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家が没落して家族バラバラになったので集めます  作者: 柳上晶


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3/3

作戦会議からの電撃突撃

 あまりに広く、敷地も部屋も有り余っている屋敷の中。たった二人だけで一つの部屋に集まり、机を挟んで座っている。

 机には何やら資料を広げて、真剣な面持ちで対面している。


「というわけで」

「というわけでじゃないが?」

「次に探すのはお嬢でいいね」


 カナデは一枚資料を手に取り、目線だけを動かす。それを訝しげに見ているカイは、恐る恐るカナデに問いかけた。


「……てゆーか、どっから持ってきた?これ」

「企業秘密」

「えぇ……」


 ドン引きしてるカイは、それ以上踏み込もうとはせずしぶしぶ資料を手に取り眺める。


「これって、何?何が書いてあんの怖いんだけど」

「え?みんなの目撃情報」

「ちゃんと怖い。どっから持ってきたんだよ」

「大丈夫!ちゃんと合法」

「信用できるかぁ!」


 カナデはその反応にニヤニヤとして、資料を机に置く。

 それに対しカイは、いいようにやられていると理解しながらも、こういうものかと納得して無視する。突っ込むだけ無駄なのだ。このわずかな時間でそれを把握した。

 鼻で笑った後のような微妙な顔で、資料に目を通し始める。


「……」

「……」


 椅子に座った状態で足をプラプラと動かしては、じっとカイの方を見ているカナデに、いたたまれなくなって視線を上げる。

 多分、カナデはこの資料がすべて頭に入っているのだろう。

 カイに読ませるためだけに持ってきたもの。だから一切目を通さず暇つぶしにカイの顔を見ているのだろう。


「これってさ……なんか、こう……」

「核心をついた情報がない?」

「そう。どういうこと?こんなにあるのに」

「ま、個人でやったらこんなもんってこと」


 ふと生じた疑問をぶつけると、しれっと答えが返ってくる。

 さも当たり前のように放った言葉は、カイを呆然とさせるのに十分だった。


「じゃあなんだこれ!?何の意味が?!」

「この町にいるってだけの情報ね。これ全部合わせて。あとどんなことしてるか」

「あ、そうすか。へーー……」

「…………」

「いやまあ別にお前ってそういうの苦手だし人に話しかけて世間話とか一番苦手だもんなわかるよ!情報収集と無縁の生活だったしこれからもすることないもんな~~!!!!」


 表情が抜け落ちたカナデに焦りながら弁明をする。

 カナデの真顔はぞっとするほど怖い。本当に何も考えが読めない。


(美人の真顔は怖いって聞くけどさぁ。ベクトルの違う怖さがあるんだよなぁこいつ)


 静寂の中、どの返答が正解か必死に考え、一向に正解が見つからないまま固まっていると、ふとカナデが口を開いた。


「まあ嘘だけどね」

「………………は?」


 カナデが指を一振りすると、机の上に散らかしていた資料――――カイが持っていた紙もまとめてふわりと浮かび上がり、カナデの手元に集まる。贅沢な魔術の使い方だ。

 資料を両手で持ち、丁寧にそろえ始める。


「さすがに自分一人でできるとは思ってないから、しかるべきところに依頼してあるよ。安心して」

「じゃあなんだったの今の時間」

「え、まあ、こういうのも必要かなって」

「いりません」

「はい……」


 ガチめの説教を食らって、カナデは見てわかるくらいしょんぼりとして反省の意を見せた。






「ということでやってきましたスラム街」

「展開があまりにも急」


 行動力の化身というところは一切変わっていなかった。

 連れ出されてついていき十分ほど、スラムの入り口辺りにやってきた二人は、顔を隠す装いをしていた。

 良くも悪くも目立ってしまうので、身元がばれないようにとカナデが言い始め、しぶしぶといった様子で、カイは布で顔を覆い隠している。カナデはいつものローブを脱いで、より質素な服でフードをかぶっている。


