が沈静された際に捕らえられ、殺されている。
「首脳会談で、父上から話を聞いたほうが、いいと思います。とりあえず、俺から言えることは、セッカさんの想像通り、2人は親子です」
「やっぱりな」
セッカは、納得したように呟く。
「だが、カルラはアリステルの兵士だった。俺たちの同期だった」
「でも、裏切ったんでしょう?」
セッカは言葉の続きをラークに取られ、押し黙る。
「現在のアリステルとオーリウスの戦争は、実は13年前からすでに始まっていたんですよ」
「どういうことだ」
オーリウスがアリステルに侵攻を始めたのは、10年前。13年前は、まだアリステルは平和だった。ただ、ジパニックで内乱があっただけだ。
「それは、父上から聞いてください」
ラークは、笑顔で締めくくった。




