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そして俺は宰相になる  作者: ふーげん
第三章 黄金の主編
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第二十九話 魔法使いは便利屋じゃないから!

 魔法使いを名乗る女性メティスを保護したルークは、このまま放ってはおけないからとホテルまで連れて行く。身を清め、身なりを整えさせたルークはゴルト国の調査を開始する。


「足の傷、大丈夫ですか? まだ痛みは消えないと思いますが、少しだけお聞きしたい事があるので答えていただけると嬉しいのですが」


「飯」


「はい?」


「飯をくれ。腹が減った」


 瞬きする間に一つ、また一つと空の器が積み重なる。細身の肉体のどこに消えているのだろうか、メティスの姿が次第に見えなくなり、皿が天井に届く頃にようやく食指が動かなくなった。


「うん、食べた。腹いっぱいだ、で、何を聞きたいんだ?」


「はい、実は俺達は魔動品の研究をしていまして、魔動品の流通が多いこの地なら研究の役に立つかと思って、魔法使いなのでしたら何か知っているのではないですか?」


「知ってるも何も、この都市の魔動品は全部私が作ったぞ」


「なるほど、この都市の魔動品を全部......って、えー!? 全部作ったんですか!?」


 前世の道具と酷似したアイテムを生み出せる人物が目の前にいる、なぜそのような魔動品を作れるのか、なぜ存在を知っているのかなど聞きたい事は尽きなかったが、それ以上に今は、魔動兵器の設計者の可能性が一気に高まった事で自然と調査にも熱が入る。


「ふふん、私は天才魔法使いだからな。そもそも魔動品の一般運用などというのは本来想定されておらず、私たち魔法使いやエルフが莫大な魔力を注入してこそ効力を発揮するものだ。

 しかーし、そこは天才の私! 魔力にもならない微量な空中魔素を魔動品起動時に取り込む事で、不足している魔力の補完を行い、その際に生じる魔力もつれを解消する為に......おーい? ついてこれてるかー?」


「いや......全然......」


 どこかの本でIQが20以上離れていると会話にならないと聞いた事がある。

 これは頭の回転速度や理解力がかけ離れているせいで、話のペースが合わないという事だと思っていたが、それはある意味で間違いなのではないかと思う。

 頭の良い人間は()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 彼女なりに精一杯かみ砕いて話しているのだろう、それでも専門用語ばかりで何一つ理解が出来なかった。


「うーん? 魔動品を研究してるのにこんな初歩的な事も分からんのか? さてはお前達......」


(マズイ! このままじゃ嘘がバレる!)


「そんなに魔動品が珍しい所からやってきたのか!?」


「......はい?」


「いやいい、何も言うな。可哀想に......お前達は魔動品の偽物か粗悪品を掴まされて研究をしていたのだな......。魔動品はとても高価なものだから市場に出回ることは少ないから仕方のないことか......良いだろう、この際だから飯の礼に講義してやろうじゃないか!」


 そこからメティスによる魔動品の仕組みについての講義が始まった。

 講義は4時間にも及び、ルークの脳はパンク寸前、エストリヤに至っては途中から天を仰いでいた。


「という訳で、魔動品を効率的に動かすには魔力だけでは足りず、元素との超常反応を起こさなくてはならないんだが、おいそこの猫目女! 魔動品とはつまり何なのか言ってみろ!」


「ふぇ? えーっと、便利道具って事でしょ?」


「ちっがーーう!!」


 耳をつんざく怒号が部屋中に響き渡る。数多の雑音が所狭しと街を覆いつくす中にあって、その声は多少の音をかき消すほどに民衆の耳目を集めた。


「ここまで聞いてその程度とは呆れて物も言えないぞ! お前さんもマモンザも、もっと言えば凡人共も魔動品をその程度の品だと認識しているから魔動品の大衆化には反対だったんだ!

 マモンザの奴......毎日毎日、私を閉じ込めて金儲けの為だけの魔動品の開発をさせるなんて! 思い出したら腹が立ってきた! リューク! 飯だ飯!」


「まだ食べるんですか......」


 ――1時間後


「怒りは思考を鈍らせる。怒りを抑えるには美味い飯を食うに限るな!」


「それは良かったです......ところで、先ほどマモンザの話が出ましたが、メティスさんはマモンザの下でこれだけの魔動品を開発してきたんですか?」


「あぁ、魔法の研究に最適な環境を用意すると言われてホイホイ付いていったら閉じ込められちゃってさぁ、あまりにも退屈だったから逃げ出したんだが、()()()()()()()()()()事をすっかり忘れちゃって、おっかない奴らに追い回されてたってわけよ」


 賢いのか賢くないのか分からない人だ。多分、魔法の事以外となると殆ど関心を示さないタイプなんだろう。現に今だって、追跡装置が付いたままになっているんだから......ん? 追跡装置が付いたまま?


 部屋の扉が勢いよく開く。先程の二人の黒服に加え、大勢の黒服達が部屋の入口を固めていた。


「もう逃げらんねぇぞお前ら! 今度こそ全員ぶっ殺してやる!」


「殺すのはメティス以外だ馬鹿! こいつらを取り囲むぞ!」


 続々と部屋に入ってくる黒服を前に、ルーク達は後退する。

 やがて、窓際まで追い詰められ絶体絶命の状態に追い詰められていた。


「お二人さん、ちょいと良いかな?」


「こんな状況で何ですか......! 何か策でもあるんですか......?」


「策ならある。空に逃げるぞ」


 メティスはそう言い終わると、窓ガラスを割って飛び出す。

 二人は恐怖を感じながらも他に選択肢は無いと思い切ってメティスに続く。

 地面に激突する瞬間、二人の体は空中で静止し徐々に浮き上がる。


「魔法とは希望! 個性の持たない人間であろうと何者にもなれる夢の力! とくと目に焼き付けよ、大魔法使いメティス・アトランティスタの奇跡の魔法を!」

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