「で、どこに向かうんだよ」

「めっちゃ治安悪くなるまで進むよ」

「そんなとこに依頼をするな?危険なのわかってる?」


 大股でずかずかと進んでいくカナデの後に続いて、周りをわかりやすく警戒しているカイがついてくる。

 横を見ればすぐ、物乞いをしている人や、見るからに怪しいものを売りに出している人がいる。こちらのことを不審に見つめてくる人もだ。

 こちらに直接手を出そうとする者はいないが、歓迎されてない気配はわかる。カイはバツの悪そうな顔をする。


「どうしてこんなとこに……」

「まあまあ。案外すぐ着くからさ」

「うーん。そゆとこ」

「どゆとこ」


 ほのぼのとした会話を続けながら、奥へ、奥へと進んでいく。

 ここまでくると、もう物乞いはおらず、人相の悪い人ばかりが見える。


「なあまだつかない?」

「もう少し…………ああほら、あそこに人が立ってるじゃん?あそこ」

「え?えぇ……?」


 カナデがそう言って指さした方向にはそれなりに屈強そうな大男が、扉の前に立ちふさがっていた。


「あそこ絶対闇とかそういう……」

「まあまあ、話付けてくるから待ってて」

「いやぁ……さすがについてくが」


 カナデは、それならと遠慮なく大男に近づいていく。

 それにすぐに気が付いた男は、得物に手をかけながらカナデらを警戒して見た。


「何だお前ら?ここに何の用があってきたんだ?親も同伴か?」

「あ、どうも。親父です」


 勢いあまって挨拶をしたカイは、なんかやったなこれと思いながらも、言ってしまったからには取り消せないとも思い、口をつぐんだ。それに対しカナデは、開いた口が塞がらないを体現している。

 少しの静寂の後、男は大声で笑い飛ばした。


「ははっ!こーんなちっちゃい子が、親についてきてもらって何の用かなぁ??」


 あからさまに馬鹿にした態度をとる男は、あろうことかカナデの頭に手を伸ばし、その頭に手をのせようとした。

 それをカイが止めようとする前に、カナデが振り払う。バシッとかなりの強さで叩かれた手に、男はいら立ちを隠すことなく突っかかってくる。


「てめぇ!何様のつもり…………」

「お前、もうおれのこと忘れたのか?」

「……は?」


 そう言って、カナデはおもむろにフードを取る。その顔をあらわにして男をにらむ。

 すると、男の顔からさあっと血の気が引いていく。


「おま、お前……狼!?なんでまたここに…………!まさか、とうとう俺たちをつぶそうと――」

「ちげぇよ。お前んとこのボスに用があるんだよ。依頼してたからな」


 雰囲気をガラッと変えて、男に詰め寄るカナデに気圧され、一緒になってカイが恐怖を感じ始める。

 カナデはこういうとこがあるから、驚くところが多すぎて逆に頭の中は冷静になる。


「――いや、お前のことは、ボスが絶対に通すなと言っていたからな!ここで止めさせてもらう!」

「は?それってさ、おれの仕事ほったらかしにしてないって根拠ないよな?もしかしてそうやって通さないことで仕事の不出来をごまかそうとしてんのか?おい」

「は、いや、それは違う……」

「あ?」


 詰め寄られてたじたじになっている男に、もはや同情すら感じるカイは、カナデの肩に手を置く。振り向いたカナデに首を振れば、少し残念そうに一歩後ろに下がる。


「……はっ。ここは通さねえからな!」

「そういうのいいから。ちょっと右によって」

「はあ……?」


 おとなしく指示に従う男に、満足そうにうなずいたかと思うと、カナデが構えの体勢をとる。

 大体先の展開が分かったカイは、止めることなく見守る。さっさと終わらせて帰りたい欲求がかった。

 数歩後ろに下がり、勢いをつけて扉に突っ込み、強烈な蹴りを入れる。きれいに扉の真ん中にいれられた蹴りはその勢いのまま扉を吹き飛ばし、内装をめちゃくちゃにした、


「後でちゃんと弁償しろよ?」

「はーい」


 何事もなかったかのように入っていく二人を、男は止めることもできず呆然としているだけだった。

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