言いだしっぺの法則
おまけ。
とある大学の、ある部室。そこは和室。かといって、茶を点てるわけでもなければ、そこにいるものたちから和を感じるわけでもない。
部室の入り口である扉の横には、サークル名が書かれたプレートがはめられており、そこには「SF研究会」と表記されている。
そんな部屋の中にいるのはどんな人物だろうか。特徴をいってしまわば、なかなかに容姿の整ったイケメン・大学生なのか疑わしい幼さにケモ耳を生やしたロリ・学校を間違えているのか、なぜか軍服・机・ホログラム・生気のない白髪。この6人。
机を人数にいれることにとやかくいうのは野暮というものだ。この空間では。
「今日はみんなで集まって何をしようっての?」
言葉を発したのは“イケメン”である。彼ほどのルックスなら、芸能界が黙っていないだろう。
「あ!わかった。新学期だから、パーッと飲み会ってわけっしょ?Foo~!あ、そうそう、いいお店見つけてるぜ。肉専門店なんすけどぉ、世界中の美味い肉が無限に食えるらしいんすよ」
突然、机から声がするが、それに驚くものは誰一人いない。
「ちげーヨ、バーカ」
机に驚かないのだ。ホログラムに驚くはずもない。ややノイズの混じった合成音声だが、ここにいる人間?たちは聞き間違えることもないだろう。
「は?じゃあ何なんですかね~」
「……なんでそう口論になるんだ……まぁいいか……今日のお題はこれだ」
“白髪”が手を挙げると、地面からホワイトボードがせり出してくる。当然、それにも誰も驚かない。
姿を現したホワイトボード。そこには。
「『サークル紹介』?ああ、そんな時期でしたか……早いものですねぇ」
「え?何?新入部員集めんの?それマジ?去年なーんもしてないのに?」
「部長。お主、前にもう部員はいらないって言っていたがの」
“ロリ”が“白髪”に対して問う。どうやら“白髪”が部長のようだが――“ロリ”は何故年寄りのような話し方をするのか、誰も気にしていない。
「……あの時はな……いらないというより、いない……だったがな。……それに、紹介したところで誰も来なかっただろうよ」
「じゃあなんで今?」
「……さぁな……なんとなく、来そうな奴がいてな」
「今年に限ってか。ふうん……しかし、そんなのどうやって判断するんじゃ」
「……入学記念アルバム、今年版」
「ぎえー、そんなん見て何が面白いんじゃ。えろす」
「いや、他にやること無いんで、俺ト一緒に見てただけ」
「いいんじゃない?俺もたまにするし。こういう中からアイドルの原石をだな……」
「んん、ともかく、お題は理解しましたよ。しかし、我々を呼んだのは?」
脱線しかけた話を路線に戻す“軍服”。着用している衣服は非常識だが、話し言葉や姿勢は常識的だ。
「そりャ、あれだろ。来そうってコとは。バラすかどうかってことダロ?」
「……ご名答。意義あるか?」
「ありま……せんねぇ!」
「ないぜ」
「ナい」
「ないぞよ」
「ない……といいたいところですが」
「……ん」
「普通にバラすのもなんだが面白くない気がしますね」
「……どうするんだ」
「そうですねぇ……例えばこの腕時計のおかげってことにでもしましょうかね」
「なんでごまかすんじゃ?」
「ごまかすというか……なんというか、そのほうがSFらしくないですか」
「じぇんじぇん。周りくどいぞ」
「そうですか?しかし、少しは楽しんでもらえると思いますよ。何せ始めての新入部員ですからね。たくさん興味を持っていただかないと」
「……まぁいいんじゃないか。……俺もすぐにバラすつもりはないしな」
「いや、あなたの場合はちょっと……」
「そうじゃそうじゃ」
「失神するかもな」
「あ、いっすね~!じゃあ俺失神するほうに3円賭けます賭けます」
「じゃあ、しなかったら死ネ」
「なんで!?」
「……まぁなんでもいい。紹介するメンバーを決めてくれ」
「部長は出ないのか?」
「……誰が説明するんだ……俺は確定だ。……他に一人、まぁ立っているだけでもいいがな」
「なるほドな。じゃ、じゃんけんで決めルか」
「いっすね~!じゃ、負けた人が部長と一緒にするってことで。勝ちますよ~」
「インチキなしぞ」
「うーし、せーの」
じゃーんけーん……。