197話─次なる舞台は
プラウダーとの決着をつけ、ミサキが地上に戻るなか……。ユウたちは優勢を確たるものとし、ついに巨大ポータルの破壊に王手をかけていた。
『敵の数がここまで減れば、後は……! 今ならいける!』
【6・6・6・6:エンドオブワールド】
『ビーストソウル・オーバーロード! ポータルを破壊して、敵の侵攻を終わらせます!』
『ああ、行けユウ! 景気よく木っ端微塵にしてやるがいい!』
「まずい、誰かあのガキを止めっがはぁ!」
『そうはいかないな、全員射ち抜かせてもらうぞ! ユウ、今のうちポータルを!』
矢と砲弾、そしてユウの猛攻によってポータルの守りが手薄になり戦いを終わらせる絶好の機会が訪れる。ユウは終焉の力を解き放ち、破壊の力を身に纏う。
地上からドルトが援護射撃を行いアシストをするなか、ユウは上空のポータル目掛けて勢いよく飛翔していく。数を減らした闇の眷属たちは対処に動けず、ただ撃墜されていくだけ。
『狙いよし、魔力残量……十分! これで終わりです! アメジストブレイカー! こゃーん!』
「しまった、ポータルが!」
「クソッ、プラウダー様はまだ戻らないのか!? このままじゃぜんめ……ぎゃあっ!」
「残念、君たちの親玉が戻ることはないさ。私が仕留めてしまったからね!」
九本の尾で自身を包み、紫色のドリルと化したユウは勢いよくポータルを貫き消滅させてみせた。これでもう、フィービリア軍の増援が来ることはなくなった。
生き残っていた闇の眷属たちがプラウダーの帰還を願うなか、雲を切り裂きミサキが舞い戻る。挨拶代わりに竜騎士の一人を両断しつつ、敵将を討ち果たしたことを宣言する。
『お帰りなさい、ミサキお姉ちゃん! 無事プラウダーを倒せたんですね! 嫌な魔力の波動が消えたから、ビビッときましたよ!』
『有言実行、たいしたものだ。褒めてつかわそう、この後の残存率戦力の殲滅も頑張るのだな』
「やれやれ、何もしてないヴィトラが一番偉そうにしちゃってまあ。ま、いいさ。戦いが終わったらユウくんに労ってもらうことにしよう」
『ええ、何でも言ってください。たくさん労いますよ!』
まだ戦闘が終わっていないというのに、戦場のど真ん中でイチャつきだすユウたち。そんな彼らの周囲では、生き残っていた闇の眷属たちがドルトの矢に射られ息の根を止められていく。
「やれやれ、上の二人はずいぶん楽しそうだな。まるでキルトとルビィさんを見てるみたいだ、どこの大地も変わらないものなんだなぁ……」
狙撃中継衛星を介してユウたちのラブラブっぷりを見ていたドルトは、呆れたような感心したような声でそう呟く。英雄たちの奮戦により、見事初戦を勝利で飾ったのだった。
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「ったく、次から次へとワラワラ湧いてきやがる。……やれやれ、なんでこうもルケイアネスでばかり戦わされるのやら、な!」
「げはっ!」
「気を抜くなよグレイシー! まだまだ敵はいるんだ、ボヤいてる暇があったら……オラァッ! こんな風にぶっ飛ばしてや……うおっ!?」
「ククク、楽しい祭りだナァ……え? キルトの誘いに乗った甲斐があるってもんだ!」
同時刻、ルケイアネス王国最北端の雪原にて。この地でもまた、善と悪の連合軍による激戦が繰り広げられていた。雪と北風の舞台で舞うのは、歴戦の強者たち。
グレイシーが馬と共に戦場を駆け、敵を撃ち抜き。チェルシーが鉄鎚を振るい侵略者たちを肉塊へと変え。その間を縫うように、漆黒の女狼……ヘルガが刃を振るう。
「ッハァ、すげぇ暴れっぷりだなアイツ。確かサモンマスターの中でもイレギュラーな奴だったか……アスカが言ってたな」
「ククッ、その通り。オレは『サモンマスターノーバディ』。他の連中のように馬の骨なんぞと本契約なんざしねぇ。根っからの……」
「死ね、狼女……」
「一匹狼だからナァ!」
「ぎゃはあっ!」
死角から飛びかかってきた闇の眷属のアサシンの喉を短剣で貫き、返り討ちにしながら大笑いするヘルガ。側にいたため、助けに入ろうとしていたチェルシーはニッと笑う。
「へぇ、やるじゃねえか。こりゃ頼もしいもんだな、ソラッ! こいつをやるよ、好きに料理しろ!」
「オアアアア!?」
「ハッ、ならありがたくいただくぜ。死になァッ!」
「ぎゃぁっ!」
「やれやれ、向こうは楽しそうで……フッ! 羨ましいもんだ。……あのヘルガとかいう女はどうにもいけ好かねえ。オレとキャラ被せてきやがってよ」
「ゲハッ!」
雪に紛れるため、白装束を身に纏っていたフィービリア配下のアサシンたちはチェルシーたちの手で全滅した。雪と装束の白を紅に染め、物言わぬ骸が一帯を埋め尽くす。
「ふいー、やっと終わったな。向こうは……お、カタが着いたみたいだぜ」
「こちらにおられましたか、皆様。我々氷狼騎士団の受け持っていた闇の眷属たちは、無事討伐完了しました。皆様ご無事なようで何よりです」
「おう、そっちは大丈夫だったか? リティアさんよ。ヨシトたちがついてるから、早々やられるこたぁねえだろうが……」
「ふふ、心配ご無用ですよチェルシー殿。リンカーナイツには無力でしたが、闇の眷属が相手ならば話は別です。輪廻の加護がない者たちなど、我ら氷の狼の前では生き餌も同じですよ」
死体から離れた場所で休憩していたチェルシーたちの元に、ワープマーカーを使って女騎士……リティアがやって来る。かつてユウたちに救われた恩を返すため、共に戦っているのだ。
「スンスン……フン、実力はそこそこってところか。後で遊べよ、オレァまだヤり足りねえんだ。余所の大地の騎士がどれだけ実力があるのか……なあ? 知る権利があるだろ? 協力してやってるんだからな」
「ヘルガっつったか、そんなのは戦争が終わってからにしろ。ここ以外じゃあ、まだ戦いは終わってねえ。そっちで暴れてきやがれってんだ」
「……あ? 誰に指図してやがる。そのガンマン気取り、てめぇはどうにも気に食わねぇ匂いがしやがる。狼を従えたきゃあ、力を示しな。ま、出来るたぁ思えねえが」
別の戦場で敵の本隊と戦っていたリティアたちも勝利を飾り、別働隊を迎え撃っていたチェルシーたちを迎えに来たはいい……が。ヘルガとグレイシーが一触即発の事態に。
「へぇ……オレを挑発するたぁ、よほど死にたいらしい。いいぜ、相手してやる。その綺麗な顔を吹っ飛ばして」
「だぁー、ケンカは余所でやれアホ共! 帰投して頭冷やせ!」
「ゴフッ!」
「ぐうっ! ……へ、いいパンチだ。お前も後で……獲物のリストに……」
リティアがオロオロするなか、チェルシーがヘルガたちのみぞおちに拳を叩き込んで沈黙させる。二人を担ぎ上げ、チェルシーはため息をつく。
「ハァ……シャーロットの奴め、自分の手に負えねえからってアタシに戦闘狂二人も押し付けやがって。世話が焼けるよ……」
「う、うむ。まあ……なんだ。お疲れ様である……チェルシー殿」
「まあいいや、早いとこサーズダイルに帰ろうぜ。アホ共と一緒にいるとハラ減って仕方ねえや」
ワープマーカーを起動させたリティアと共に、復興した王国の首都へ戻るチェルシーたち。これで北の地の戦いは終わった、そう思われたが……。
「クフフフ、バカな子たちだネ。簒奪者たるこのワタシが戦場に姿を現さない……それが何を意味するのか、まるで考えもしないのだからサ」
チェルシーたちが去ってから、少しして。フード付きのローブを身に纏った人物……残る四人の簒奪者のうち一人が現れる。両手を横に広げ、己が内に宿る指輪の力を解き放つ。
「さあ、よみがえるがいい。闇寧神の力にて与えよう。何度でも、何度でも。フィービリア様の野望が叶うその時まで! 死を超越した兵隊たちヨ!」
そう叫んだ直後、簒奪者の身体から紫色の波動が放たれ……地に倒れ伏した骸たちが起き上がる。雪を染めていた紅は、全て虚空へと消えた。
「我らを蘇生させてくださり感謝致します、トース様」
「礼はいいサ、それよりもやることは分かっているネ? お前たち」
「はい、ワープマーカーの経路をたどり油断している敵を抹殺します」
「よろしい。では行くがいい、ワタシは後詰めとして待機しているヨ」
「ハッ、我ら不死身のアサシンにお任せを」
よみがえったアサシンたちは、各々ポータルを呼び出しその中に飛び込む。その様子を見ながら、簒奪者は笑う。北の果ての戦いはまだ、終わることはない。




